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ミサイル防衛反対国際会議のソウル声明

4月16〜18日、韓国・ソウルで「アジア太平洋のミサイル防衛に反対し軍拡競争の終わりを求める国際会議」が開催された。

東京の市民団体・核とミサイル防衛にNO!キャンペーンからの報告によると、4月5日の北朝鮮によるロケット打ち上げと、日本政府による「ミサイル防衛」システムによる迎撃態勢の初発動によって、緊張する北東アジア情勢の中、韓国の10の平和団体でつくる韓国組織委員会と、「宇宙への兵器と原子力の配備に反対するグローバル・ネットワーク」(http://www.space4peace.org/ )、「GPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)東北アジア」( http://www.gppac.net/ )が共同主催。日本からは入間、浜松、名古屋、九州などのPAC3ミサイル配備反対運動やピースデポ、ピープルズ・プラン研究所、ピースボートなどのNPOが参加した。

会議の趣旨や全体プログラムは以下を参照。
http://www.geocities.jp/nomd_campaign/nomd-korea.html

国際会議では、世界各地から集まった発言者が、ミサイル防衛・宇宙軍拡反対運動の現状と展望について意見を交換。オバマ新政権の軍事・外交政策の分析、米国のレーダー基地建設を事実上頓挫させたチェコの創意あふれる市民運動の報告内容。
日本からは、「北東アジアに非核・非ミサイル地帯をどうつくるか」(藤岡惇:立命館大学教授)、「北東アジア非核兵器地帯条約・試案」(田巻一彦:ピースデポ)、「米日軍産複合体への挑戦という緊急の課題」(杉原浩司:核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)という3本の報告。
国際会議では、ミサイル防衛に反対し軍事対立ではなく新たな平和のメカニズムを創造するために、世界各地の仲間と共に力を尽したいとする、以下の声明を採択した。

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「アジア太平洋のミサイル防衛に反対し軍拡競争の終わりを求める国際会議」
                         2009年 ソウル声明

我々は、戦争と苦闘の歴史がくり返されつつある21世紀の新たな10年間が始まろうとする今、ここソウルに集いました。現在でも多くの国や地域が、紛争と敵意が充満したあの東西冷戦期から何ひとつ学ぶことなく、執拗に軍拡を行っているのを、今我々は目の当たりにしています。特に軍事的支配力を持つある国(the nation)とそれに従う諸国は、紛争の根本原因を理解する努力や平和解決の道を見つけることよりもむしろ、自らの軍事能力強化の方法として新たな脅威や敵を探し、ときには自己の軍拡を正当化するためにその脅威を誇張しています。

このことを示すのが、軍事ネットワークの拡大と世界中にある多数の軍事基地、そして宇宙軍拡の諸活動です。しかしながら我々は、この軍事アプローチは紛争の防止と平和的解決を阻む陳腐な戦略であり、また世界的な軍拡競争の悪循環を引き起こす、敗者の一手であることを明らかにしたいと思います。

我々は特に、米国のミサイル防衛システムがどのように、宇宙軍拡だけでなく、不必要な軍拡競争と諸国家間の政治上外交上の緊張をも引き起こすかという点を注視しています。チェコ共和国とポーランドへのミサイル防衛システム構想は、同地域での市民の大きな反対を生み、「新冷戦」の誕生に至るまでロシアを激怒させました。

アジア太平洋でのミサイル防衛システム構想は、冷戦の緊張を緩和しようとする地域内の取り組みにとって重荷となり、そのためさらに、海洋諸国と大陸諸国間の衝突を誘発しています。米国がアジア太平洋ミサイル防衛システムを構築しようと先導し、日本とオーストラリアがそれを強く支援している同地域で、韓国はその最先端兵器と一連のあらたな役割において、それら諸国の列に次に並ぶ位置にあります。その結果、中国、ロシア、北朝鮮はすべて、このミサイル防衛システムへの強い反対の意を明確にし、アジア太平洋地域での軍拡競争を加熱させています。このような軍拡競争はまた、アジア太平洋地域における平和と安全保障の重要な土台である、日本の平和憲法の、戦争放棄を掲げる第9条を蝕む恐れもあります。

朝鮮半島にみなぎる現在の緊張の主要素となった、北朝鮮の長距離ロケット発射をめぐる論争は、今後の討論を待つものです。北朝鮮のロケット発射は、朝鮮半島の分断とアジア太平洋地域での軍拡競争の両方による副産物として見なされるべきでしょう。しかしながらそのような視点は無視されています。そのかわりに、脅威が大げさに解釈され、安全保障上の不安が掻き立てられ、同地域でのミサイル防衛システムの開発の正当性が持ち出されています。北朝鮮の長距離ロケット発射は、そのような状態とは正反対に、我々の優先事項である各国間協力による相互軍縮に加え、諸国間の信頼の構築と関係正常化もまた、何より必要な急務であることを示します。

とりわけ我々は、ミサイル防衛システムによる「絶対的な安全保障」というものの裏にある理論が、他の攻撃的な軍事上の思考と異なるものではないと認識しています。さらにミサイル防衛システムは、その有効性がまだ実証されていない、危うい計画です。莫大な経費を必要とする計画である同システムは、際限のない軍事費拡大の理論に基づいており、ただ軍産複合体を肥やすためでしかありません。忘れてならないのは、このシステムが、経済危機、社会福祉の崩壊、環境危機で苦しむ多くの人々の幸福と生活の質の向上のために投資されるべき、たくさんの資源を犠牲にするということです。

現在世界中で多くの国々と人々が経済危機と気候変動のために苦しんでいます。これらの危機は、各国が無駄な軍拡競争をやめて、経済危機と気候変動のために甚大な被害を被っている自国の市民の日常生活に配慮を向ける好機としてとらえられねばなりません。不必要で攻撃的な兵器の開発は、ミサイル防衛システムを含み、まず停止されねばならないのです。人々と地域の安全を無視する国家安全保障には何の意味もありません。

それゆえ我々は、朝鮮半島、東アジア、そして国際社会の平和と安全を妨げる、ミサイル防衛システムと軍拡競争に対し、共同で反対することを決意しました。我々は今後、ミサイル防衛がまやかしであること、およびミサイル防衛により必然的に生じる軍拡と軍事紛争がもたらす被害を広く人々に知らせていきます。国際社会の一員として我々は、我々が今立っているこの地域社会から、軍事対立にとって代わる、平和共存と紛争解決をもたらす新たな平和のメカニズムを展開していくことを誓います。今後の10年間を、陳腐な軍事パラダイムを克服するための変革の時期に変えるため我々の責務と役割を果たすことを、ここに宣言します。

2009年4月17日

韓国組織委員会
宇宙への兵器と原子力の配備に反対するグローバル・ネットワーク
GPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)東北アジア
by kazu1206k | 2009-04-26 23:58 | 平和 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k