貯蔵MOX燃料の安全審査が必要だ

県内の6市民団体は、連名で東京電力に対し、福島第一原発3号機の「貯蔵MOX燃料の健全性、耐震安全性、高経年化対策」に関する公開質問状を提出し、回答を求めた。

●公開質問状は以下の通り。

2010年3月26日
東京電力株式会社  社長  清水 正孝  殿 

福島第一原発3号機の「貯蔵MOX燃料の健全性、耐震安全性、高経年化対策」に関する公開質問状

 貴社は、1月、福島県に対し、福島第一原発3号機でのプルサーマル計画の実施を申し入れました。これを受けて、佐藤雄平福島県知事が2月議会で、福島第一原発3号機でのプルサーマルについて、「耐震安全性、高経年化対策、貯蔵MOX燃料の健全性の確認」という「3条件を満たすことを必要不可欠な条件として、受け入れる」と表明しました。
 しかし、軽水炉でウランとプルトニウムの混合酸化物燃料(MOX燃料)を燃焼させるプルサーマルは原子炉の安全余裕を減らし、その危険性は、払拭されていません。
 1999年に搬入され、製造後12年貯蔵している福島第一原発3号機用ベルゴニュークリア社製MOX燃料は、もともと品質保証の不十分な燃料であり、12年も貯蔵しているために核壊変が進み、プルトニウム組成が変化し、核特性の変化、原子炉内の核反応への影響と、安全性の確保が担保されておりません。
 そもそも、福島第一原発3号機用MOX燃料の安全審査では、
1、再処理後2年をプルトニウムの組成変動の検討条件として審査しました。
2、MOX燃料の装荷遅れは、MOX燃料を装荷した炉心に対して、5年までの装荷遅れについての影響評価しかしていません。
 しかし、現時点でも、貯蔵MOX燃料は、安全審査を超え搬入後10年以上の装荷遅れとなっています。貴社は、ウラン燃料でも審査後10年以上経過して使用した例はないとしています。10年以上貯蔵しているMOX燃料は、安全審査の範囲を超え、既に安全とはいえません。安全が確認されない以上、廃棄すべき対象であり、安全を犠牲にして使用すべきではありません。
 また、使用済みMOX燃料は処理方策も決まらず、高速増殖炉商業炉の建設も第2再処理工場の建設の検討すらできない現状で、プルサーマルを実施すれば、行き場のない使用済みMOX燃料は地元に残され、地元は「核のごみ捨て場」になります。
 この際、わたしたちは、福島県民の安全・安心を最優先する立場から、貴社に対し、福島第一原発3号機の「貯蔵MOX燃料の健全性、耐震安全性、高経年化対策」について、下記の通り質問致します。誠実かつ明快な回答を求めるものです。



1、10年以上貯蔵している福島第一原発3号機用MOX燃料の健全性と安全性について
(1)ベルゴニュークリア社製MOX燃料の製造過程について
① 本貯蔵MOX燃料の製造を契約したのは1995年4月28日、完成したのは1998年12月25日とされているが、製造に用いられた二酸化プルトニウムは遅くともいつまでに分離精製されたのか。再処理後の年数、製造後の年数を明らかにされたい。
② 2000年、市民団体が貴社に起こしたMOX燃料装荷差止仮処分請求事件の際、貴社はMOX燃料ペレット寸法の全数データの開示を拒否した。貴社は「製造元のベルゴニュークリア社の企業秘密のため公開不可」を理由としたが、その後、ベルゴニュークリア社はMOX製造事業から撤退し、現在商業炉用のMOX製造はアレバグループの独占となり、貴社が挙げたペレット寸法の全数データ非開示の理由は消滅している。MOX燃料ペレット寸法の全数データを開示されたい。万一、開示しない場合は、その理由を示されたい。

(2)10年以上貯蔵している福島第一原発3号機用MOX燃料の現状について
① 2010年2月末時点での1F−3貯蔵MOX燃料の燃料集合体1体当たりの同位元素別の組成、および2010年7月末時点で予測される同燃料集合体1体当たりの同位元素別の組成を示されたい。
② 2010年2月末時点での1F−3貯蔵MOX燃料の燃料集合体1体当たりの放射能の総量(ベクレル)、および2010年7月末時点で予測される同燃料集合体1体当たりの放射能の総量(ベクレル)を示されたい。
③ 2010年2月末時点での1F−3貯蔵MOX燃料の燃料集合体1体から照射されるγ線の線量当量、および2010年7月末時点で予測される同燃料集合体1体から照射されるγ線の線量当量を示されたい。
④ 1F−3貯蔵MOX燃料に占めるアメリシウム241の比率が増加したことに伴い、この燃料を装荷した際の炉内の放射化生成物の増加をどの程度と評価しているか。内容を示されたい。
⑤ 貴社は1F−3貯蔵MOX燃料の装荷が5年遅れる際の核特性の変化(減速材ボイド係数、ドップラー係数を例示)を評価しているが、現状のように12年遅れた場合の核特性の変化は評価しているか。もし、評価しているであれば、その結果と根拠となるデータを示されたい。

(3)福島第一原発3号機で10年間貯蔵する間のMOX燃料の管理について
① 2000年に輸入燃料体検査に「合格」して以降、保安院、安全委または地元自治体から、1F−3貯蔵MOX燃料の貯蔵状況について報告を求められたことはあるか。ある場合は、その際提出した報告の内容を示されたい。

(4)MOX燃料からの放射性物質漏洩について
① 近年、電力各社で高燃焼度ウラン燃料の燃料棒から放射性物質が漏れる事象が相次いでいる。このような場合、貴社は1F−3での事象も含め、出力抑制法により、次回定検まで、漏えいを続けたまま運転を続けている。もしプルサーマル実施中に燃料からの漏えいがあった場合も、同様に漏れたまま運転を続けるのか。
② プルサーマル実施中に漏えい箇所がMOX燃料集合体であっても続けるのか。対処方針を示されたい。

(5)今回、10年間貯蔵したMOX燃料の使用を判断したことについて
① 貴社は、ウラン燃料さえも製造後10年以上経過しての使用開始の事例はかつてないと述べている。国や電事連は、市民団体からのプルサーマルの経済性の悪さの指摘への反証として、原子力発電の費用に占める燃料費の比率が小さいとしている。であれば、なぜ製造後12年の1F−3貯蔵MOX燃料をあえて使うのか。理由を示されたい。
② 1F−3貯蔵MOX燃料を装荷する場合と、これを破棄しメロックス工場で製造中の第2バッチMOX燃料を使用する場合との比較検討をしたのか。もし比較検討したならば、検討に用いた比較項目と結果を示されたい。

(6)10年間貯蔵したMOX燃料を使う際にとられる経年劣化対策について
① 新聞報道によると、福島第一原発所長は1F−3貯蔵MOX燃料と同時に装荷するウラン燃料の濃縮度を調整することで、燃焼度のカバーができる旨の発言をしている。具体的には、ウラン燃料集合体の濃縮度をどこまで上げる予定なのか。2010年6月19日からの定検中に1F−3貯蔵MOX燃料を装荷するとした場合に、同時に装荷するウラン燃料集合体における最高濃縮度と平均の濃縮度を示されたい。
② 1F−3貯蔵MOX燃料を装荷した上で、燃焼度をカバーする高濃度ウラン燃料を装荷した場合の炉心構成と原子炉のふるまいに関するシミュレーションを示されたい。
③ 1F−3貯蔵MOX燃料の核分裂性プルトニウムの富化度の低下への対策として、ウラン燃料集合体のウラン濃縮度の調整以外の対策として実施を予定していることを全て示されたい。
④ 1F−3貯蔵MOX燃料に経年変化で増加するアメリシウム241は、中性子を吸収するとされるが、炉の安全余裕を確保するために行う予定のことを全て示されたい。

(7)10年間貯蔵したMOX燃料の装荷遅れと安全審査について
① 1999年3月の原子炉安全専門審査会の資料には「装荷時期が想定よりも遅れた場合、241Puが241Amに壊変しPu組成が時間と共に変化するため、核特性が若干変化する」と記載されているが、何がどのように変化するのか。
② また、同安全審査の資料には、5年までの装荷遅れについて影響評価が示されているが、それ以上の装荷遅れについては想定されていないと理解してよいか。
③ 使用予定の1F−3貯蔵MOX燃料は安全審査の想定を超えており、安全審査での確認は無効になると理解してよいか。
④ 輸入燃料体検査申請書および安全審査は、製造から装荷までの時期を考慮した上で「標準組成」を定め、標準組成であることを前提に、再処理から2年後の燃料を想定して安全評価を行っている。1F−3貯蔵MOX燃料は、10年経ちアメリシウムなどの増加で標準組成とは異なる状態にあることは明らかであるが、10年の装荷遅れによる安全確認のため、再度、安全審査を受ける考えはあるか。ない場合はその理由を示されたい。

(8)現在実施中の「外観検査」と福島県への報告について
① 現在、1F−3貯蔵MOX燃料の外観検査を実施しているが、燃料棒にひび、さび、異物等の付着が発見された場合、その燃料集合体は破棄するのか。
② 現在、ファイバースコープで燃料集合体内部の燃料棒の外観を検査中であるが、ファイバースコープの操作を誤り、燃料棒のさやを損傷・変形させた場合、その燃料集合体は破棄するのか。
③ 1F−3貯蔵MOX燃料の外観検査終了後に予定している福島県に対する報告は、いつ頃になるのか。
④ その際、福島県のいう受け入れ3条件全体にわたる報告となるのか。
⑤ 1F−3貯蔵MOX燃料の外観検査が終了した段階で、市民団体が主催する集会に出席して、1F−3でのプルサーマル計画について説明し、質問に答える考えはあるか。

2、福島第一原発3号機の耐震安全性と老朽化対策について
(1)高経年化対策報告書の耐震安全性評価と高経年化対策について
① 2006年の1F−3高経年化対策報告書の耐震安全性評価は、対象機器について、旧指針による基準地震動S1、S2(270ガルおよび370ガル)により評価されている。しかし、この報告書の後に耐震設計審査指針の改訂があり、基準地震動はSs(450ガルおよび600ガル)とされ、新指針に対応した新しい基準地震動による耐震安全性評価をしていない。高経年化報告書の耐震安全性評価は陳腐化しているのではないか。
② 2006年の1F−3高経年化対策報告書のうち、復水器の胴部に腐食があるとした耐震安全性評価、計装配管に粒界応力腐食割れによる貫通亀裂があるとした耐震安全性評価などは、新指針に対応した新しい基準地震動による耐震安全性評価をした場合、許容値を超える可能性が高いのではないか。
③ 今後、1F−3において、MOX燃料の装荷に対応した、配管減肉、応力腐食割れ等に関する、新たな高経年化対策を考えているか。

(2)福島第一原発3号機での新耐震指針による耐震安全性評価の実施について
① 貴社は、福島第一原発5号機と同第二原発4号機について、国の新耐震指針による耐震安全性の中間報告を原子力安全・保安院に提出しているが、福島第一原発3号機は実施していない。新指針に対応した新しい基準地震動による耐震安全性評価が必要ではないのか。ないとすればその理由を示されたい。
② 1F−5と2F−4についての国の新耐震指針による耐震安全性の中間報告においては、双葉断層の長さを47.5キロに見直し、「基準地震動」の算出を最大加速度600ガルに上げた。1F−3は、双葉断層南端をいわき市まで延長した上で「基準地震動」を算出して、耐震安全性評価をすべきではないのか。ないとすればその理由を示されたい。
③ 1F−5と2F−4についての国の新耐震指針による耐震安全性の中間報告においては、原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する再循環系配管の耐震強度の評価がない。1F−3では、再循環系配管の耐震強度を評価すべきである。対処方針を示されたい。

3、使用済みMOX燃料の処理について
(1)使用済みMOX燃料搬出の前提である高速増殖炉商業炉と第2再処理工場について
①原子力立国計画では「プルサーマル使用済燃料はFBR用に貯蔵する」と明記され、使用済MOX燃料は第2再処理工場に運び、第2再処理工場は軽水炉サイクルと高速増殖炉サイクルが併存する移行期に位置づけられている。要は、使用済MOX燃料の搬出は、高速増殖炉商業炉の建設が前提となって初めて可能になるが、商業化の予定は当初の計画より既に80年遅れている。建設は可能なのか。可能とする理由を示されたい。
②第2再処理工場は、高速増殖炉の炉心燃料を再処理する高速増殖炉のための再処理工場だが、再処理工場さえ稼働できず高速増殖炉商業炉のめどが立っていないのに、第2再処理工場の建設の「2010年検討開始」は実行可能なのか。いつからはじめるのか。
③第2再処理工場はいつ完成・供用できると考えているのか。

(2)福島第一原発3号機用MOX燃料の使用済みMOX燃料のゆくえについて
①2009年1月北海道議会で資源エネルギー庁は、使用済MOX燃料を「貯蔵する場所は発電所です」と答えている。使用済みMOX燃料は、第2再処理工場ができるまでは、福島第一原発3号機の燃料プールまたは福島第一原発のサイト内に貯蔵するのか。どこに貯蔵するのか、対処方針を示されたい。

以上

ストップ!プルトニウム・キャンペーン  脱原発ネットワーク・会津  脱原発福島ネットワーク
とめようプルサーマル!三春ネット  福島原発30キロ圏ひとの会   双葉地方原発反対同盟


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by kazu1206k | 2010-03-26 17:25 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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