原子炉外部電源全喪失事故レポート

外部電源全喪失事故で停止していた福島第一原発2号機が7月16日午後11時に原子炉を再起動した。東京電力は、事故原因を人為ミスとしたが、根本原因が解明されないままで再発防止対策とはいい難い。真相は未だ明らかではない。腑に落ちない見切り発車だ。
東京電力と共に脱原発をめざす会から「福島第一原発2号機 原子炉外部電源全喪失事故」に関するレポート、が届いたので以下紹介する。

●「福島第一原発2号機 原子炉外部電源全喪失事故」に関するレポート
6.17/7.9東電本社ヒアリングをもとに

2010.7.15 東京電力と共に脱原発をめざす会 
   
(アンダーラインは、15日提出後に東電からの指摘を受けて修正・追加した部分)

1.事故の概要
・今回の原子炉「自動停止」は、10.06.17(14:52頃)発電機界磁遮断器「トリップ警報」に始まり、「発電機」「タービン」「原子炉」の順に自動停止した。
・しかし、その後外部電源に切り替わらなかったため、外部電源全喪失の事態となった。
・これを受けて、ただちに非常用ディーゼル2基が自動起動し、非常用交流電源は回復した。
・運転員は原子炉トリップによる原子炉水位の低下に備えて、タービン駆動による隔離時冷却系を手動起動した。水位は14:53頃-800mmに達し、そのまま横ばいで推移し14:58には水位回復した。

2.外部電源の遮断に至る
・当初の東京電力の発表では、原因を発電機界磁遮断器の故障とした。
・ところがその後、所内電源(常用系交流電源)A・B2系統の所内側遮断器がともに何らかの原因で同時に遮断されたことが判明した。
・内部電源が絶たれたさいには、B系が2号機送電線より、もしくはA系が1号機より、外部交流電源の供給を受けることになっている。1号機は定期検査中であったため、A系も1号機送電線により、2号機と同じ新福島変電所から送電されるはずであった。ところがこの2系統の外部電源もともに遮断されており、こうして外部電源「全」喪失に至った。
・すなわち2号機の所内電源は常用系交流電源・非常用系交流電源ともに遮断され、制御室も一瞬停電となった。【6月説明時。その後否定】

3.事故の経緯と東電による調査結果

a.内部電源A・B系遮断器が同時に作動した原因
・東京電力では「系統安定化装置」系の電源切替用「補助リレー」の「誤動作」により起きたと「推定」している。
・「系統安定化装置」とは、発電の需要と供給の安定化を図るもので供給オーバー時に原発を停止させるための装置(自動選定か否か不明)である。
・「補助リレー」の作動により、所内電源側遮断器は「切断OFF」、外部電源側遮断器が「入るON(接続)」にならなければならない。すなわち、所内電源A系・B系をともに遮断した上で、外部電源に切り替わる。
・この「系統安定化装置」からの信号により、電源切替用「補助リレー」は、A系・B系ともに作動するようになっている。
・したがってA系・B系のいずれかが作動した場合にも、所内電源はA系・B系がともに遮断される回路となっている。(多重化したシステムが破られる)
・ただし現在は系統安定のため「補助リレー」は使用されておらず、電源は切られコイルも外してあった(但し回路はそのまま生きていた)。

b.「補助リレー」の「誤動作」
・「誤動作」の原因は、B系「補助リレー」の脇で作業していた作業員の接触等の衝撃で、「補助リレー」の回路が接触して「誤動作(2:52)」したものと東京電力は『推定』。
今回の補助リレーが動作した時間は5~7ミリ秒×3回と考えられる。【?】
・『補助リレーの動作時間が極めて瞬間的であると、所内側遮断器のみが「切」状態になり、外部電源側の遮断器は「入」状態にならず、発電機からの受電が外部電源からの受電に切り替わらない可能性があること』が、判明したとしている。
・さらに「補助リレー」の打振試験で、極めて瞬間的(5~7ミリ秒)に動作することが確認されたとしている。
・ただし協力会社作業員は接触、衝撃を否定している。
・B系「補助リレー」が誤動作した証拠、記録等のデータ確認不明。「系統安定化装置」のデータ確認の有無不明。★
・A系「補助リレー」は別のところにあり、当時作業はしていなかった。

c.所内遮断器A・B「切」でも外部電源2系統のいずれも「入らず」、外部電源全喪失に。
・所内遮断器A・B「切」でも発電機の「界磁遮断器」は、まだ「切」になっていないため、ダブル接電となるのを避けて接続できないようになっている(インターロック)。200ミリ秒程度のタイムラグがある。しゃ断器が動作完了するまでの時間は200ミリ秒程度。
・外部電源がONにならないため、常用系交流電源2系統、非常用系交流電源ともに停止。外部電源全喪失状態となる。

d.外部電源全喪失に続く事態

(1)原子炉トリップ★
・「常用系電源2系統が停止」したことにより、「励磁制御装置」の冷却ファン停止。
・冷却ファン停止のため、発電機「界磁遮断器」が作動して「切」状態となり、発電機「自動停止」。
・発電機「自動停止」によりタービンが「自動停止」、続いて原子炉「自動停止」。この間3~4秒。

(2)原子炉内水位の低下★
・「常用系電源2系統が停止」したことにより、原子炉へ冷却水を戻す「給水ポンプ停止」、冷却水が戻らないため原子炉水位が低下。逃し安全弁も作動(複数回開閉)。
・原子炉水位低下(2:53、-800mm)により、代替ポンプの「原子炉隔離時冷却系」ポンプを「手動起動」して、「復水貯蔵タンク」より給水開始。自動起動のレベルには至っていないが、水位低下は予見されたので手動で起動した。【注:通常ECCS系および隔離時冷却系は、基準の水位レベルにより自動起動する設定】
・水位は2:58まで5分間ほど-800mmの横ばい状態であったが、以後水位回復。
・3:40には「原子炉隔離時冷却系」の自動停止レベル(水位「高」=L8)に達したため注水はストップされた。「原子炉隔離時冷却系」の流量は毎時95~100㎥。

(3)非常用ディーゼル発電の起動★
・「常用系電源2系統が停止した」ことにより、常用系交流電源から受電している「非常用交流電源」も停止したため、「非常用ディーゼル発電設備」が直ちに「自動起動」した。基準内(=10秒以内)の起動であった。一部に十数分後という報道があったが、間違い。
・その後( : )「非常用交流電源」により代替の復水ポンプが起動し給水開始? 
・外部電源の復帰はA系統母線が3:25、B系統母線は3:55であった。
A電源、B電源の復旧後、順次、復水ポンプ、給水ポンプを起動。

4.東電説明の問題点、疑問点

a.「作業員による接触」を原因と「推定」しているが、消去法によるもので、原因は未解明。
→◆Q1
・B系「補助リレー」の誤動作という証拠、記録などは示されていない。
・「作業員接触」を原因とするならば、非常にお粗末な装置ということになる。東電発表の「4.対策」によれば、「ケースに収納されておらず」と剥き出し状態を窺わせる。東電の示した写真によれば「補助リレー」の回路は箱に覆われており、回路は透明カバーがあると説明した。
・カバーがなければ問題、あっても作業員の接触程度で「原子炉停止」してしまう装置を放置していたことになる。原子炉停止は数億円の損失となる。「原子炉停止」を何だと思っているのか(燃料漏洩では停止させず運転継続している)。
・作業員の接触程度で「誤動作」するデリケートな装置が、84年に設置して以来、今日まで同様の「誤動作」をしなかったとは信じられない(この「誤動作」は電源ON,OFFは関係ない)。何故、今まで「誤動作」(地震、定期検診・点検等)が起きなかったのか? 
・前例がないことの方が不思議だといえる。と考えると今回の原因は、「補助リレー」の「誤動作」との調査結果には懐疑的になる。他の可能性についての検討過程と結果を公表するべき。

b.所内遮断器A・B「切」でも外部電源「入らず」は、制御システム設計の問題ではないのか。
  →◆Q2
・発電機系の故障で発電機停止となった場合、外部電源側遮断器「入る」になるはず。今回タイムラグと言っても「発電機停止時点」で別途、外部電源側遮断器「入る」のパス(信号)があっても良いのではないのか。今回は、この欠陥が大きな問題なのではないのか。
・「系統安定化装置」系の電源切替用「補助リレー」の正常作動ステップを聞いておく必要がある。
・発信パスが違うとはいえ「発電機停止時」に同じ対応をしないのは、制御システムの設計ミス。
・今回の事故(非常に稀)に非常用ディーゼル発電設備の故障(東電によれば非常に簡単に起きる)が重なっていたらどうなっていたのか。
・この制御システムの設計欠陥は他号機も一緒のはず。
・「対策」として「近づかない」「注意喚起の表示」でよいのか。意図的に人為ミスとしようとしているが、制御システムの問題でありシステム変更の対策が必要。

5.情報公開を求める★
・時系列と計器類チャートの公表
・作業フローの公表
・他号機の状態の公表

6.事故報告について
・今回の事故はおそらくわが国初の「外部電源全喪失事故」であり、『原子炉等規制法第62条の3の規定に基づき原子力事業者から規制行政庁に報告され、』『規制行政庁は同法第72条の3第2項の規定に基づき安全委原子力安全委員会に報告する』事故に該当することは間違いない。
・しかし東電も保安院も『法令に基づく報告対象ではない』としている。
・原因究明は、全く不十分である。中間報告でしかない。
・なんらかの文書があるのか、保安院に提出したのか、明らかにしていない。
・およそ事故経緯を物語る時系列も無ければパラメータの推移を示すチャートも、一切公開されていない。

a.事故報告書とは言えない→◆Q3
・東電は発生直後の6/17のプレスリリースの時点では「重要事象」として認識していた。『本事象は公表区分I(法律に基づく重要な事象など)としてお知らせするものです。』とある。
・ところが7月6日のプレスリリースにおいては、保安院に報告したと明記されていないし、およそ事故調査報告といえるような内容ではない。事故調査報告はあるのか、ないのか。
・いっぽう保安院は、「原子炉の自動停止の原因及び対策について、本日、報告を受けました。」とし、その報告をもって「妥当とする」とした。保安院に提出した報告とは何か。
・事故報告書、及び保安院に提出した事故報告書を開示されたい。

b.明らかに『法令に基づく報告対象』である→◆Q4
・「原子炉停止」において、停止目的をもって意識的に正常な工程により「停止」した場合は「日常運転」という。しかし、停止目的、意思もなく自動的に「原子炉停止」した場合は、「非日常運転」であり何か「異常が起きた」ということであり、原因には「故障」「事故」が想定される。
・つまり「原子炉自動停止」には報告義務が生じる。まして今回の「停止原因」は、「常用系電源」「非常用交流電源」A・B2系統の共倒れ電源喪失。辛うじて「非常用ディーゼル発電」の自動起動で電源を確保した「非常事態」であった。「報告の必要なし」とは如何なる解釈なのか。
・「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」第19条の17「事故故障等の報告」2項「原子炉の運転中において、原子炉施設の故障により、原子炉の運転が停止したとき」とある。
・「事故故障等の報告」の「等」は、トラブルを含む重要事項については報告をせよとの解釈が妥当。今回の電源喪失という「非常事態」による「原子炉自動停止」は、「原子炉施設の事故故障等」によるものである。
・「規則」の第二条ニ項に記載の「原子炉施設」の中の「安全保護回路」に属す。そうでなくても最後の「その他原子炉の付属施設」には属すと考える。「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」によれば、「原子炉及びその付属施設」=「原子炉施設」という定義である。
・新しい「原子力実務六法」「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」(以下、「規則」)
によれば、今回の「事象(←東電の表現)」は十日以内に所轄大臣へ報告しなければならない対象であると解釈せざるをえない。
・なぜ、東電はそれを否定するのか。明確な回答を求める。

c.事故の原因と対策はいずれも未完である。中間報告でしかない。→◆Q5
・電気事業法、実用発電用原子炉技術基準を定める省令第24条の2「原子炉制御室等」2項では、「原子炉制御室には、・・・原子炉を安全に運転するための主要な装置を集中し、かつ、誤操作することなく適切に運転操作することができるように施設しなければならない。」とある。制御室は原子力施設であり、そこには重要な装置があり、そこでの「誤作動」「誤操作」は許されない。今回の発電機界磁遮断機「トリップ警報」は、「誤作動」なのか「誤操作」か、「故障」なのか「事故」なのか、原因究明は未了である。
・少なくとも外部電源に切替ができず、「不必要に」全電源喪失に至ったことは、制御システムの欠陥ではないか。「原子炉施設の事故故障等」による「原子炉自動停止」である。
・「作業員の接触」という推論を是としても、「作業員の誤操作」ということ。「誤操作」しないように施設しなければならない。
・真の原因は制御システムの欠陥であり、真の対策はその欠陥の是正ではないのか。
・他のプラント、他社のプラント、海外にも水平展開すべきと考える。原子力の安全を保障するべく東電の責任を全うされよ。

7.追加質問

a.外部電源全喪失事故
・「外部電源全喪失」は東電では初めてではないのか。
・その結果非常用ディーゼル発電機が起動し、実際に発電したことも初めてではないのか。
・国内ではどうか。
・海外の主な外部電源喪失事故には、どのようなものがあるか。

b.系統安定化装置
・「系統安定化装置」が必要になった理由、不要になった理由。不要になった際の処置として、何を実行し、何を放置していたのか。
・15日発生した6号機で故障の判明した「保護装置」のはたらきと今回の異常。
・柏崎刈羽原発ではどのようになっているのか。


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by kazu1206k | 2010-07-20 07:33 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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