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読書「TPP反対の大義」

農文協が昨年12月25日に出版した『TPP反対の大義』(農文協ブックレット)を読みました。
執筆者は、政治・経済学者、哲学者、農学者、農家、生協、漁協、自治体関係者など各界から、小異を残し大同についた総勢26名の方々。ブックレットにしては読み応えがあり、TPPを商工業、消費者も含むすべての国民の問題として重層的に論じた、格好の入門書です。

「『大義』とは『人の道』というほどの意味ですが、これと合わせ『国民的大義』とはTPP反対を農業・農家保護の問題としてではなく、商工業、消費者も含む全ての国民の問題として論じることであり、日本社会の存立に関わる問題として論じることを意味しています。そのような立場から本書ではTPPへの参加が、いのちと暮らしを支える農林水産業はもとより、圧倒的多数の商工業や地方経済に大きな打撃を与え、日本社会の土台を根底からくつがえす希代の愚作であることを明らかにします。」(まえがき)

「平成の開国元年」と叫ぶ菅首相は年頭記者会見で、国の在り方の理念として「貿易の自由化の促進」をあげ、経団連などの新年祝賀パーティーでも「開国」を強調してTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加を強調すれば、新聞の年頭社説も「開国」のフレーズが踊りTPPの参加を訴え、TPP早期参加の雰囲気づくりに躍起です。
しかし、「日本の関税率は低い」「製造業がTPPに参加して輸出を拡大することはできない」「 日本は幕末明治の開国以降、"関税自主権"の回復の為に戦った。TPPは逆。関税自主権を失うためにやっている」と「開国」の中身の違いを指摘する学者もいます。1858年の日米修好通商条約で関税自主権を喪失、失った経済的独立を取り戻すまでに約50年の歳月を要したという歴史的な教訓を指摘しています。
また、NHKやマスコミが発表する「TPP推進」の世論調査と逆に、全国の都道府県と政令指定都市の66議会のうち46議会がTPPに関する意見書を可決し、TPP反対は14議会、「慎重対応」を求めるものが32議会にのぼり、見切り発車反対の声が広がっています。
「工業vs農業」「農水省vs経産省」「1次産業vs製造業」「開国か鎖国か」といった対立構造を意図的に作り上げ煽動するマスコミと菅内閣に対して、単純な議論とは一線を画した、今後の日本国の国のかたちを考えた冷静な議論が必要です。今こそ多様な国民的な議論が必要なときです。

「本書では、こうした構図自体が誤っていることを理論的に明らかにし、農業と商工業が相たずさえて発展する道、むらと農家経営を守り日本国土、自然を守る道、全ての国民が末永く日本国土、地域社会で安らかに暮らしていける道、その土台となる農業の大義、地方経済の大切さ、地域内循環型経済づくりの展望等々を全力をあげて明らかにしています。」(まえがき)
ご一読を御勧めします。

農山漁村文化協会編
税込価格: ¥840 (本体 : ¥800)
出版 : 農山漁村文化協会
サイズ : 21cm / 142p


by kazu1206k | 2011-01-22 09:00 | 農水商工業 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k