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繰り返すな!検査すれども治療せず

8月26日夕、明日28日午後3時からいわき市平中央公園 で開かれる「さよなら原発 子供たちと私たちの未来を守るパレード!」に参加する広島県の市民団体の第一陣が、遠路はるばる到着されました。これは、8月5〜6日にわたくしが広島市を訪れ福島原発震災の実情を報告し交流した際に、福島訪問を呼びかけましたところ、早速応えてくださったものです。

広島市には、原子爆弾による被ばく「調査」を行い「治療」をしなかったことで有名な放射線影響研究所があります。また、長崎大学の山下俊一氏とともに福島県放射線健康リスク管理アドバイザーを務め、福島県立医科大学の副学長に就任した神谷研二教授が所長を務める広島大学原爆放射線医科学研究所もあります。

この放射線影響研究所の前身は、アメリカ政府が設立した原爆傷害調査委員会「ABCC」です。原子爆弾による傷害の実態を調査記録するため、広島への原爆投下直後にアメリカが設置したもので、調査が目的のため被爆者の治療は一切しませんでした。
『「検査すれども治療せず」だった。私自身、ABCCで裸にされ、全身調べられたあげく、何の説明も受けられなかっ た屈辱的な経験がある。放影研に改組後も、米国人科学者が難しいことをしている「象牙の塔」というイメージで、近づ くこともなかった。』(日本被団協代表委員 坪井直氏)。
被爆者に治療を施さず、被爆者をモルモット扱いしたため「検査すれども治療せず」といわれ、非人間的な存在の象徴となりました。そして、ここでの調査研究結果が現在の放射線影響の尺度の基本データとなったのです。

ABCCは1975年に、1948年から研究に加わっていた国立予防衛生研究所と組織改編を行い、日米共同出資運営方式の財団法人放射線影響研究所が発足しました。
チェルノブイリ原発事故の際、事故調査を行い「安全宣言」を発表した国際原子力機関(IAEA)の事故調査委員会の委員長が、放射線影響研究所理事を務めた重松逸造氏です。1990年に世界保健機関(WHO)のチェルノブイリ事故科学諮問委員会会議を開催、1995年にはWHOの「緊急被曝(ひばく)医療支援ネットワーク」会議を開催しています。重松氏は『ここの研究が原発建設に大いに役立っている』と語ったといいます。
福島原発事故では、4月、政府が「チェルノブイリ事故との比較」という公式見解を発表しましたが、この事実上の安全宣言に名を連ねた1人が放射線影響研究所の理事を務めた長瀧重信氏でした。

4月下旬、福島県立医大の関係者が放影研を視察し、放影研等でつくる「放射線影響研究機関協議会」に福島県立医大が加盟しました。
こうして、広島、長崎の被爆者健康調査で構築された手法で福島県の県民健康管理調査はすすめられています。広島大学や長崎大学、放射線影響研究所などでつくる福島県民健康管理調査検討委員会の座長が山下俊一氏。県立医科大を中心に、広島、長崎の各機関や放射線医学総合研究所、福島県医師会などがサポートする体制が固められました。

広島大原爆放射線医科学研究所の神谷研二所長は「福島県民の健康を守るために、広島の蓄積を生かしたい」と話しています。「検査すれども治療せず」の歴史を繰り返すことは許されません。原爆の惨禍を受けた広島と原発の被害を受け続ける福島の市民がともにつながり監視していきます。
by kazu1206k | 2011-08-27 09:09 | 福祉医療 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k