県民健康管理調査で福島県に要請

子どもたちを放射能から守る福島ネットワークなどが、福島県と県民健康管理調査に関する交渉を8月29日に行いました。
下記のプレスリリースをご覧下さい。

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県民健康管理調査に関して、福島県に要請
~低線量被ばくの影響を軽視した調査手法に警鐘
被ばくの実態の把握と低減を目的とした調査を求める~
http://www.foejapan.org/energy/news/p110829_2.html
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本日、子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)、国際環境NGO FoE Japanは、福島県との交渉を行い、①県民健康管理調査の目的を、県民の「不安解消」ではなく、被ばくの低減と健康被害の最小化のためとすること、②低線量被ばくによる影響を重視し、影響があることを前提にした調査とすること、③尿検査やホールボディカウンターの検出限界値を下げ、低線量被ばくによる影響を把握し、被ばくを避けるための予防措置がとれるようにすること――などを求める要請書を提出しました。

県は、「調査の目的は県民の不安をかきたてないような表現とした。検出限界値の問題は、調査を実施した放射線医学総合研究所、放射線影響研究所にきいてほしい」と回答しました。

主催団体は、「今の検出限界値は、たとえば尿検査については、実際に市民団体による調査で検出されたセシウムの濃度の10倍以上となっている。これでは、低線量被ばくの状況が把握できず、被ばく低下の対策もとれない」と述べました。
参加者からは、「県民を守るための、県民が信頼できるような調査をしてほしい。尿検査を実施してほしい」などの意見が出されました。

交渉に先立って、(1)「山下俊一氏の罷免を求める県民署名」(呼びかけ:子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク)6,662筆、(2)「避難・疎開の促進と1ミリシーベルトの順守を」 49,775筆(呼びかけ:子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)、国際環境NGOFoE Japan、グリーン・アクション、美浜の会、グリーンピース・ジャパン)を提出しました。



●県民健康管理調査に関する要請書

福島県知事 佐藤 雄平様

子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
国際環境 NGO FoE Japan
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)

要請項目
1.県民健康管理調査の目的について、県民の「不安解消」ではなく、被ばくの低減と健康被 害の最小化のために行うこと、予防的措置を可能にすること
2.低線量被ばくによる影響を重視し、影響があることを前提にした調査とすること
3.被ばくによる影響を小児の甲状腺がんに限定せず、起こりうるあらゆる疾患について対処できるよう、検査項目や健康診断の項目を見直すこと
4.尿検査やホールボディカウンターについて県民全員が受検できるようにすること、検査生データについて本人に開示すること、判断基準とその根拠を明らかにすること
5.尿検査やホールボディカウンターの検出限界値を下げ、低線量被ばくによる影響を把握し、被ばくを避けるための予防措置をとることができるようにすること
6.県民健康管理調査の調査項目、調査手法の詳細を公開し、第三者のチェックを経ること
7.山下俊一氏をはじめ低線量被ばくの影響を軽視する委員を県民健康管理調査に関わる委員から解任し、低線量被ばくの影響を重視する専門家と交代させること

要請理由

県が本格実施を予定している、県民健康管理調査は、目的に「放射線の影響による(県民の) 不安の解消」をあげているように、はじめから福島原発事故による影響が少ないことを前提に し、「事故による放射線の健康影響については、現時点での予想される外部及び内部被ばく線 量を考慮すると極めて少ないと考えられます。」(「健康診断の目的」他の項)と決めつけてい ます。しかし低線量被ばくの影響については、広島・長崎やチェルノブイリの知見を含め、こ れを重視する知見も多く(注)、ICRP やそれを取り入れた日本の法令も、低線量であっても線 量に応じたリスクがあることを前提にしています。予防原則の立場からも、影響があるとの前 提に立つべきです。
さらに、「チェルノブイリ原発事故で唯一明らかにされたのは、放射性ヨウ素の内部被ばく による小児の甲状腺がんの増加のみであり、その他の疾病の増加については認められていませ ん。」(「健康診断の目的」他の項)とあるように、影響を小児の甲状腺がんに限定し、そのた めに、放射線の影響による特別な健康診断は「甲状腺検査」に限られています。他は一般的な 健康診断だけであり、放射線の影響とは全く関係のない「こころの健康度」といったものが重視されています。 しかし、チェルノブイリ原発事故では、膀胱癌や心臓病など、甲状腺がん以外の疾患も多数報告されています。原爆被爆者や原発労働者には、原爆(原発)ブラブラ病と呼ばれる症状が 出ています。調査や健康診断は、起こりうるあらゆる疾患に対応できるようにすべきです。
低線量被ばくの影響はなく、影響は甲状腺がんのみという考え方は、健康管理検討委員会の 座長であり、県の健康リスク管理アドバイザーでもある山下俊一氏の影響が大きいと思われま す。山下氏は 100 ミリシーベルト以下では健康影響はないと断言するなど、低線量被ばくの影 響を過小にみる立場にあります。このような人に県民の健康管理を担わせることはできません。
さらに、JCO 臨界事故に際し、茨城県の健康管理調査委員会の委員長であった大倉氏が、 福島県の健康リスク管理アドバイザー(精神面)に就きますが、大倉氏は、JCO の調査では、 「事故後の検査結果で異常が多くてびっくりした。それで統計を取り直し正常範囲を変更し た」という人物です。県の人選には疑問を抱かずにはいられません。
調査の問題点は、先行調査における尿検査やホールボディカウンターの検出限界値にも如実 に現れています。県は先行調査において、尿検査の検出限界値を 13 ベクレルとしました。し かし、チェルノブイリ膀胱炎と呼ばれる、膀胱癌の前段現象は、尿検査のデータが 6 ベクレル 程度でも問題になっています。市民団体が行った福島の子どもたち 10 人の尿検査では、0.4~ 1.3 ベクレルのセシウムが全員から検出されました。先行調査の検出限界値はこの値の 10 倍以 上です。
検出限界が高いことにより、低線量被ばくの影響について、追跡することができなくなって しまいます。また、比較的低い数値であっても、検査を継続的に行い、避難の有無や食べ物と 比較すれば、内部被ばくの原因が明らかになり、被ばくを避けるために必要な措置を知ること ができるのですが、県のやりかたでは、これができなくなります。すなわち、全員セシウムは なしとされてしまい、被ばくを避け、被害を最小限に抑えるための予防的措置がとれなくなっ てしまいます。
このように健康管理調査については、目的、方法、専門家の人選を含めて、根本的に見直し を図る必要があります。

注)たとえば、以下のような研究がある。
Tondel M et al., “Increase of regional total cancer incidence in North Sweden due to the Chernobyl accident?” Epidemiol Community Health 58:1011-1016, 2004.
Alexey V. YABLOKOV, Vassily B. NESTERENKO, Alexey V. NESTERENKO, “Chernobyl- Consequences of the Catastrophe for People and the Environment”, 2009
Gesellschaft für Strahlenschutz e.V. , “Health Effects of Chernobyl, 25 years after the reactor catastrophe”, 2011
E Cardiset al., “Risk of cancer after low doses of ionising radiation: retrospective cohort study in 15 countries” 2005
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by kazu1206k | 2011-09-01 19:06 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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