福島医大の健康管理センターと浜通りの医療機関

9月20日、福島県立医大が放射線医療の拠点化を目指してまとめた復興ビジョンの概要が報道された。概要は、①330床の放射線医学県民健康管理センターを新設する医療施設の拡充、②がん治療薬の開発、③県民を対象とした健康管理調査による被ばく者健康管理、④医学部の定員増、⑤医療産業振興の5本柱で、総事業費は、約1千億円。福島県は東日本大震災の復興計画として、国の第三次補正予算案に盛り込むよう求めている。

報道によると、330床を有する放射線医学県民健康管理センター(仮称)など5施設を5年以内に新設。国内の専門家を医療・研究スタッフとして迎え、県内のがん医療を国内最高水準に引き上げる。被ばく医療専門の医学講座を年内に設けて人材育成にも取り組む。放射線医学県民健康管理センターはがんの早期治療を担う拠点施設とされ、付属病院の甲状腺外科、血液内科、放射線科、皮膚科を移設、専門医を配置する。乳幼児や妊産婦への放射線の影響をうけ小児科、産科もセンター内に置き、病気の早期発見に当たる分子イメージング施設、がんの発見に用いるPET(ポジトロン断層撮影)やサイクロトロン、超高解像度のCTスキャン、内部被ばく状況を検査するホールボディーカウンターなどの最新機器を配備する計画である。

計画では、がん治療の薬剤開発を進める創薬・治験センターも整備。全県民対象の健康管理調査の結果を分析し、新たながんの治療法を開発したりする研究・実験施設も設置するとされ、放射線関連の医療産業の集積では、産学連携の『ふくしま医療産業振興拠点』(仮称)を設け、海外企業等と連携して放射線医療の検査、診断、治療に用いる機器開発などを促進して、研究のパートナーの業誘致も進める。
医学講座は被ばく医療に特化し、講座新設に合わせて医学部の定員増を国に求め、公的病院に派遣する医師の数を増やすことも検討する方針。新設に伴う数十人規模の医師、教授は、放射線医療の連携協定を結ぶ長崎・広島両大からの人材派遣される。

翻って、医師の養成と通常医療を行なってきた福島県立医大の原発事故後の対応には、県民から疑問や批判が出ていた。「浜通りの医療機関から一斉に医師を引き上げたのではないか」「被災地で本格的な救援活動をしなかったのではないか」「副学長に就任した山下俊一氏は、原発事故直後から、安全・安心をふりまいたから、放射線被曝から子どもたちを守ろうとする親たちから福島県の放射線健康リスク管理アドバイザー解任運動が起きたのではないか」「ホットスポット地帯の住民が再三再四ホールボディカウンターによる検査を求めても受け入れてくれなかったではないか」「国際会議では長期的な低線量被曝の影響を打ち消すことに躍起なのではないか」「福島県民健康管理調査、県民はモルモットではない」などなど、不信の声が被災者から聞かれる。

この事業計画、約1千億円もの税金を福島県立医大に投入する。端的に言って、ほんとうに被災者であリ、放射線被曝に苦しむ県民の健康を維持する役に立つのか、ということだ。
この計画は並みの計画ではない。仕掛けは大きい。仕掛けは作るがそこに本来の社会的合理性と経済合理性が感じられない点も多いのが実態ではないのか。現在、778床の附属病院の病床は持て余し気味というが、病床利用率と平均在院日数から、330床は 活用できるのか。病院赤字の原因をつくることにならないのか。この事業計画が、果たして、放射線被曝に苦しむ福島県民の健康を守り、被災者の生活が維持され、生活の再建に直結するのか。雇用が生み出され、被災者を多数雇用する地元企業に金が循環していくのか。復興予算を医大の病棟建て直しと医療機器に回しても、県民の健康を維持していく地域医療の再生にならない、など復興予算1千億円の福島県立医大への投入に疑問がつきまとう。

復興予算の受益者が、福島県立医大なのか。むしろ必要なのは、警戒区域の病院が閉鎖され、緊急時避難準備区域の全病院の経営が悪化し、医療サービスが足りずに困っている浜通りに焦点を当てることだ。浜通りの被災者が復興予算の受益者にならないとしたら、おかしなことだ。焼け太りのような予算要求では、真の復興につながらない。復興予算は、浜通りの医療機関をこそ援助すべきではないかと思う。
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by kazu1206k | 2011-09-29 16:41 | 地域 | Comments(0)

佐藤かずよし


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