原子力規制委員会の人事案の撤回を

問題だらけの原子力規制委員会人事案。5人(田中俊一氏、更田豊志氏、大島賢三氏、中村佳代子氏、島崎邦彦氏)のうちの3人は、現在までの原子力推進政策の責任を問われるべき立場です。
田中俊一氏は、日本原子力研究開発機構副理事長、原子力委員長代理、原子力学会会長を歴任、長年「原子力ムラ」の中心人物です。事故後も原子力損害賠償紛争審査会では、最後まで自主的避難者への賠償に反対したことが批判されています。
この人選は「原子力ムラとの決別」「利用と規制の分離」「原子力安全規制に対する国民の信頼を得る」とした原子力規制委員会の法律の趣旨を踏みにじるものです。
しかし、8月1日、田中氏の所信表明を終え、来週にも衆議院、参議院の本会議にかかるといわれています。
脱原発弁護団全国連絡会は、8月1日、原子力規制委員会の人事案の撤回を求める緊急要請書を政府宛に提出しました。以下に掲載します。

●2012/8/1 原子力永久推進体制をもくろむ原子力規制委員会・人事案の撤回を求める

脱原発弁護団全国連絡会               
    弁護士 海渡雄一

3.11後の日本を託す委員会

2012年6月原子力規制委員会設置法が成立し、委員長と委員の選任手続が進行中である。
この組織は、福島第1原発事故後の原子力安全規制を委ねられ、全国の原発の再稼働の適否や放射性廃棄物の管理処分の方法などについて判断していく組織である。
福島第1原発事故によって根底から失われた原子力安全行政への国民の信頼の回復が、新たに選任される委員長・委員の手に委ねられるはずだった。
真に完全独立の機関設置が求められていた新たに設置される原子力規制委員会は経済産業省から完全に独立し、これと明確に分離されたものとする必要がある。
その実現なくして原発の再稼働の適否の判断など到底不可能である。
真に独立した規制機関の設立は私たちの要求だった。しかし現実に起きたことは?

あるべき原子力規制制度

経済産業行政から真に独立した規制機関を速やかに設立する。規制委員会を設置し、委員の身分保障を確立させることを目的としてきた。
経済産業省から規制機関には片道切符で。ノーリターン制を全体に適用するべき。
「バックフィット制度」「過酷事故対策の法規制化」「原発寿命制限」は危険な原発を止めていく武器となるはずだった。
しかし、独立性の高い委員会の委員に原子力ムラのボスが居座ったら、原発の永久推進体制ができてしまう。その悪夢が現実となろうとしている。

その重大性にふさわしい手続を

原子力規制委員会設置法第7条は委員長及び委員は、「人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する」ことを求めている。
真にこのような要件に合致したものが選任されるためには、それにふさわしい委員長・委員の選任基準と選任方法をとる必要があった。

国会事故調の求める選任手続

国会事故調は新たな規制組織の独立性は「1)政府内の推進組織からの独立性、2)事業者からの独立性、3)政治からの独立性を実現(中略)する。」ものとする。
その委員の選定にあたっては、「第三者機関に1次選定として、相当数の候補者の選定を行わせた上で、その中から国会同意人事として国会が最終決定するといった透明なプロセスを設定する」とされていた。 

日弁連7月19日付会長声明

法の定める欠格要件と7月3日要件に従うだけでなく、委員長・委員が国会の同意人事となっている趣旨を踏まえ、日弁連は「候補者の原子力安全に関する過去の主要な言動を国会事務局において収集し、国会に提出した上で、候補者を国会に招致し、その資質と識見に関して時間をかけて質疑を行い、そのプロセスを公開し、さらに、その候補者に対する国民の意見を聴取するべきである。」との意見を述べている。

法の欠格要件と政府が定めた欠格要件

法の欠格要件(法7条7項3号)
 原子力事業者等及びその団体の役員、従業者である者
政府が定めた欠格要件
 就任前直近3年間に原子力事業者等及びその団体の役員、従業者等であった者
更田氏・中村氏はこの二つの要件に該当する。

法の定める欠格事由

設置法7条7項三号は、規制委員会の委員長及び委員について、「原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理若しくは廃棄の事業を行う者、原子炉を設置する者、(中略)の従業者」を欠格事由として定めている。

委員の選任に関する政府ガイドライン

政府は、7月3日付要件において、委員長及び委員について、上記法律上の欠格要件に加えて、「1)就任前直近3年間に、原子力事業者等及びその団体の役員、従業者等であった者、2)就任前直近3年間に、同一の原子力事業者等から、個人として、一定額以上の報酬等を受領していた者」を不適格とした。

「原子力事業者」とは

「原子力事業者」とは、原子炉等規制法58条1項において「製錬事業者、加工事業者、原子炉設置者、外国原子力船運航者、使用済燃料貯蔵事業者、再処理事業者、廃棄事業者及び使用者(中略以下「原子力事業者等」という。)(略)」と定められている。

委員候補の更田豊志氏について

政府が提案している委員候補の更田豊志氏は、現在、独立行政法人日本原子力研究開発機構の副部門長である。
同機構は、高速増殖炉もんじゅを設置し、東海再処理工場を保有する原子力事業者であり、法7条7項三号の定める再処理事業者・原子炉設置者に該当することは明らかである。
更田氏は、現在においても同機構の従業員であって、上記の欠格要件に該当する。

委員候補の中村佳代子氏について

政府が提案している委員候補の中村佳代子氏は、公益社団法人日本アイソトープ協会のプロジェクトチーム主査である。
同協会は、研究系・医療系の放射性廃棄物の集荷・貯蔵・処理を行っており、「原子力に係る貯蔵・廃棄」の事業を行う者である。
現在は文部科学省の管轄下にあるものの、法の施行後は原子力規制委員会による規制・監督に服することになるのであって、法7条7項3号の定める原子力事業者等に該当する。
中村氏は、現在においても同協会の従業員であって、上記の欠格要件に該当する。

委員選任と同時に辞職するからよい?!

政府は委員選任と同時に辞職予定であるから法の定める欠格事由に該当しないと説明しているようである
しかし、辞職さえすれば欠格要件に該当しないのであれば、欠格要件を定めた理由がなく、このような解釈は法の趣旨に反する。

営利事業でないからよい?!

政府は、7月3日付要件については、独立行政法人日本原子力研究開発機構・公益社団法人日本アイソトープ協会は営利企業ではないため、「原子力事業者等」に該当しないと説明している。
しかし、原子力規制委員会とその規制対象となる原子力事業者との間の利益相反を防止するとの欠格要件の趣旨は、非営利団体にも等しく妥当する。政府の解釈は、欠格要件を定めた法と7月3日要件の趣旨を理解せず、「原子力事業者等」を不当に狭く解するものであって、不当である。

選任のプロセスをやり直せ!

法と7月3日要件に定められた政府方針に反するような者が委員候補とされたことは遺憾である。
このような事態となった原因は現在政府が進めている委員の選定のプロセスが不透明であることに求められる。
選任のプロセス自体をやり直すためにも、政府は法違反の二名だけでなく、人事案全体を撤回し、委員候補を再提案するよう強く求める。
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by kazu1206k | 2012-08-02 12:30 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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