東電の追加賠償で日弁連声明

 東京電力は、福島第一原発事故による避難区域以外の住民への追加賠償策「自主的避難等に係る損害に対する追加賠償について」を12月5日に発表した。
 これは、避難区域以外の福島県浜通りと中通りの23市町村住民に今年1〜8月の損害分として、避難したか否かにかかわらず1人当たり4万円の追加賠償、妊婦と18歳以下の子どもは精神的苦痛と生活費の増加費用等として8万円上乗せし、1人当たり計12万円を支払うというものだ。
 県南9市町村と宮城県丸森町にも、事故発生以降の損害分として1人当たり4万円、妊婦と子どもは今年1〜8月末までの精神的苦痛と生活費の増加費として4万円を上乗せするという。
 東京電力は、これら避難区域以外の住民への一律賠償を今回で打ち切る方針としており、住民から東京電力の追加賠償策に対して、批判の声が上がっている。
 以下に、この問題に関する日本弁護士連合会の会長声明をご紹介します。

福島第一原子力発電所事故における避難区域外の避難者及び滞在者への追加賠償の拡充及び延長を求める会長声明

東京電力株式会社は、本年12月5日、政府による避難指示等がなされていない地域における居住者及び同地域からの避難者に対する追加賠償の方針を、「自主的避難等に係る損害に対する追加賠償について」(「追加賠償方針」)として発表した。追加賠償方針は、(1)原子力損害賠償紛争審査会(「審査会」)の「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)」(「中間指針追補」)が定める自主的避難等対象区域の居住者及び同区域からの避難者について、①子ども・妊婦に対して本年1月から8月末までの慰謝料、生活費増加分及び移動費用として8万円(1月当たり1万円相当)、②全ての人についてその他追加的費用として4万円、(2)福島県県南地方及び宮城県丸森町の居住者及びこれら地域からの避難者について、①子ども・妊婦に対して本年1月から8月末までの慰謝料、生活費増加分及び移動費用として4万円(1月当たり5、000円相当)、②全ての人についてその他追加的費用として4万円を支払うものとしている。

まず、本年1月以降の賠償について定める追加賠償方針が、損害の発生から1年近く経った12月にまでずれ込んだことに、遺憾の意を表明せざるを得ない。

避難区域外における居住者や避難者への賠償の在り方について、当連合会は、昨年11月24日付け意見書や本年4月13日付け意見書など累次の意見書において、意見を述べてきたところである。追加賠償方針は、以下のとおり、およそ合理性を欠くものといわざるを得ない。

第一に、追加賠償方針は、慰謝料、生活費増加分及び移動費用の賠償を、本年8月末までに区切っているが、著しく不当である。本年3月16日に決定された政府による避難区域等の見直し等に係る損害に関する、いわゆる中間指針第二次追補は、自主的避難等に対する賠償の主要な考慮要素として、放射線量に関する客観的情報を挙げているところ、避難区域外における放射線量はまだまだ高く、福島市などではいまだに多数の地点で放射線管理区域の指定基準を超える1時間当たり0.6μSvを超える外部線量が測定されており、これが昨夏を境に急激に減少したとの事実はない。追加賠償方針が8月末までの損害を賠償の対象と定めたのは、第二次追補が旧緊急時避難準備区域からの避難者について賠償の終期の目安を8月末と定めたことに依拠しているものと考えられるが、この点に関する第二次追補の指針に大きな問題があることは、これまでの意見書で指摘したとおりであるし、また第二次追補は主に旧緊急時避難準備区域のインフラ復旧状況やその他生活環境の整備状況に基づいて終期を定めたものであり、区域外避難等の終期を検討する上での参考になるものではない。

第二に、追加賠償方針は、慰謝料、生活費増加分及び移動費用について、1月当たり1万円ないし5、000円を基準として定めているが、低きに失する。特に避難者については、避難区域からの避難者との間で賠償額に著しい差が存在しており、これを正当化することはできず、現在でも二重生活や定期的な家族間の面会のために相当の費用を負担している世帯が多く、上記基準は平均的な出費にも満たない。

第三に、その他追加費用として4万円が支払われることとされたが、その性質・根拠は明確でなく金額も定額であって、生活費の増加分との区分も明らかではない。

以上のとおり、追加賠償方針は、不十分かつ不合理であるといわざるを得ない。なお、自主的避難については、少なくとも1時間当たり0.6μSvを超える放射線が検出された地域については、全ての者について対象とすべきであり、また追加線量が年間1mSvを超える放射線量が検出されている地域についても、少なくとも子ども・妊婦とその家族については対象とすべきであることについては、当連合会が繰り返し述べてきたところである。また、中間指針追補は、区域設定や賠償額等多くの問題をはらんでいることも、同年12月16日付け意見書において指摘したところである。

なお、追加賠償方針は、第二次追補を踏まえたものとされてはいるものの、実際には本件事故の加害者である東京電力が一方的に定めたものであって、審査会による指針とは異なり、その合理性は何ら担保されておらず、また原子力損害賠償紛争解決センター(「センター」)における和解仲介の手続においても、何ら基準としての重きを置かれるべきでないことは明らかである。

したがって、当連合会は、(1)審査会に対し、上記各意見書の趣旨及び現在の区域外避難等の現状及び放射線量に関する状況に基づき追加賠償方針とは無関係に新たに指針を策定するよう求める。(2)東京電力に対し、追加賠償方針を抜本的に改め、上記指針に基づく新たな賠償方針を定め実施し、またこれまで行われた自主的避難等に係る賠償及び今回の追加賠償を超える損害について直接請求を受け付けるよう求める。(3)センターに対して、追加賠償方針にとらわれることなく、区域外避難等に係る賠償について、適切な和解の仲介を行うよう求める。

2012年(平成24年)12月13日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
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by kazu1206k | 2012-12-24 19:10 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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