「早急に基本方針を」子ども・被災者支援法で日弁連声明

復興庁が3月15日に発表した「原子力災害による被災者支援施策パッケージ」については、「原発事故子ども・被災者支援法 市民会議」に参加する市民団体が声明を発表して、「被ばくを避ける権利」を認めた原発事故子ども・被災者支援法の理念を反映しておらず、復興庁など関係省庁が早急に十分な内容の基本方針を策定し、支援メニューの強化を行うことを求めています。
日本弁護士連合会も、3月22日付けで「この施策パッケージは支援法の完全な実施に向けた第一歩であることは認めるが、その理念と内容は著しく不十分であり、早急な見直しが必要であると考える」「政府は早急に被災者の意見を公式に聞く機会を保障の上、支援法の理念に忠実に基本方針を策定し、これに沿って施策パッケージについても、抜本的に見直すことを求める」との会長声明を発表しています。
以下掲載します。

「原子力災害による被災者支援施策パッケージ~子どもをはじめとする自主避難者等の支援の拡充に向けて~」に関する会長声明

本年3月15日、政府は「原子力災害による被災者支援施策パッケージ~子どもをはじめとする自主避難者等の支援の拡充に向けて~」を発表した。

当連合会は、これまで原発事故子ども・被災者支援法(以下「支援法」)について、一刻も早く法の趣旨に則った基本方針を策定し、被災者の切実な要望に応えた具体的な支援策を早急に実施していくことを求めてきた。根本匠復興大臣は、この施策パッケージについて、「子ども・被災者支援法による必要な施策については、この対策で盛り込んだ」と説明している。そこで、この施策パッケージが支援法の制定趣旨に照らしてどのように評価できるか、当連合会の見解を示すこととする。

第1に、まず、この施策パッケージは、そのほとんどが既に実施されている施策を並べたものにすぎず、法第5条が、法の基本理念に基づいて定めるべきとしていた「基本方針」ではない。

チェルノブイリ事故後にベラルーシ共和国において制定された通称チェルノブイリ法では、年間1-5ミリシーベルトの被ばくを余儀なくされる地域では、被災者は他地域への移住を選択することができ、その場合には住居と仕事に関する政府の支援が行われた。この法律を実行するため、ベラルーシ政府は国家予算の2割近くの費用を支出してきたとされる。

環境省が汚染状況重点調査地域に指定している地域は、福島県中通り・浜通りの多くの地域だけでなく、岩手県、宮城県、栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県、千葉県の一部の101市町村にも及んでいる。これらの地域からも、支援法の適用と施策実施を求める切実な意見が表明されていた。国会の審議においては、チェルノブイリ法に近い保障内容を想定して支援法が制定されたが、この施策パッケージにおいては、このような被災者の意見が反映されておらず、結果として被災地域への帰還促進のためには多額の国費が投じられているものの、「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと」(法第1条)を確認し、避難する者にも被災地域にとどまる者にも帰還する者にも、その意思決定を尊重し、被ばく低減のための必要な支援を行うとした支援法の理念が実現されていないことは極めて残念である。

第2に、支援法は、第14条において、国は「当該施策の具体的な内容に被災者の意見を反映し、当該内容を定める過程を被災者にとって透明性の高いものとするために必要な措置を講ずる」ものとされた。しかし、当連合会や市民団体が主催する意見集約のための会議は多数開催されたが、政府が主催した会議はなく、パブリックコメントさえなされていない。今回の施策パッケージには、2012年12月20日付けの当連合会の意見を始めとして、被災者や支援団体が要望した施策はほとんど反映されず、これらが採用されなかった理由すら示されていないのである。前述の復興大臣のコメントにもかかわらず、支援法による必要な施策については、今回の施策パッケージでは全く不十分であるといわざるを得ない。

第3に、「原発事故発生時に福島県中通り・浜通り(警戒区域等は除く)及び宮城県丸森町に居住していた被災者のうち、二重生活を強いられている母子避難者等に対し、高速道路の通行料金を新たに無料措置」するとされている点は、多くの被災者の要望に応えたものと一応評価できる。

第4に、子どもの健康については「子どもの運動機会が減少していることを踏まえ、全天候型運動施設等の整備により、福島県の子どもの運動機会を確保」し、「福島県及び福島県外において、自然体験活動を実施」するとされている。このような施策は前向きに評価することができるものの、子どもに対する施策は、何よりも被ばく低減を主たる目的とするものとして科学的・系統的に取り組まれる必要性があり、運動機会の確保は副次的な目的である。このように目的の位置付けがあいまいであるため、自然体験活動としても、被ばくの低減のためにはある程度長期間の他地域への移動が必要であることが看過され、適切な効果を挙げることができないことを危惧する。

第5に、健康診断に関しても、「福島県の全県民を対象とした外部被ばく線量調査や、18歳以下の子どもに対する甲状腺検査等必要な健康管理調査を継続」し、「原発事故の被災者に対する健康管理の現状・課題を把握し、今後の支援の在り方を検討」するとされているが、被災者から強く批判されている福島県の県民健康管理調査を継続することが示されているだけにとどまり、要望の強かったより詳細で被災者の希望に沿った健康診断や内部被ばく検査や福島県外における線量の高い地域での健康診断を実施する方針が全く示されていない。

当連合会は、この施策パッケージは支援法の完全な実施に向けた第一歩であることは認めるが、その理念と内容は著しく不十分であり、早急な見直しが必要であると考える。以上に述べた諸点を踏まえ、政府は早急に被災者の意見を公式に聞く機会を保障の上、支援法の理念に忠実に基本方針を策定し、これに沿って施策パッケージについても、抜本的に見直すことを求める。

2013年(平成25年)3月22日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
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by kazu1206k | 2013-04-06 18:45 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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