憲法96条改定に反対多数の世論
2013年 05月 03日
憲法9条の改定論者である安倍総理大臣は、憲法96条の改定を夏の参議院選挙の自民党公約にするとして、国会が憲法改定を発議する要件を衆参両院のそれぞれで、すべての議員の「3分の2以上の賛成」から「2分の1以上の賛成」に改定することに意欲を示している。
憲法は、主権者である国民が国家権力を縛るという立憲主義の下で、個人の権利を保障するため国家権力を規制する最高法規である。この立憲主義の基本から、憲法改定の発議要件を2分の1に緩和し憲法改定要件のハードルを下げることは、権力者がやりたいように変えられるようにすることであり、時の権力の恣意な力によってなし崩し的に憲法が変えられるということだ。
自民党憲法改正草案は「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」と定める規定を追加した。憲法を尊重する義務を国民に課すことは、立憲主義からも基本的人権の尊重を定める憲法の理念からも相容れないことだ。
こうした中、昨2日の朝日新聞は1面トップで憲法96条改定についての世論調査を発表した。それによると、反対が54%、賛成が38%。反対多数の結果だ。9条改定の賛否についても、反対が52%、賛成が39%となり、反対が賛成を上回っている。
この2日の朝日新聞の憲法に関する世論調査の特集によると、質問と回答の結果は以下のようなものだ。
・「憲法9条を変えて、自衛隊を正式な軍隊である国防軍にすることに賛成ですか、反対ですか」の質問には、反対が62%、賛成が31%。
・「集団的自衛権についてどのように考えますか」の質問には、「行使できない立場を維持する」が56%、「行使できるようにする」が33%。
・「集団的自衛権を行使できるようにしなければ、日米の同盟関係が弱くなるという意見がありますが、その通りだと思いますか」の質問には、「そうは思わない」が57%、「その通りだ」が35%で、6割弱の多数が、集団的自衛権の行使に反対した。
・「いまの日本の憲法は、全体としてよい憲法だと思いますか、そうは思いませんか」の質問には、「よい憲法」が53%、「そうは思わない」が34%。
憲法96条の改定は、憲法の精神の危機である。
96条の改定の次にくるのは9条の改定だ。戦争のできる国へ変えるのが狙いだ。基本的人権の制限や徴兵制の復活など、平和憲法によって生きてきた日本国民にとって戦後最大の危機だ。若者や子どもたちが危ない。戦争への道か平和への道か、平和憲法を守る国民的闘いが必要だ。
福島原発震災から2年が経過したが、終らない福島原発事故と事故被害に苦しむ住民の窮状がある。被災者にとって、今なお、憲法が定める基本的人権が十分に保障されていない状態である。むしろ、東京電力と国の事故対応によって放射能は拡散され続け、被曝の危機は続いており、生存権が脅かされているのだ。
戦争のできる国へ変えることより、国家権力が国民の基本的人権を守り、平和憲法を生かすことこそ求められている。