原発損害賠償請求権の3年消滅時効適用排除を

 日本弁護士連合会は、「東京電力福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権の消滅時効について特別の立法措置を求める意見書」を2013年4月18日付けで内閣総理大臣、文部科学大臣に提出し公表した。
 この意見書の趣旨は、以下の2点だ。

1 平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により生じた原子力損害(原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)第2条第2項にいう「原子力損害」をいう。)の賠償請求権については、民法第724条前段を適用せず、短期消滅時効によって消滅しないものとする特別の立法措置を早急に講じるべきである。

2 前項の原子力損害の賠償請求権については、民法上の除斥期間及び消滅時効の規定(民法第724条及び同法第167条第1項)は適用されず、別途、一定の期間を経過した後に消滅するものとする特別の立法措置を講じることの検討に着手すべきである。ただし、その期間については、慎重に検討するべきである。


以下は、意見の概要。

 問題点は、民法の規定がそのまま適用された場合、今回の事故による原子力損害の被害者は、最短で、平成26年3月11日以降、損害賠償請求ができなくなる恐れがある。
 被害者は、あと10ヶ月で損害賠償請求を強いられることになるが、被害の実態からすれば著しく酷であり、正義に反する。

 民法が不法行為の場合に時効期間を3年に短縮した理由は、次の3点。
1、権利の上に眠るものを保護しない 
2、早期の法的安定性の確保 
3、時の経過により立証が困難になる
 しかし、今回の事故による原子力損害では、下記の通り、短期消滅時効の制度趣旨がいずれも当てはまらない。
1、被害者は何の非もないのに突然生活基盤を奪われ、困難な状況今日におかれ苦しんでおり、権利行使の余裕がないこと
2、本来、損害賠償債務は被害者に対しキチンと支払うことが原則であり、被害者の犠牲のもとに法律関係を早期に確定させ、加害者である東電だけが不安定な地位から解放される必要性はないこと
3、特に帰宅が制限されている被害者などは、自宅においたままの資料も見ることができないなど、現在も証拠書類の収集・確保もままならないこと。
 
 そもそも、原子力損害賠償法には時効に関し民法が適用されるとの規定はない。被害者にとって、明文ではっきりさせ、被害者に落ち着いて損害賠償請求権を行使できる環境を用意するべきである。
 また、政府提出予定法案は、原子力損害賠償紛争解決センターへの申し立てに時効中断を認める点は評価できるものの、平成26年3月までに全ての被害者が申し立てを行うことを想定すること自体に無理があり、申し立てたものでも一部しか時効が中断しないなどの問題が残り、政府提出予定法案だけではカバーしきれない被害者が存在することになってしまう。

 これらのことから、結論として、
1、早急に3年の短期消滅時効の適用を排除する立法措置を講じるべき。
2、その上で、今回の事故による原子力損害についての消滅時効・除斥期間全般について、今後、被害の特殊性を踏まえて検討すべき。

*意見書全文は、下記PDFファイル
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/opinion_130418.pdf
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by kazu1206k | 2013-05-12 23:07 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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