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東電の和解案拒否に抗議、日弁連

日本弁護士連合会は、1月24日、「東京電力株式会社による原子力損害賠償紛争解決センターの和解案拒否に抗議し、新・総合特別事業計画の遵守を求める会長声明」を公表した。

●「東京電力株式会社による原子力損害賠償紛争解決センターの和解案拒否に抗議し、新・総合特別事業計画の遵守を求める会長声明」
 
本年1月15日、飯舘村長泥地区住民が申し立てていたいわゆる被ばく不安慰謝料の損害賠償請求に関し、原子力損害賠償紛争解決センター(以下「原紛センター」という。)が提示していた和解案について、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)がこれを拒否していたことが原発被災者弁護団の発表により明らかになった。

また、本年1月4日及び6日付け毎日新聞の報道によって、福島県の避難等指示区域内に生活の本拠を有していた東京電力社員、さらにはその家族に関して、東京電力は一方的に避難終了時期を決定し、中間指針が示す賠償額の支払さえも行っていない上、既に支払った賠償金の返還要求をしているという実態が判明した。さらにこれに対し東京電力の現地社員らがこれらの会社の対応に納得ができず、原紛センターに和解仲介手続を申し立て、同センターから他の避難者と平等に賠償すべきとの和解案が示されても、東京電力は頑なにそれを拒否していることも明らかとなっている。

他方、本年1月15日、政府は、昨年12月27日付けで原子力損害賠償支援機構及び東京電力が申請していた新・総合特別事業計画を認定した。同事業計画において、東京電力は、これまでの総合特別事業計画において謳われていた「5つのお約束」をさらに一歩進めたものとして、損害賠償の迅速かつ適切な実施のための方策について「3つの誓い」と称し、「ⅰ)最後の一人まで賠償貫徹」、「ⅱ)迅速かつきめ細やかな賠償の徹底」、「ⅲ)和解仲介案の尊重」の3点を掲げている。

そして、「ⅲ)和解仲介案の尊重」については、「今般策定された紛争審査会の定める中間指針第四次追補においては、東電に対して、指針で賠償対象と明記されていない損害についても、指針の趣旨を踏まえ、合理的かつ柔軟な対応と被害者の方々の心情にも配慮した誠実な対応を求めている。東電としては、かかる指針の考え方を踏まえ、紛争審査会の下で和解仲介手続きを実施する機関である原子力損害賠償紛争解決センターから提示された和解仲介案を尊重するとともに、手続きの迅速化などに引き続き取り組む」としている。さらに、同事業計画では「東電と被害者の方々との間に認識の齟齬がある場合であっても解決に向けて真摯に対応するよう、ADRの和解案を尊重する」とも述べているところである。

しかしながら、冒頭に挙げた東京電力の対応は、同事業計画で謳っている「3つの誓い」中の「和解仲介案の尊重」に真っ向から反するものであることが明白であって、賠償問題を「円滑・迅速・公正」に解決するために設置された原紛センターの理念を蔑ろにするものである。さらには、事故から間もなく3年を経過しようとしているにもかかわらず、いまだに経済的にも精神的にも不安定な立場に置かれ、将来の先行きも見えない生活の中で、原紛センターの手続を通じて、相応の賠償を求めようという被害者の心情をも踏みにじり、いたずらに被害者の救済を遅らせるものといわざるを得ず、到底、看過できない。

当連合会は、東京電力に対し、このような対応を直ちに改善し、改めて原紛センターの和解案を尊重、遵守することを求めるとともに、政府に対しては、東京電力に対し、強くその旨を指導することを求めるものである。

さらに、当連合会は、2012年8月23日付け「原子力損害賠償紛争解決センターの立法化を求める意見書」において、原紛センターの和解案の提示に加害者側への裁定機能を法定し、東京電力側が一定期間内に裁判を提起しない限り、裁定どおりの和解内容が成立したものとみなすこととすべきであり、東京電力側は裁定案の内容が著しく不合理なものでない限り、これを受諾しなければならないものとすることなどを趣旨とする立法提言を行っている。

今般の東京電力の対応を踏まえ、当連合会としては、上記意見書の趣旨に沿った形で原紛センターの和解案に片面的裁定機能を付する立法を直ちに行うことを改めて求めるものである。


 2014年(平成26年)1月24日
  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司
by kazu1206k | 2014-01-26 20:59 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k