教育委員会制度改革で日弁連が声明

日本弁護士連合会は、3月20日付けで「教育委員会制度等改革法制に関する会長声明」を公表した。
●教育委員会制度等改革法制に関する会長声明

政府与党内において進められていた、教育委員会制度をはじめとする地方教育行政のあり方を見直す内容の法案化作業について、今般、与党内での合意が成立し、国会に上程され審議入りする見込みであると報道されている。

当連合会では、2006年に教育基本法改正に対し慎重審議を求める会長談話を発表し、2007年にはいわゆる教育関係三法の改正に反対する意見を表明した。

そして、2012年の人権擁護大会では、政治や行政による教育への不当な支配・介入の禁止、教育の自主性・自律性の確保等教育上の諸原則の遵守、子どもの成長発達権、学習権等の保障等を強く求める決議を行っているところである。

教育委員会制度を中核とする地方教育行政に関する現行制度の制度趣旨は、教育の政治的中立性の確保、安定性・継続性の確保等にある。それは、教育行政の地方分権、民主化、一般行政からの独立のために、当初は公選制の下で合議制執行機関としての教育委員会制度により、教育への不当な支配・介入を禁止し、自主性・自律性という教育の本質的要請に応え、ひいては憲法の保障する子どもの教育を受ける権利・学習権・成長発達権等の基本的人権の十全な保障を確保するために戦後創設された制度枠組みである。

教育委員会制度がこのように憲法・教育基本法の基本的価値と直結する制度であることからすれば、①その制度に関連した弊害を根拠に制度改革の必要性が指摘される場合にも、実際にそうした弊害があるのか、あるとしてもその弊害が制度に内在するものであって制度の抜本改革をせざるを得ないものなのか、という制度改革を基礎付ける立法事実の厳密な検証が必要であるとともに、他方で、②改革案について、その改革内容が現行教育委員会制度が担っている、教育への不当な支配・介入等の禁止や、学習権・成長発達権の保障等の趣旨・理念を損なうおそれがあるものとなっていないのかについても厳密な検討がなされなければならない。

ところで、政府が改革を必要とする理由としては、「責任の所在の不明確さ」「危機管理能力の不足」「審議等の形骸化」等を挙げている。しかしながら、「責任の所在の不明確さ」については、そもそもその趣旨が明確とはいえない。「危機管理能力の不足」については、教育委員会制度自体を抜本的に改革せずとも、個別事案で緊急対応を要する案件のための機関を教育委員会等に附属させて設置すること等により対処しうるところであって、教育委員会制度の抜本改革を不可避とする弊害とはいえない。また、「審議等の形骸化」についても、そうした弊害が広く生じていると評価する十分な根拠はなく、逆に制度関係者へのアンケート調査結果等から見たとき、仮にそうした弊害が生じている場合があるとしても、それは制度自体に伴う問題というよりも運用に伴う問題であって、現行制度の基本枠内での改善で十分対応できるのではないかとの疑問を払拭できていない。このように、現在の改革案は、そもそも改革を必要とする立法事実の十分な検証がなされたとはいい難い。

さらに、その基本的内容及び方向は、地方教育行政における教育委員会の権限を弱め、地方自治体首長の権限を強めるとともに、国の地方教育行政への関与権限をも強めようとするものである。このような方向性には、教育委員会制度を設けることにより地方教育行政についての政治的中立性、継続性・安定性等を確保し、もって、教育の本質的要請である自主性・自律性を維持し、子どもの教育を受ける権利・学習権の充足を図ろうとした、地方教育行政制度の本来の趣旨・理念に反するおそれがあるという問題があり、この点の検討も不十分であるといわざるを得ない。

よって、当連合会としては、法案化の前提として、これらの問題についての十分な検証・検討が不可欠であり、こうした検討をしないまま改革案の基本的内容及び方向を拙速に法案化することなく、更に慎重に議論を尽くすべきであると考える。



 2014年(平成26年)3月20日
  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司
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by kazu1206k | 2014-03-23 11:40 | 平和 | Comments(0)

佐藤かずよし


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