徹底解説 検察審査会決定1

福島原発告訴団弁護団の海渡雄一弁護士から「徹底解説 検察審査会決定 なぜ検察審査会は東京電力役員の起訴を求めることができたのか 検察再捜査と今後の展望」という、検察審査会決定の徹底解説が寄せられましたので、二つにわけて転載します。これは1回目です。

徹底解説 検察審査会決定
なぜ検察審査会は東京電力役員の起訴を求めることができたのか
検察再捜査と今後の展望

                海渡 雄一(福島原発告訴団弁護団)

1 3名の役員に起訴相当、1名に不起訴不当の決定
2 今回の議決は福島人々の被害の重みを理解して出された画期的なものである
3 原子力事業者に課せられた高度の注意義務を確認
4 予見可能性の判断方法
5 審査会が認定した津波想定に関する事実関係
6 津波の可能性についての議決の検討とその意味
7 浸水したら、過酷事故になることはわかっていた
8 必要な対策を講じていれば、結果の回避、軽減はできた
9 規制当局や他の電力事業者も十分な対応をしていないということは、東電の言い逃れの理由とはならない
  (以上、第1回に掲載)
10 各被疑者らの責任 (第2回に掲載)
11 検察審査会の思いと今後の展開 (第2回に掲載)

1 3名の役員に起訴相当、1名に不起訴不当の決定
 7月31日東京第五検察審査会は、東京地検が昨年9月9日に不起訴処分とした東電元幹部ら42人のうちの3人について、業務上過失致死傷罪で「起訴相当」とする議決書を公表した。議決は7月23日付、議決書は7月30日付であった。
 2013年10月16日告訴団は、検察審査会へ申立てていた。福島原発告訴団の申立人らは、東京電力の原発関係の業務に就いていた役員6名に対象を絞っていた。 
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 検察審査会が「起訴相当」としたのは、勝俣恒久元会長、武藤栄、武黒一郎の両元副社長である。小森明生元常務については「不起訴不当」とした。榎本聡明、鼓紀男元取締役については、権限がないという理由で不起訴相当とされた。起訴相当の検察審査会議決が2回続けば、強制起訴となり、公開の裁判で福島原発事故についての刑事責任の有無が論議される、画期的な裁判が開かれることとなる。
 この決定的な議決本文に解説を付記し、議決の意義と今後の展望についてまとめた。 議決が認定した被疑事実は、次のとおりである。
「被疑者らは、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の関係者であるが、 福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の運転停止又は設備改善等による安全対策を講じて、大規模地震に起因する巨大津波によって福島第一原発において炉心損傷等の重大事故が発生するのを未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、必要な安全対策を講じないまま漫然と福島第一原発の運転を継続した過失により、東北地方太平洋沖地震(以下「本件地震」という。)及びこれに伴う津波により、福島第一原発において炉心損傷等の重大事故を発生させ、水素ガス爆発等により一部の原子炉建屋・格納容器を損壊させ、福島第一原発から大量の放射性物質を排出させて、多数の住民を被ばくさせるとともに、現場作業員らに傷害を負わせ、さらに周辺病院から避難した入院患者らを死亡させた。」
 この議決の意義は次のようにまとめられるだろう。

2 今回の議決は福島人々の被害の重みを理解して出された画期的なものである
 告訴団は、委員に直接面談し、福島原発事故の被害の実情について訴える場を作って欲しいと繰り返し訴えた。このような訴えはかなわなかったが、議決は、「平成23年3月11日に起こった福島第一原発の事故(以下「本件事故」という。)は、本件地震による津波を契機として発生した我が国未曾有の大事故であり、現時点でも未だ収束していない。
 当審査会は、事故に遭われた方々の思いを感じるとともに、様々な要素が複雑に絡み合って発生した大事故について、個人に対して刑法上の責任を問うことができるのかという観点も踏まえつつ、検討を行った。」
としている。
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 我々が提出していた事故被害者の事故後の生活の報告などを読む中で、福島原発事故の被害者の無念の気持ちは伝わっていたのである。今回の議決は福島の人々の被害の重みを十分理解して出された画期的なものである。

3 原子力事業者に課せられた高度の注意義務を確認
 議決は、まず原子力事業者が業務の遂行の過程で負っている注意義務が高度のものであることを認めている。
チェルノブイリ原子力発電所の事故を見ても明らかなように、原子力発電は一度事故が起きると被害は甚大で、その影響は極めて長期に及ぶため、原子力発電を事業とする会社の取締役らは、安全性の確保のために極めて高度な注意義務を負っている。
 最高裁判所における伊方原発訴訟に対する判決は、原子力発電の安全審査について『災害が万が一にも起こらないようにするため』に行われるものとしている。」
「今回の福島第一原発の事故は、巨大な津波の発生が契機となったことは確かであるが、そもそも自然災害はいつ、どこで、どのような規模で発生するかを確実に予測できるものではない。
 今までの原子力発電所を襲った地震をみても、平成17年8月の宮城県沖地震では、東北電力女川原子力発電所で基準地震動を超える地震動が観測され、平成19年7月の新潟県中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原子力発電所で基準地震動を超える地震動が観測されている。根拠のある予測結果に対しては常に謙虚に対応すべきであるし、想定外の事態も起こりうることを前提とした対策を検討しておくべきものである。

 このような考え方は、東京地検の判断基準とは異なるものであるが、原発事故の苛酷さと広汎性を考えれば、このような高度の注意義務を課すことは、ある意味で当たり前であり、さる5月21日の福井地裁の大飯原発差し止め判決とも共通する市民の良識に沿った判断であると評することができるだろう。

4 議決の基礎となった予見可能性の判断方法についての考え方
 「検察官は、予見可能性について、『10m盤を大きく超えて建屋内が浸水し、非常用電源設備等が被水して機能を喪失するに至る程度の津波が襲来すること』についての具体的予見可能性が認められるか否かを問題とし、被疑者らについて、いずれもこれらの具体的予見可能性を認めるのは困難であるとした。また、結果回避可能性も認められないとした。」
 「そもそも地震や津波という自然現象について、具体的に、いつ、どこで発生するかまでを予見することは不可能である。原子力発電所を扱う事業者として、安全性確保のための対策を取ることが必要である津波として認識することが可能であったといえれば、津波襲来に関する具体的な予見が可能であったというべきである。そして、この予測に応じて必要な対策を施した場合に、事故の結果が回避できたといえるのであれば、結果回避可能性も認められる。」
とした。
 検察官は、その不起訴理由において、そもそも不確定な自然災害について、あまりにも細かい点までの予見可能性を要求していた。このような不合理な態度が、議決では市民の良識にもとづいて適切に修正されている。このような理論的立場が、起訴相当の判断の基盤となっている。

5 審査会が認定した津波想定に関する事実関係
 この議決は、津波襲来に関する予見可能性を検討する上で、地震調査研究推進本部(以下「推本」という。)の「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(以下「長期評価」という。)とこれに基づく津波高の試算を重視している。
 ①ऀ平成14年7月、推本は、福島第一原発の沖合を含む日本海溝沿いでマグニチュード8クラスの津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生すると予測した。平成16年5月、土木学会の津波評価部会における津波ハザード解析の研究の一環として、三陸沖から房総沖にかけての海溝寄りの津波地震の発生に関する重みづけアンケートが実施された。その結果、土木学会の津波評価技術に基づく考え方を支持するものが約0.4、推本の長期評価に基づく考え方を支持するものが約0.6との結果となった。

 ②ऀ平成18年9月、原子力安全委員会が耐震設計審査指針を改定し、津波については「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」を「十分に考慮したうえで設計されなければならない」とした。上記指針の改定を受け、原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)が、電力事業者に対し、既設の原子力発電所について新指針に照らした耐震安全性の評価を実施し、報告を求めること(以下「耐震バックチェック」という。)を指示するとともに、耐震バックチェックに当たっての基本的な考え方となる耐震バックチェックルールを策定した。耐震バックチェックルールでは、津波の評価について、既往の津波の発生状況、最新の知見等を考慮して実施することとされた。

 ③ऀ平成19年11月ころ、東京電力の土木調査グループ(以下「土木調査グループ」という。)において、耐震バックチェックの最終報告における津波評価につき、推本の長期評価の取扱いに関する検討を開始した。平成20年2月、東京電力「中越沖地震対応打合せ」(被疑者勝俣恒久ら幹部が出席。)において福島第一原発の想定津波水位が従来の予想を上回るO.P.(小名浜港工事基準面)+7.7m以上に上昇する可能性があることが報告され、資料が配付された。東京電力では、推本の長期評価を踏まえ、明治三陸地震の波源毛デルを福島県沖海溝沿いに設定するなどして津波水位を試算したところ、平成20年3月、福島第一原発の敷地南側においてO.P.+15.7mとなる旨の結果を得られた。

 ④ऀ平成20年3月、東京電力における中越地震対応打合せにおいて、プレスリリース用のQ&Aに関し、津波の評価について、耐震バックチェック最終報告において推本の長期評価を考慮する旨の修正が報告され、了承された。同月、被疑者武藤栄が福島県生活環境部長に対し「津波の評価については耐震バックチェック最終報告にて報告する。最新の知見を踏まえて安全性の評価を行う。」と説明した。

 ⑤ऀ平成20年6月、土木調査グループから被疑者武藤栄らに対してO.P.+15.7mの試算結果が報告された。被疑者武藤栄は、(ア)非常用海水ポンプが設置されている4m盤への津波の遡上高を低減する方法、(イ)沖合防波堤設置のための許認可について、(ウ)機器の対策の検討を指示した。

 ⑥ऀ平成20年7月、被疑者武藤栄から土木調査グループに対し、耐震バックチェックにおいては推本の見解を取り入れず、従来の土木学会の津波評価技術に基づいて実施し、推本の長期評価については土木学会の検討に委ねることとし、これらの方針について、津波評価部会の委員や保安院のワーキンググループ委員の理解を得ることなどを指示した。

 ⑦ऀ平成20年8月、土木調査グループが、房総沖地震の波源モデルを福島県沖海溝沿いに設定した場合の津波水位を試算したところ0、P.+13.6mとなる結果を受領した。

 ⑧ऀ平成20年11月、土木調査グループ担当者が、貞観津波の波源モデルを用いた津波水位が、福島第一原発についてO.P.+8.6~+9.2mとなる旨の結果を受領した。

 ⑨ऀ平成22年8月から、東京電力の土木調査グループを含めた関係部門間で「福島地点津波対策ワーキング」を開催した。将来的に推本の長期評価や貞観津波に関して津波対策を講じる必要性が生じる可能性が高いことを踏まえ、福島原発における津波対策等を検討する目的で設置され、非常用海水ポンプの水密化等の検討がなされた。

 ⑩ऀ平成23年2月、保安院が、推本が長期評価を改訂して貞観津波に関する記載を盛り込むことを予定している旨の情報を入手し、東京電力に対し、福島原発における津波対策の現状等に関する説明を要請した。
平成23年3月7日、土木調査グループ担当者が保安院にO.P.+15.7mの試算結果や貞観津波の試算結果を報告した。


6 津波の可能性についての議決の検討とその意味
 これらの事実関係は概ね政府事故調が認めた事実関係であり、告訴人らが告訴に当たって主張した事実関係である。しかし、ここには、政府事故調の認定した事実関係について、その意味づけを変えている部分がある。それは、④⑤⑨の部分である。
 また、推本について、推本は、地震予測に関し、日本で権威を有する機関であり、その予測は科学的な根拠に基づくものと考えられ、当然、推本の長期評価は最新の知見として取り込むべきものである。学者の重みづけアンケートでも、従来の土木学会による津波評価技術による方法よりも支持を得ている。」「東京電力は、10mを超える津波が襲来する確率は、1万年に1度から10万年に1度との試算を得ていたが、これは耐震バックチェックの基準地震動に用いた地震動の確率と同程度であり、耐震審査設計指針の『施設の供用期間中に極めてまれではあるが、発生する可能性があると想定することが適切な津波』というべきである。また、伊方原発最高裁判決の趣旨、原子力安全委員会安全目標専門部の報告書の趣旨からも、推本の長期評価は取り入れられるべきものといえる。(この部分は、7月上旬に申立人側に審査会事務局からなされた質問に対して、申立人側で提出した上申書に記載した内容が取り入れられている-引用者注)」「東京電力も、当初は、耐震バックチェックにおいて推本の長期評価を取り入れる方針であったが、耐震バックチェックの期限に対策が間に合わない場合、原発の運転停止のリスクが生じると考え、採用を見送り、関係者の根回しを進めたことがうかがわれる。」「東京電力は、推本の長期評価等について土木学会での検討を依頼しているが、最終的には、想定津波水位が上昇し、対応を取らざるを得なくなることを認識してワーキンググルーブを開催していることから、土木学会への依頼は時間稼ぎであったといわざるを得ない。」「東京電力は、対策にかかる費用や時間の観点から、津波高の数値をできるだけ下げたいという意向もうかがわれるが、もともと地震・津波という不確実性を伴う自然現象に対しての予測であり、算出された最高値に基づき対応を考えるべきであった。東京電力は、推本の予測について、容易に無視できないことを認識しつつ、何とか採用を回避したいという目論見があったといわざるを得ない。」「地震・津波の予測は、不確実性を伴う自然現象に対するものであり、そもそも、いつどこで起きるかまで具体的に言い当てることは不可能である。推本の長期予測に基づく津波高の試算を確認している以上、原発事業者としては、これを襲来することを想定し、対応をとることが必要であったと考える。」

 東京電力は、「試算が現実に起きるとは思わなかった。念のために土木学会に検討を依頼しただけである」と言い訳していた。検察庁はこのような不合理きわまりないいいわけをそのまま認めてしまった。
 これに対して、検察審査会は、市民的良識を発揮し、東電の役員たちは、対策が必要であることはわかっていて、途中まではその検討や準備もしたのに、改良工事のために原発が長期停止になることをおそれ、時間稼ぎのために土木学会に検討を依頼して、問題を先送りにしたと認定している。事態を正確に理解した、極めて正しい認識である。

7 浸水したら、過酷事故になることはわかっていた
 議決は、次のような事実を根拠に、東京電力の役員らは、浸水したら、過酷事故になることはわかっていたと論じている。
 ①ऀスマトラ沖津波でインド・マドラス原発の非常用海水ポンプが水没して運転不能になったことや、平成17年、宮城県沖地震において東北電力の女川原発で基準を超える地震動が発生したことを踏まえ、平成18年1月、保安院と独立行政法入原子力安全基盤機構において、溢水勉強会が開催された。これは設計上の想定津波水位を超える津波が襲来した場合の設備・機器等に与える影響を把握すること等を目的とした勉強会であった、
平成18年5月、第3回溢水勉強会において、東京電力は、福島第一原発5号機の敷地高を1m超える高さの津波が無制限に襲来した場合の検討状況を報告した。このような津波が到来した場合、非常用海水ポンプが機能喪失し、炉心損傷に至る危険性があること、また、建屋への浸水で電源設備が機能を失い、全電源喪失に至る危険性があることが示された。

 ②ऀ溢水勉強会の結果を踏まえて開催された安全情報検討会の資料には「敷地レベル+lmを仮定した場合、いずれのプラントについても浸水の可能性は否定できない」「福島第一原発5号機については現地調査を実施し、上記検討結果の妥当性について確認した」との記載がある。

 ③ また、東京電力においては、平成3年の福島第一原発1号機が海水漏れ事故で、溢水により冷却機能が喪失しかけるという事態が生じた。この事故からも、溢水事故の怖さ、溢水対策の必要性は十分認識していたと考えられる。


 議決は、以上のような事実を認定し、東京電力は、少なくとも敷地レベルを超える津波が襲来した場合、全電源喪失、炉心損壊にいたる危険性を認識することができたし、実際に起きた事故の教訓からも、溢水対策が必要であることは認識できていたと考えるとした。非常に堅実な議決となっていると考える。

8 必要な対策を講じていれば、結果の回避、軽減はできた
 議決は、以下のとおり、それぞれの時点で、どのような安全措置をとることが可能であったかを具体的に指摘し、これらの措置を講ずることができていれば、結果の回避あるいは軽減ができたことを明らかにしている。
①  平成18年の段階
溢水勉強会は、想定外の事態が発生した場合の対応を研究するために開催されたもので、各電力会社の上層部にも報告されることになっていた。
シビアアクシデント対策は、規制要件とはなっていないものの、自主的な対策が求められていたのであり、この時点で、全電源喪失に備えた対策を取ることは十分に考えられた。
仮に、この時点から具体的な検討を始めていれば、検察官が指摘するような対策、すなわち、蓄電池や分電盤を移設し、HPCI(高圧注水系)やSR弁にケーブルで接続すること、小型発電機、可搬式コンプレッサー、水中ポンプ等を高台に置くこと等の措置を講じておくことは十分に可能であった。

②  平成20年の段階
平成20年6月、被疑者武藤栄がO.P.+15.7mの試算を受け、実際に対策を検討させている。平成20年8月、被疑者武黒一郎にも試算結果を報告している。その時点から、対策を進めていれば、溢水勉強会も踏まえて、上記①記載の措置を講じることは可能であった。
検察官はこれらの措置をとるにも、高台に配備するだけでは足りず、事前に蓄電池とHPCI及びSR弁をケーブルで接続する工事が必要となり、その場合、設計及び工事期間、福島県の事前了解、経済産業大臣に対する設置許可などの手続が必要となり、結局3年以上の期間を要するというが、安全対策を取ることについて、漫然とこのような長期間を要するとする根拠が明確ではない。
また、今回の事故については、全電源を喪失し、必要な機材等も不足するという過酷な状況において、事前の訓練やマニュアルもない中で関係者の尽力により、より深刻な事態を防ぐことができたものと評価できる。
これを踏まえると、長期間を要しない安全対策、例えば、電源車や電源盤を搭載した自動車、可搬式コンプレッサー、必要機材などを高台に移設したり、シビアアクシデント対策として緊急時のマニュアルの整備や訓練などもやっておけば、本件の被害を回避し、少なくとも軽減することができたと考える。電源喪失を防ぐための建屋の水密化についても、この時点から対策を開始すれば、津波発生までに間に合い、事故は回避できたと考える。費用についても防潮堤設置に比べ低額であり、一現実的に可能な選択であったと考える。

③  平成22年8月の段階
平成22年8月に福島地点津波対策ワーキングを開催し、非常用海水ポンプの水密化などの検討を始めたのは、推本の長期評価や貞観津波に基づく対策を取らざるを得なくなることを認識したからであると考えられる。
この時点においても、前記②の長期間を要しない安全対策を取ることは可能であり、これにより被害を回避するか、また、回避できなくても軽減できたと考える。

④  原子力発電所の運転停止について
原子力発電所は一度事故が発生したら取り返しがつかない。東京電力も規制当局も、何をするにも原発の稼働ありきを前提に動いているように見受けられるが、安全性に疑問が生じた場合は、先ず、運転を停止し、安全が確認されてから稼働することを考えても良いのではないか。


9 規制当局や他の電力事業者も十分な対応をしていないということは、東電の言い逃れの理由とはならない
①  検察官は、被疑者らを不起訴とした理由の中で、保安院等の規制当局から推本の長期評価を踏まえた津波対策を講じるべきとの指摘等がなされたことがなかったことや、他の電力事業者においても推本の長期評価を全面的に取り入れた津波対策を実施していたわけではなかったこと、中央防災会議において福島県沖の津波地震は防災対策の対象から除かれたことにも触れている。

②  この点について議決は次のように適切に反論している。
 そもそも安全確保のために第一義的に責任を負うのは、規制当局ではなく個別の事業者であり、規制当局からの指摘がないとか、他の業者もやっていないなどの理由で、責任を免れるものではない。また、中央防災会議はその目的を異にし、原子力発電所を稼働させる事業者に課せられている注意義務と一律に論じることはできない。

③  規制当局も事業者も、耐震バックチェック等をクリアし、原発の運転停止という事態に至らないように連携していたように見受けられる。例えば、O.P.+15.7mという試算結果についても単なる対処すべき数値として捉え、生命や財産に対する現実のリスクであるという感覚が希薄になっている。安全に対するリスクが示されても、単なる数値と見るだけで、実際には発生しないだろう、原発は大丈夫だろうというような曖昧模糊とした雰囲気が存在していたのではないか。このような規制当局と事業者の態度は、本来あるべき姿から大きく逸脱しているし、一般常識からもずれているといわざるを得ない。安全神話の中にいたからということで、責任を免れることはできないと考える。

 議決内容は、まさにそのとおりである。原発神話のなかに安住し、慢心していたことは罪を逃れる理由とならない。むしろそのことこそが重大な罪であり、これを戒めなければならないのである。
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by kazu1206k | 2014-08-03 09:30 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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