原発訴訟の司法判断等で宣言、人権擁護大会

10月3日、函館市で開催された日本弁護士連合会の第57回人権擁護大会は、「原発訴訟における司法判断の在り方、使用済燃料の処理原則及び原子力施設立地自治体の経済再建策に関する宣言」を採択した。

●原発訴訟における司法判断の在り方、使用済燃料の処理原則及び原子力施設立地自治体の経済再建策に関する宣言

当連合会は、2013年10月4日の第56回人権擁護大会における「福島第一原子力発電所事故被害の完全救済及び脱原発を求める決議」において、「既設の原発について、安全審査の目的は、放射能被害が『万が一にも起こらないようにする』ことにあるところ、原子力規制委員会が新たに策定した規制基準では安全は確保されないので、運転(停止中の原発の再起動を含む。)は認めず、できる限り速やかに、全て廃止すること」等を決議した。

しかし、政府は、2014年4月11日のエネルギー基本計画において、原発を「重要なベースロード電源」とし、更に核燃料サイクルを堅持するとし、従来と変わらない原発政策を継続しようとしている。同年9月10日には、原子力規制委員会は、九州電力川内原発1、2号機について、新規制基準に適合するとして、原発再稼働への一歩を踏み出そうとしている。当連合会は、こうした原発再稼働の動きに対して、原発事故による甚大な人権侵害を回避する観点から、深い懸念と憂慮を表明するものである。

政府・原子力規制委員会のこうした現状の下では、原発事故による人権侵害を未然に防止するため、裁判所による原発の安全性に関する司法審査の役割が、極めて重要である。福島第一原発事故以前の原発訴訟において、裁判所は、行政庁や事業者の専門的技術見解を尊重するとして、これを追認する判断をしてきた。しかし、原発のように、一たび重大事故が発生すれば、広範囲に、長期的かつ不可逆的な人権侵害を引き起こしかねない技術を審理の対象とする司法審査においては、万が一にも重大な人権侵害が起きないようにするために、科学には不確実な部分があること、事業者が施設の安全性に関する重要な情報を秘匿している可能性があることを踏まえて、安全性を最大限尊重する立場から十分な審査を行うことが不可欠である。

次に、そもそも原発は、重大事故を起こさなくても、使用済燃料の処理という困難な問題を内包しており、その対策は不可欠である。その点、政府の方針は深い地層に埋設処分する方法(地層処分)であるが、地震国である日本国内において地層処分に適した場所を見つけることは困難である。原発を再稼働させず、また、核燃料サイクルは速やかに廃止した上で、既に発生した使用済燃料の当面の保管については乾式貯蔵を原則とし、保管場所や将来の処分を決めるに当たっては、安全性、意思決定の民主性を確保するとともに、将来世代の意思決定を不当に拘束しないことが不可欠である。

また、国の原子力推進政策は、核燃料サイクル再処理施設を含め、原子力施設立地自治体が原子力施設に依存せざるを得ない体質を生み出した。原子力施設立地自治体が原子力施設依存から脱却し、自立できるよう再生していくことへの支援も、急を要する課題である。

よって、当連合会は、以下のとおり提言する。

1 原発の設置・運転の適否が争われる訴訟に関する司法判断において、行政庁が依拠する特定の専門的技術見解を尊重し、これを前提に危険性がないと判断する従前の方法を改め、今後は、科学的・経験的合理性をもった見解が他に存在する場合には、当該見解を前提としてもなお原発が安全で人権侵害が発生しないと認められない限り、原発の設置・運転を許さないなど、万が一にも原子炉等による災害が発生しないような判断枠組みが確立されること。

2 国は、原子力災害を二度と繰り返さないことを目的に、原発の安全性を検討するために必要な情報が確実に公開されるよう、情報収集制度、情報公開制度、裁判における文書提出命令制度を改善するなど、情報開示の仕組みを整備すること。

3 国及び電気事業者は、使用済燃料を含む高レベル放射性廃棄物について、以下の方策を採ること。

(1) 再処理施設等の核燃料サイクルを速やかに廃止すること。

(2) 使用済燃料については、原発を再稼働させずその総量を確定し、また再処理せず直接処分すること。

(3) 使用済燃料を含む高レベル放射性廃棄物の最終処分は、地層処分方針を撤回した上で、日本の地学的条件と、安易に海外の市民に負担を転嫁すべきでないことの双方を十分考慮して決定すること。

(4) 最終処分方針決定までの間、当面は可能なものから乾式貯蔵に切り替えて地上保管をすること。当面の保管場所は、国が一方的に決定するのではなく、安全性、地域間の負担の公平を踏まえて、計画立案の段階から、十分な情報公開や、反対意見を踏まえた実質的かつ十分な議論を経た上で決定すること。

4 原子力施設立地自治体の経済再建を図るために、以下の措置を採ること。

(1) 国は、電源三法交付金制度のうち、原子力施設に関する部分を廃止し、過去の産業転換時の施策の功罪を踏まえて、原子力施設に依存した地域経済を再生するため、原子力施設立地自治体に対し、一定期間具体的な支援を行うこと。

(2) 国及び自治体は、地域再生の重要な資源の一つである再生可能エネルギーの利用を促進する制度を整備すること。

(3) 国及び自治体は、再生可能エネルギーの利用は資源の特性に応じた、持続可能なものとし、地域の合意に基づき、地域の経済的自立が図られるよう制度的支援をすること。

当連合会は、福島第一原発事故の悲劇を決して忘れることなく、その被害者の救済の先頭に立つとともに、司法判断において、万が一にも原子炉等による災害が発生しないような判断枠組みが確立され、核燃料サイクルの即時廃止及び放射性廃棄物の処分、並びに脱原発後の地域再生等の脱原発にかかる重要な諸課題が解決されるよう、全力を尽くす決意であることを表明する。

以上のとおり、宣言する。

2014年(平成26年)10月3日
日本弁護士連合会
e0068696_2194772.png

[PR]
by kazu1206k | 2014-10-21 21:11 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k
プロフィールを見る
画像一覧