検察の不起訴理由への反論-3

福島原発告訴団弁護団の海渡雄一弁護士による「東京地検福島原発事故 東電役員の再不起訴はここが問題だ!」という、検察の不起訴理由への反論、掲載の3回目です。
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2015年1月26日

東京地検福島原発事故 東電役員の再不起訴はここが問題だ!
東電も保安院も,緊急の津波対策が必要であることは認識していた。
検察の論理は,どんな対策を講じても事故は防ぐことはできなかったという論理
そして,何の対策も講じなかった東電を免責するものである。
検察は被害者の声を聞かず,巨悪=東京電力の言い訳を追認し,正義を放棄した。
検察審査会による強制起訴によって東電幹部の刑事責任を追及しよう!


                      福島原発告訴団弁護団 海渡 雄一

目次

第1 再捜査の概要とその焦点

第2 添田孝史「原発と大津波 警告を葬った人々」とその裏付け証拠で何が明らかになってきていたのか
以上は第1回目に掲載。http://skazuyoshi.exblog.jp/22758293/

第3 政府事故調の追加公開資料によって明らかになった新事実
1 政府事故調の保安院小林勝氏調書が裏付ける貞観地震津波の重大な危険性
以上は第2回目に掲載。http://skazuyoshi.exblog.jp/22758370/

2 東電と保安院の犯行を自白した森山審議官メール
3 あと3-4年早く対策が命じられていたら事故は避けられた
第4 検察の注意義務に関する不起訴理由に対する反論
第5 検察の予見可能性に関する不起訴理由への反論
第6 検察の結果回避可能性について不起訴理由への反論
第7 検察審査会による強制起訴と検察による新告訴の厳正捜査を求める
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第3 政府事故調の追加公開資料によって明らかになった新事実
2 東電と保安院の犯行を自白した森山審議官メール
 この供述の中にも出てくるが,2010年3月24日午後8時6分保安院森山善範審議官が,原子力発電安全審査課長らに送ったメールには,次のような決定的というべき,津波災害の予測と対策の緊急性をはっきりと示した内容が記されている(一部省略)。

「1F3の耐震バックチェックでは,貞観の地震による津波評価が最大の不確定要素である。
・貞観の地震は福島に対する影響は大きいと思われる。
・福島は,敷地があまり高くなく,もともと津波に対して注意が必要な地点だが,貞観の地震は敷地高を大きく超える恐れがある。
・津波の問題に議論が発展すると,厳しい結果が予想されるので評価にかなりの時間を要する可能性は高く,また,結果的に対策が必要になる可能性も十二分にある。
・東電は役員クラスも貞観の地震による津波は認識している。
というわけで,バックチェックの評価をやれと言われても,何が起こるかわかりませんよ,という趣旨のことを伝えておきました。」

 このメールは,国会事故調の報告書の498頁に作成者匿名で引用されている。しかし,具体的な状況と実名入りで明らかにされたことはなかったために,保安院の腐敗の深刻さが認識されなかった。このメールの背景について,小林室長は次のように説明している。

「2010年3月24日付森山審議官(当時)が送信した「1F3バックチェック(貞観の地震)」と題するメールの写し(添付資料1)について説明する。
 このメールは,森山審議官が,平成22年3月24日,私,名倉他3人に送付したものである。
当時,1F3号機のプルサーマル計画を進めるに当たって,佐藤福島県知事は,平成22年3月に「耐震安全性」「高経年化対策」「MOX燃料の健全性」という3条件を提示していた。この3条件のうち,「耐震安全性」という条件をクリアするために,資源エネルギー庁を中心とするプルサーマル推進派は,1F3号機の耐震バックチェックの中間報告の評価作業を特別な扱いとして実施しようとしていた。この森山審議官によるメールは,これら3条件を受け入れる前に送信されたメールであり,1F3号機に係る耐震バックチェックの中間報告書の評価作業を軽々に受け入れるわけにはいかないという文脈で送信されたものだと思う。なぜ1F3号機の評価作業を受け入れられないかというと,我々としては耐震バックチェックの中間報告の評価作業は1サイト1プラントという原則で行っており,プルサーマル計画を推進するためだけに1F3号機だけ特別な扱いとして評価を実施するのは筋が通っておらず,よくない先例を作ってしまうという懸念があったからである。
 また,プルサーマル計画を推進するという理由はどうであれ,貞観地震に関する新たな知見が出ている中で,1F3号機の評価作業をやるとすると貞観地震への対策は必ず議論になる。そのような状況になれば,燃料装荷が予定されていた平成22年8月までに1F3号機の評価作業の結論が出ない,又は,評価作業が終わったとしても更なる対策が必要となる可能性もあった。森山課長はその点についても懸念しており,1F3号機の評価作業はやらない方がよいと考えていたと思う。」

 まさに,語るに落ちたとはこのことではないか。このメールからは,森山審議官自らが,本件事故を予見していながら,バックチェックの結論も出さず,問題を先送りすることを黙認していたことが明らかである。我々は,同氏にも明らかに刑事責任が問われるべきであると考え,野口,原,名倉などの保安院関係者を特定して,第二次告訴に踏み切ったのである。

3 あと3-4年早く対策が命じられていたら事故は避けられた
 福島第一原発の耐震バックチェックの作業は指針ができて5年目となる2011年になっても,一向に収束しなかった。
当時の委員の認識は次の岡村調書に示されている。
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 2009年7月から半年ないし1年で結論が出せれば,対策をはじめることはでき,結論は変わったはずである。
 2010年11月文部科学省の地震調査研究推進本部が「活断層の長期評価手法(暫定版)」を公表したことを契機として,保安院は,東京電力に対し,津波対策の現状についての説明を要請した。
2011年3月7日東京電力は,15.7メートルシミュレーション結果を国に報告した。2002年の地震調査研究推進本部の長期評価に対応し,明治三陸地震が福島沖で発生した場合,13.7m~15.7mの津波が襲うという内容だった。
 小林勝室長は,2011年3月7日に,このシミュレーションの報告が東電から保安院に対してなされた際に,次のように警告した。土木学会の津波評価技術の改訂に合わせるという東電の方針に対して「「それでは遅いのではないか。土木学会による津波評価技術の改訂に合わせるのではなく,もっと早く対策工事をやらないとだめだ」「このままだと,推進本部が地震長期評価を改訂した際に,対外的に説明を求められる状況になってしまう。」とコメントしたという。しかし,これは遅すぎた警告であった。
 本件事故発生後8月まで,この3月7日の報告は国・保安院によって秘匿された。東京電力は本件事故について3月13日の清水社長会見以来,事故は「想定外の津波」を原因とするものであり,東京電力には法的責任がないとの主張が繰り返した。これを明らかにしたのは,読売新聞のスクープであった。

第4 検察の注意義務に関する不起訴理由に対する反論
 まず,不起訴理由書は,原発の安全対策の注意義務については,次のように述べている。

「議決は,原子力発電所の事業者の役員である被疑者らに,極めて高度の注意義務があるとし,自然現象の不確実性等を指摘して想定外の事態も起こり得ることを前提とした対策を検討しておくべきものであるとしている。しかしながら,原子力発電所の安全対策においても,どこまでを想定するか,あるいは具体的に何を想定するかを定め,具体的な条件設定をした上でそれへの対策を講じる必要があることは否めない。原子力発電所の特性を踏まえて可能性の低い危険性をも取り上げるべきであるとしても,あるいは自然災害の予測困難性,不確実性を踏まえて安全寄りに考えるとしても,無制限であるわけにはいかず,可能性が著しく低いために条件設定の対象とならないものがあり得る。したがって,事前にどこまでの津波対策が原子力発電所の安全確保に必要と考えられていたのかを過失認定上問題にせざるを得ず,10メートル盤を大きく超える津波による浸水を想定すべきであったのかを,その当時の知見を前提に検討する必要がある。
 つまり,本件過失の成否を判断するに当たっては,飽くまで本件事故後に事故から得られた知見や教訓を抜きにして,本件事故が発生する前の事情を前提として注意義務を課すことができるか否かを判断せざるを得ない。」(不起訴理由書3頁)

不起訴理由に対するコメント
 「原子力発電所の特性を踏まえて可能性の低い危険性をも取り上げるべきである」「自然災害の予測困難性,不確実性を踏まえて安全寄りに考える」べきことを認めた点は,進歩である。しかし,このような論理は具体的な判断の過程では全く無視されている。
 「10メートル盤を大きく超える津波による浸水を想定すべきであったのかを,その当時の知見を前提に検討する必要がある。」としている点については,当初の不服申立で指摘したように疑問がある。
 津波があらかじめ想定された6メートルを超えれば,海水ポンプが機能しなくなり,冷却機能を失う。にもかかわらず,東京地検は,10mを超えない場合は,冷却機能の一部が維持され,深刻な事態は回避できたと説明した。しかし,10メートルをどれだけ超える津波を予見する必要があったかは言えないとしている。このような説明には,大きな疑問がある。想定を超えれば,事故が起き,その事故がどこまで発展するかは正確に予見はできない。10メートルを大きく超えなければ,冷却はできたという判断には,科学的な根拠があるとは考えられない。むしろ,想定された6メートルを超える津波を予見し,対策を講ずるべきであったのに,何の対策も講じなかったことを過失責任の根拠とすれば,被告訴人らに過失があったことは明らかである。交通事故刑事裁判で過失を論じる際も,交通法規違反があれば,その結果どのような事故が起こりうるかについて,詳細な予見までは求めてこなかった。
 わざわざ「10メートルを大きく超え」るという高い基準を設定したことは,貞観の津波を予見の対象から外し,被告訴人らの責任を追及しにくくしているといわざるをえないのである。

第5 検察の予見可能性に関する不起訴理由への反論
1 対策を講ずるためにM9を想定する必要はなかった
 検察は,震災前においては,本件のような超巨大地震・津波を予測する知見はなく,過去に津波地震(地震動の大きさに比して高い津波が発生する地震)の発生が確認されていない福島県沖について,本件のような大津波の襲来を具体的に示す研究成果は存在していなかったなどと主張する。このような主張は,吉田調書においてもM9を想定した者はいないと声高に主張されていた。

「今回,貞観津波のお話をされる方には,特に言いたいんですけれども,貞観津波の波源で考えたときにも,うちの敷地は3mか4mぐらいしか来ないから,これは今の基準で十分もつという判断を1回しているわけです。貞観津波の波源のところに,マグニチュード9が来ると言った人は,今回の地震が来るまではだれもいないわけですから,それを何で考慮しなかったんだというのは無礼千万だと思っています。そんなことを言うんだったら,日本全国の原子力発電所の地形などは関係なく,先ほどおっしゃったように,全部15mの津波が来るということで設計し直せということと同じことですね。」(政府事故調 吉田昌郎 平成23年8月16日付聴取結果書(事故時の状況とその対応について3)の21頁)
「○回答者 もう一ついうと,貞観津波で想定していたマグニチュードよりもっと大きいものが来たというのが違うところがあるわけです。
 2つあって,マグニチュード9が来たという大きさの部分は,今まで地震学者も津波学者もだれも想定していなかった。
 それから,3つのプレートがほぼ同時に動く。これもだれも言っていなかったんです。1つ動けばあとは寝ている。連動しないというのが学会の常識だったのが,連動したわけです。」(政府事故調 吉田昌郎 平成23年8月16日付聴取結果書(事故時の状況とその対応について3)の22頁)

このような検察の判断も吉田所長の判断も,原子力の安全性評価のあり方として,完全に誤っている。この点について,添田氏は次のように論評している。

「確かにマグニチュード9を予想した人はいなかったのですが,2008年の論文ではマグニチュード8.4は考えていた。その予測でも津波は敷地高さを越えていたわけです。原発の被害を考える時,マグニチュード9まで予測する必要はまったくなかったのです。このあたりの吉田さんの話は支離滅裂なのですが,政府事故調で質問している人は,気づいていないのか,突っこんで聞いていません。」(『科学』2014年12月添田孝史報告「吉田調書をめぐるシンポジウムより」1281頁)

 このとおりである。つまり,確かにマグニチュード9の地震が起きると予測した研究者はいなかった。しかし,7省庁津波指示や,福島沖を含めて,マグニチュード8クラスの地震が起きることは地震調査研究推進本部(推本)も予測していたし,さかのぼれば,7省庁手引きでも同じことが指摘されていた。吉田氏はこのことを知ってか知らずか,混同して話しているのである。そして,予測されていた福島沖のM8クラスの地震に対する対策がとられていれば,高さ15メートルという津波の高さが一致していたのであるから,原発は守れたのである。
 少し北側の宮城県沖でこのような地震が発生していることは常識であり,プレートはつながっているのであるから,より南側でも根このような地震が発生することは当然想定しなければならなかった。

2 東電シミュレーションと実際の津波が方角が異なったとされる点について
 次に検察は,東電のシミュレーションは南側から津波が襲うこととなっていたが,実際の津波は東側からであったことを指摘し,東側からの津波は予測できなかったという。
 この点に関する反論は,回避可能性について論ずる次の項目の冒頭で反論することとする。

3 Cランクでも,原発の安全性確保のために対策するべきことは明らかである。
 検察は,推本の評価において福島沖の評価はCランクで,「やや低し」とされていたことについて対策をとらなかったことの根拠として援用している。Cランクは4段階のランクの下から二番目である。
 しかし,原発の安全性確保のためには10-100万年に一度の事象にも備えなければならない。
平成18年(2006年)9月に「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」が改訂され「新耐震指針」が制定された。
 平成18年(2006年)9月には,原子力安全委員会が耐震設計審査指針を改定し,津波については極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても,安全性が確保できることが求められることとなった。
 また,「想定されるいかなる地震力に対しても大きな事故の誘因とならないよう充分な耐震性を有していなければならない」(逆に言うと想定される地震力をクリアしていれば良い)としていたのに対し,新耐震指針では,「(耐震設計用に)策定された地震動を上回る地震動の影響が施設に及ぶことにより,施設に重大な損傷事故が発生すること,施設から大量の放射性物質が拡散される事象が発生すること,あるいは,それらの結果として周辺公衆に対して放射線被ばくによる災害を及ぼす」リスク(「残余のリスク」)が存在すること,事業者にあってはこの「残余のリスク」を少なくするよう努めること,すなわち想定された地震力を超える地震にも備えるべきことが定められた。
 ここでは「策定された地震動を上回る地震動の影響」としてあるが,耐震指針改定の経緯を見れば,地震に伴って生じる津波の想定に関しても「残余のリスク」の対象としていることは明らかである。
 津波は地震に伴って生じる現象である。耐震設計のための設定地震は対津波設計においても想定しなければならないものである。
 少なくとも,この段階で,推本の「長期評価」を想定の対象とするべきであった。
 このバックチェックは審査期間中も対策を講じないで運転が続けられるというきわめて安全上ルーズな位置づけで実施されていた。
 しかし,平成4年(1992年)の伊方最高裁判決によって原発の安全審査に関する司法判断は最新の科学的な知見に基づいて実施することとされていたのであり,電力事業者も保安院も,対策を先延ばしにするのではなく,重大な科学的知見には直ちに対応して,対策を講ずることが求められていたのである。

4 原発6号機を合計して1万年から10万年に1回という事故確率が計算されていれば,これに対応するのは当然である。
 検察審査会の議決は,

「東京電力は,10mを超える津波が襲来する確率は,1万年に1度から10万年に1度との試算を得ていたが,これは耐震バックチェックの基準地震動に用いた地震動の確率と同程度であり,耐震審査設計指針の「施設の供用期間中に極めてまれではあるが,発生する可能性があると想定することが適切な津波」というべきである。また,伊方原発最高裁判決の趣旨,原子力安全委員会安全目標専門部の報告書の趣旨からも,推本の長期評価は取り入れられるべきものといえる。」(議決書7-8頁)

 との判断を示していた。
 このような検察審査会の明快な議論に対して,反論できなくなった検察は驚くような屁理屈を考え出した。すなわち,検察は,

「再捜査の結果,東京電力では,津波の確率論的評価(注2)を試験的に実施し,1号機ないし4号機について,O.P.+10メートルを上回る津波が襲来する確率は10万年から100万年に1回,本件津波の高さに匹敵する13メートルでは100万年から1000万年に1回と算出されていたことが認められるどころ,これら震災前に把握されていた数値等を根拠に,本件結果を回避できる措置を講じておくべき義務があるとまでは認められない(なお,第一次不起訴処分及び議決において触れられている1万年から10万年に1回という確率は,6号機の数値であり,再捜査によって,今回の事故が起きた1号機から4号機の数値が上記のとおりであることが明らかとなった。)。」(不起訴理由書5頁)

 というのである。
 しかし,これなどは,東電を救うために無理矢理理屈を捜したものとしか言いようのない,くだらない議論である。原発は福島第1には合計6機あり,これをセットで安全性を確保しなければならない。5-6号機が助かったのは,たまたま定期検査中であったからに過ぎない。確率を各号機ごとに別々に考えることには何の根拠もない。1-6号機全体の事故に至る合計確率を求め,それが10万年から100万年に1回を超えるならば,対策をとることが原子力安全の水準として当然の考え方である。
 なお,この点について被疑者武藤は,国会事故調へのヒアリングの中で,「100年に1回以下といった,炉の寿命スパンよりも頻度が低いような自然災害への対応には切迫性がないと判断していた。」と述べている。しかし,このような考え方は,原子力安全の基本を忘れた暴論であり,これに対して過失責任が問えないとすれば,次の重大事故は避けられないであろう。
「東電のリスクへの対応の特徴として,前述の耐震バックチェックについても同様であるが,シビア アクシデント(SA)対策や自然災害対策などの実施が極めて緩慢で,検討から対策まで5~10年といった長い時間をかけるという点が挙げられる。この理由について東電の武藤栄副社長(以下「武藤副社長」という)は「100年に1回以下といった,炉の寿命スパンよりも頻度が低いような自然災害への対応については,切迫性がないと判断していた」と述べている。
 しかし,日本に存在する50基のプラントのおのおので,仮に1000年に1度(/年・炉)の頻度で事故に至るようなリスクを放置するとすれば,日本中のどこかで事故が発生する確率は相応に高まる。そのような状態が10年間単位で放置されたとすれば,日本のどこかで事故が起こったとしても何ら不思議ではなく,このような緩慢なリスク対応の姿勢は,事業者として到底許されざるものである。」(国会事故調報告書 5.1.2(3),460-461頁)
 まさに,このとおりであるといわなければならない。

5 貞観地震に関する知見を考慮すれば,追加津波対策が必要であることは明らかであった
 また,検察は貞観の地震に関して,想定が,10メートルを超えていないことを根拠に,対策不要とした。

 「震災前に,貞観地震に関する知見も進展しつつあったものの,震災前に可能性があるものとして仮定的に示されていた貞観地震の波源モデル(注3)は,震源域の広さやすべり量等の点で,本件地震の規模には及んでおらず,実際に,当時示されていた波源モデルに基づく福島第一原発における津波高の試算結果は,いずれの場所も10メートルに及んでいない。加えて,貞観地震については,専門家の聞でも,これと同様の地震発生の現実性,切迫性が認識されていたとはいえず,その現実性,切迫性が認識されるべき状況にあったとも認め難く,貞観地震の知見を根拠に10メートル猿を大きく超える津波による浸水を予見すべきであったとは言えない。」(不起訴理由書5頁)

 この原発の想定津波高さは,当時5.7メートルであった。9メートルの既往最大の津波が堆積物の調査で裏付けられたのであれば,この値に1.5倍なり,2倍なりを乗じた津波に対する対策を講じなければならないはずである。
 実は,この計算には,注記がついており,東電自らの手で,「不確実性の考慮のため,津波水位が2-3割高くなる可能性がある」と明記されているのである。
 そうすれば,10メートルを下回るから考慮しないという検察の根拠は崩れ去る。このような極めて重要な想定条件の問題点を,検察は知ってか知らずか,無視しているのである。
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 そして,もう一度強調しておきたいことは,東電はこの9メートルの津波にすら何ら対応しなかったのである。9メートルの津波に対する対策を講じていたが,それが不十分で深刻な事故になったのではないのだ。想定の6メートルを超えれば,さまざまな異常が生ずることは予め想定されていた。試算結果が,10メートルを僅かに1メートル下回っているから,対策不要という考え方は原発の安全確保の立場からはあり得ない暴論である。
 また,貞観の津波が「その現実性,切迫性が認識されるべき状況にあったとも認め難」いという点は,明らかに事実に反する。
 貞観地震の現実性と切迫性は,上記にるる引用した岡村意見,小林調書,森山メールなどから,明らかに認定できる。この点について我々は,委曲をつくして説明したが,不起訴決定は完全にこれを無視し,告訴人らの主張に対して何の判断も示していない。

以下は、次回へ。
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by kazu1206k | 2015-01-26 20:28 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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