津波浸水予測図など強制起訴求め上申書

 福島原発告訴団は、4月21日、東京第五検察審査会に「東京電力役員の強制起訴を求める上申書(4)」を提出した。
 福島原発事故の刑事責任については、2014年7月、東京第五検察審査会が、東京電力の旧経営陣、勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長の3人に対して、業務上過失致死傷罪で「起訴相当」、小森明生元常務は「不起訴不当」としたのを受け、東京地方検察庁が再捜査したものの、1月22日、改めて不起訴処分をおこなったことから、現在、東京第五検察審査会が再審査を行っている。
 「上申書(4)」の提出にあたっては、検察審査会事務局に対し、口頭で内容説明を行い、あらためて審査委員が申立人と面会し直接話す機会を設けてほしい旨、申入れた。また、4月で委員の交代があるが、4月中の判断の可能性については、不明だ。
 上申の趣旨は、以下の通り。

上申の趣旨
1 東京地検による平成27年(2015年)1月22日付の東京電力福島原発事故業務上過失致死傷事件の東電取締役らの再不起訴処分は,市民の良識の結晶といえる平成26年(2014年)7月24日付の検察審査会の議決を無視してなされたものです。そして,その法的根拠がないと考える根拠は既に提出した上申書3通において述べたとおりです。これらの上申書を総合し,参考の図版などもいれて,わかりやすく説明した書籍を代理人弁護士が執筆中です。その最終校正ゲラを提出します。

2 今回の上申書には,あらたに明らかになった国土庁の作成した津波浸水予測図の解説も添付しました。この予測図により,福島第一原発1-4号機は8メートルの高さの津波で,ほぼ完全に水没することが判明しました。10メートル盤を大きく超える津波の予見が必要としてきた検察の論理は完全に崩壊したと考えます。この予測図も添付します。

3 原発の安全性確保,地震津波対策は一般防災対策よりもはるかに厳格なものでなければならず,まれにしか起きない自然事象にも確実に対応しなければならなかったはずでしたが,実際は,原発の安全対策は一般防災対策でも対応されている事象にすら対応していない,まことにお粗末なものでした。

4 申立人ら原発事故被害者は検察審査会による正義の裁き=強制起訴による裁判への道がひらかれ,公開の法廷で,日本の近代史における未曾有の原発公害事件が,事前の対策によって未然に防止できたかどうかが国民の前に明らかにされ,責任のあるものが処罰されることを強く希望しています。


上申の理由

1 上申書総合合体版の提出
 別紙のゲラは,平成27年(2015年)5月15日発行予定の海渡雄一・河合弘之ほか著の『朝日新聞吉田調書報道は誤報ではない』(彩流社刊)の最終校正ゲラです。
 代理人弁護士河合弘之執筆の冒頭のまえがきにおいても,吉田調書には津波対策に関する東電幹部の甘い認識が示されていることを指摘していますが,代理人弁護士海渡雄一執筆の第4章「津波対策の緊急性は東電役員と保安院幹部の間で共有されていた-東電役員らに対する刑事責任の追及には根拠がある」は,これまで検察審査会に提出した上申書を総合し,さらにわかりにくい言葉に注記を付け,また参考図版なども証拠に当たらなくとも直接見ることができるように編集したものです。
 ぜひ,貴委員会の委員に第1に読まれることを想定して執筆したものですので,通して読んでいただきたいと思います。

2 8メートルの津波で1-4号機は冠水することを示した国土庁津波浸水予測図
 なお,今回の上申書には,あらたに明らかになった国土庁の作成した津波浸水予測図の解説も添付しています。この予測図により,福島第一原発1-4号機は8メートルの高さの津波で,ほぼ完全に水没することが判明しました。10メートル盤を大きく超える津波の予見が必要としてきた検察の論理は完全に崩壊したと考えます。
平成27年(2015年)4月に,このような検察の主張を根底から覆す新情報が,また『原発と大津波 警告を葬った人々』(甲13)の著者である添田孝史氏から告訴団に届けられたので紹介します。
 それは,平成11年(1999年)3月,国土庁,社団法人日本気象協会が作成した津波浸水予測図です。平成11年(1999年)の地域安全学会梗概集に掲載された「津波浸水予測図の作成とその活用」(国土庁防災局震災対策課 岡山和生,中辻剛著)によると,「国土庁では,気象庁・消防庁と共に,近年の津波に関する研究成果やコンピューターに関する技術の進歩を踏まえ,地震断層モデルと津波の挙動のシミュレーション技術を活用した津波浸水予測図作成手法を,「津波災害予測マニュアル」としてとりまとめた」といいます。そして,「全国沿岸を対象に作成された津波浸水予測図は,きめ細かな津波防災対策に資することを目的として,要望に応じて,地方公共団体その他防災機関へ提供する予定である。」「沿岸地域住民・沿岸を訪れる外来者向けの啓発・広報目的に,浸水予測図を加工し,避難路・避難場所等を書き加えた住民配布用浸水予測図を作成することも可能である。」などとしています。
  福島県の津波浸水予測図はここに図示するとおりです。
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平成11年(1999年)3月,国土庁,社団法人日本気象協会が作成した津波浸水予測図
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 添田氏は,この予測図を内閣府に対する情報公開請求によって入手したということです。この予測図によれば,8メートルの設定波高で,遡上地域は福島第一原発の1号機から4号機までのほぼ全域が浸水しています。5・6号機は水没していません。
 7省庁手引きの波高は,福島第一原発で8.6メートルということは電事連資料で判明していましたが,国土庁では,一般防災用に津波の遡上の様子をシミュレーションしていたのです。断層パラメーター等の詳しいことは現時点ではわかりませんが,7省庁手引きに従ったものと推定できます。
 前記の国土庁の学会発表は末尾で「我が国では,平成5年の北海道南西沖地震で約200名の犠牲者を出して以来,大きな津波災害は起こっていない。しかし,過去の例からも明らかなとおり,津波地震が繰り返し起きるのは必然である。我々は,津波災害の軽減のために,個々の地域沿岸において,地域の実情に応じたきめ細かな津波対策が推進されるよう,努力を惜しんではならない。」と述べています。
 これまでの検察捜査では,10メートル盤を大きく超える津波が来なければ過酷事故にはならなかったという認識をもとにすべての論理が組み立てられていました。しかし,わずか8メートルの津波高で1-4号機の全域が浸水することが明らかになったのです。検察の不起訴判断の根拠は根底から崩れたといわなければなりません。

3 結論
 起訴相当の決定の根拠は第1回の決定時と比べても,格段に厚いものとできたと自負します。よろしくご審議のほどお願いいたします。

添付書類
1 海渡雄一・河合弘之ほか著の『朝日新聞吉田調書報道は誤報ではない』(彩流社刊)の最終校正ゲラの一部
2 平成11年(1999年)地域安全学会梗概集に掲載された「津波浸水予測図の作成とその活用」(国土庁防災局震災対策課 岡山和生,中辻剛著)
3 平成11年(1999年)3月,国土庁,社団法人日本気象協会が作成した津波浸水予測図
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by kazu1206k | 2015-04-22 07:56 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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