東京第一検察審査会に上申書提出2

 福島原発告訴団弁護団は、8月14日、東京電力の津波対策担当者並びに経産省原子力安全・保安院の津波対策担当者及び原子力安全委員会と電事連の関係者など9名を業務上過失致死傷罪の被疑事実で告訴・告発した2015年告訴事件に関して、東京第一検察審査会に上申書を提出した。
 内容は、東京第五検察審査会により、7月17日に強制起訴議決がなされた東京電力元取締役らに対する業務上過失致死傷事件で提出した上申書等を資料として提出したもの。これは、東京電力福島第一原発事故という同一の事件で相互に密接に関連した被疑者に関する申立のためだ。
 上申書を2回にわけて掲載する、2回目。

 1回目は、以下に掲載。
http://skazuyoshi.exblog.jp/23577807/

東京第一検察審査会
平成27年(申立)第7号審査事件

上申書(2)

(5)貞観の津波をめぐる東京電力の保安院に対する説明と保安院内の暗闘2
平成21年(2009年)8月上旬には,保安院は東京電力に対し,貞観津波等を踏まえた福島第一原発及び福島第二原発における津波評価,対策の現況について説明を要請しました(政府事故調中間報告書 413頁)。
これに対して,8月28日ごろ,東京電力は,15.7メートルの試算の存在は明らかにしないで,平成14年(2002年)の土木学会の津波評価技術に基づいて算出したO.P.+5mから6mまでという波高だけを説明しました。あえて,社内の重要な試算結果を規制当局に隠したのです。
後に述べる保安院の被疑者森山善範審議官のメールは,このやりとりの8ヶ月後のものですが,森山メールによると,福島第一原発のバックチェックが容易に進まなかったのは,津波対策による追加工事が必要になることがほぼ確実に予測され,そのことを東京電力がいやがったためであることがわかって,このやりとりの意味も明確になりました。保安院は東京電力の虜となり,まさに「共犯」とも言うべき状況で,プルサーマルを進め,津波対策工事による出費で東京電力の赤字が膨らむのを防ぐために,バックチェックの先延ばし方針をなすすべもなく認めてしまっていたのです。
だからこそ,保安院は事故直後に15.7メートルのシミュレーションの存在を公表することもできず,東京電力の想定外という言い訳を,見過ごすこととなったのです。
保安院は,貞観津波に関する佐竹論文に基づく波高の試算結果の説明を求めました。これに対して,平成21年(2009年)9月7日ごろ東京電力は,貞観津波に関する佐竹論文に基づいて試算した波高の数値が,福島第一原発でO.P.+約8.6m~約8.9mであることを説明するに至りました。
東京電力が保安院に提出する報告等は,その内容について取締役らが認識を共有していたことは,森山メールによって裏付けられています。
最も重要な会議であるこの日の会議に,電力会社に対して厳しい要請をしていた小林勝耐震審査室長は欠席しています。しかし,その理由については政府事故調の公開情報の該当部分が墨塗りされていて分かりません。検察審査会の委員の皆さんの手元には墨塗りのない調書があるはずです。ぜひ,確認して下さい。
小林氏は当時のことについて
野口(哲男)課長から「保安院と原子力安全委員会の上層部が手を握っているのだから,余計なことはするな。」という趣旨のことを言われたのを覚えている。」(甲23の2の4頁)「私としては,1F3号機の耐震バックチェックの中間報告について評価作業をするのであれば,貞観地震についても議論しなければならないと考えていた」(同6頁)「実質的に人事を担当する(3字削除,代理人注:原昭吾,つまり原広報課長のこと)課長(当時)から「余計なことをするとクビになるよ」という趣旨のことを言われた。(同7頁)
と述べており,厳しいことを発言するとクビになることを恐れたため自分から欠席したか,上司から余計なことを言わないように出席を止められた可能性が高いと思います。
いずれにしても,この会合に小林室長が出席して,貞観津波への対応を強く求めていれば,東京電力は15.7メートルの津波についても,説明せざるを得なくなっていた可能性がありますし,津波対策が大きく進んだ可能性があるのです。
小林室長を出席させなかった野口課長にも重大な責任があります。この時期にプルサーマルの推進を強く進めていた野口氏を安全審査課長に据えた人事そのものが,極めて異例のものです。福島第一原発3号機のプルサーマルの推進のために耐震バックチェックの進行を遅らせ,津波対策を採らせなくするように,組織的圧力が加えられていました。その背景には,経済産業省や原子力安全委員会からの圧力もあったと伝えられますが,その全体像は解明されていません。
 これらの真相を明らかにするためにも,保安院の森山,野口,名倉の3名には被告人として,小林氏には証人として法廷に立っていただく必要があります。

(6)東京電力による保安院の籠絡完成を証明する森山メール
保安院の森山善範審議官が,部下に貞観の津波こそが福島第一原発3号機の耐震バックチェックの最大の不確定要素であり,バックチェックを完了するには,津波対策工事が必要であることは東京電力の役員も認識しているという内容の驚くべきメールを送っていたことが添田氏の著書,そして小林調書により判明しました。
このメールは,平成22年(2010年)3月24日午後8時6分に森山審議官が,原子力発電安全審査課長らに送ったものです。
「1F3(代理人注:福島第一原発3号機のこと)の耐震バックチェックでは,貞観の地震による津波評価が最大の不確定要素である」こと,貞観の地震については,福島に対する影響は大きいと思われる。」こと,「福島は,敷地があまり高くなく,もともと津波に対して注意が必要な地点だが,貞観の地震は敷地高を大きく超えるおそれがある。」「津波の問題に議論が発展すると,厳しい結果が予想されるので評価にかなりの時間を要する可能性は高く,また,結果的に対策が必要になる可能性も十二分にある。」「東電は,役員クラスも貞観の地震による津波は認識している。」「というわけで,バックチェックの評価をやれと言われても,何が起こるかわかりませんよ,という趣旨のことを伝えておきました」とされています(甲10)。
このメールは政府事故調の小林調書に添付されていたものですが,森山審議官自身は自らの公開された調書では虚偽を述べています。
「貞観津波の問題を新知見検討会での議論に付そうとしなかったのは,あなたが当時,貞観津波の問題を重要な問題と認識していなかったからではないか。」という問いに対して「なぜだか,自分でもよく分かりません。」というとぼけた答えをしているのです(甲25の2頁)。この点が1F3(福島第一原発3号機)の耐震バックチェックの最重点課題であったとメールの中で述べているのですから,この調書は明らかに偽りを述べていることとなります。法廷で釈明を求める必要があります。
森山審議官は調書で,「私は平成21年8月28日頃,及び9月7日頃に,小林勝耐震安全審査室長や名倉審査官が東電から福島地点における津波に関する説明を受けたことに関する報告を受けた記憶はない。」「もし,私が名倉審査官と同じ安全審査官という立場であり,東電から福島地点における津波の想定波高がO.P.+8mを超えるということを聞いたならば,上司に報告してどう対応すべきか相談していたと思う。」等と述べています(甲25の3頁)。しかし,小林氏の前記調書に拠れば,この点は小林氏から森山氏宛てに,しっかり報告されているので,真っ赤なウソということとなります。

(7)越後屋は悪代官に最後の秘密は言わなかった
森山審議官が平成21年(2009年)8,9月の東京電力と保安院の津波をめぐるやり取りについて述べていることは,平成22年(2010年)3月のメール内容と全く符合しません。森山氏には事故の予見可能性もあったし,回避のための措置を東京電力に命ずる権限もありました。しかし,責任を否定して虚偽を述べているのです。その刑事責任は重大であり,福島原発告訴団では第二次告訴の一つの柱として森山氏の責任追及を据えています。野口,名倉の両名も確実に事故調の調書を取られているはずであるのに,その公表を拒み,自らの責任を隠蔽しようとしています。
そして,この15.7メートルの試算結果は平成23年(2011年)3月7日まで保安院には提出されませんでした。提出されたのは事故の4日前のことです。このことは,当時の東京電力と保安院との津波審査全体をバックチェックの中で表に出さず,隠蔽していく「共犯」関係を前提とすると,異常さが際立つ対応だといえます。
つまり,東京電力・電事連はとことんまで保安院を籠絡しながら,保安院を最後のところで信用せず,最も重要なデータは見せないという対応をとっていたことになるからです。つまり,越後屋(東京電力)が悪代官(保安院)をとことん骨抜きにしながら,越後屋は悪代官がいつ裏切るかわからないと考え,最後の重要情報は渡していなかったと言うこととなるのです。
保安院の3名は明らかに「共犯者」です。しかしどちらが悪質かと問われれば間違いなく東京電力の方であるといえます。そして程度の差はあれ,保安院の3名も明らかに起訴相当です。

3 結論
福島原発事故について東京電力元取締役らの刑事責任の有無は公開の法廷で明らかにされることとなりました。しかし,元取締役勝俣,武藤,武黒の3名を被告人とするだけでは,深い真相は明らかにできません。東京電力の津波対策を立て,これを見送った張本人であり,土木学会の原子力土木学委員会 津波評価部会に属していた酒井と高尾,保安院の津波対策の担当と責任者である森山,野口,名倉の5名を加えて,8人を被告人とすることで,事故の真相と責任は明らかにできると信じます。刑事訴訟の目的の一つである,福島原発事故の真相を明らかにするため,本件被疑者ら5名の起訴は絶対に必要であると考えます。


1 平成27年(2015年)4月6日  意見書 添田孝史
2 平成27年(2015年)6月26日 上申書(6)IAEAレポート
3 平成26年(2015年)7月30日 議決の要旨(起訴相当議決)
4 平成27年(2015年)7月30日 議決の要旨(起訴議決)
5 平成27年(2015年)8月1日付け新聞社説
(1)朝日新聞
(2)毎日新聞
(3)東京新聞
(4)福島民友
(5)河北新報
(6)北海道新聞
以上
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by kazu1206k | 2015-08-19 07:15 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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