被災者救済、被害回復を進める人権擁護大会の決議

 10月2日、日本弁護士連合会の第58回日弁連人権擁護大会が幕張メッセで開かれた。人権擁護大会は、日本弁護士連合会が、人権問題の調査・研究、人権思想の高揚に資するため毎年1回開催しており、人権擁護活動の報告、人権問題に関する宣言・決議が採択されている。
 今年は、「総合的な意思決定支援に関する制度整備を求める宣言」「全ての女性が貧困から解放され、性別により不利益を受けることなく働き生活できる労働条件、労働環境の整備を求める決議」「福島第一原子力発電所事故の被災者を救済し、被害回復を進めるための決議」が採択された。
 以下に、「福島第一原子力発電所事故の被災者を救済し、被害回復を進めるための決議」を紹介する。

福島第一原子力発電所事故の被災者を救済し、被害回復を進めるための決議

福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)から4年半余りが経過したが、福島県だけでも、いまだ約11万人の被災者が避難生活を余儀なくされ、そのうちの約4割である約4万5000人が県外に避難しており、事故の収束にはほど遠い状況にある。よって、当連合会は、本件事故の被災者らの健康と生活を守り、被災者らの健康と生活を侵害している原因を除去して被害回復を進めるため、以下のとおり決議する。

1 健康被害への対応・生活再建について

(1) 国は、福島県全域と、年間追加被ばく線量1mSv(ミリシーベルト)を超える地域(以下「対象地域」という。)に居住していた、又は、居住している者に対し、定期的かつ継続的な健康診断(血液検査・尿検査を含む。)を無償で行い、その結果を広く共有し、専門家等が検証できるようにすべきである。

(2) 国は、上記の者に対し、本件事故に起因する健康被害、その他の健康に対する影響が認められる場合には、自己負担なく医療を受けられる制度を設けるべきである。

(3) 国は、「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下「子ども・被災者支援法」という。)の目的を実現する具体策として、以下の施策を行うべきである。

① 対象地域に居住し、又は、帰還した者に対しては、その生活環境の整備を行い、避難を継続している住民に対しては、住宅支援等の生活再建のための支援を行うこと。

② 心身の健康を害している被災者に対し、カウンセリング等を行い、子ども・被災者支援法に基づく支援対象地域と同様の医療確保に関する施策を移動先の地方公共団体でも実施し、かつ記録化するなどの対策を行うこと。

③ 本件事故の影響を受けた子どもたちについては、その心身の健康回復を目的とした保養を定期的に行える制度を構築すること。

2 本件事故に由来する汚染水対策について

(1) 国は、汚染水対策として実施している凍土壁建設を直ちに中止し、原子炉建屋への地下水の流入を抑止し、高濃度汚染水の原子炉敷地から外部への漏出を防止することができる恒久的遮水壁を速やかに構築すべきである。

(2) 国及び東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)は、汚染水対策に従事する労働者の被ばくを最小化する視点で工程を構築し直すとともに、労働者被ばくの状況を正確に把握し、労働者の健康保護や生活支援を十分に行うべきである。

(3) 国は、福島第一原子力発電所の敷地、その沿岸、周辺河川及び海洋の放射線量を継続して計測し、他機関の計測結果と併せ、その情報を一元的に公開すべきである。

3 本件事故に由来する放射性物質で汚染された廃棄物について

(1) 国は、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年8月30日法律第110号。以下「特措法」という。)施行規則第14条を改正し、指定廃棄物の指定基準である「8000ベクレル毎キログラム」超という数値を、放射性物質利用に伴い発生する廃棄物等の処理等の安全性のための最低限の基準であるクリアランスレベルが100ベクレル/kgであることを踏まえて、相当程度引き下げるべきである。

(2) 国は、特措法第18条第3項を改正し、指定廃棄物の指定基準に該当すると認められるときは、環境大臣が廃棄物の占有者からの申請がなくても指定廃棄物に指定できるようにすべきである。

(3) 国は、十分な情報公開の下で、公開の議論を経て、焼却処理の基準を定める特措法施行規則第25条及び埋立処理の基準を定める同規則第26条を改正し、特定廃棄物(指定廃棄物及び対策地域内廃棄物)及び焼却処理した後の灰の放射能濃度が指定基準を超えることとなる本件事故に由来する放射性物質によって汚染された廃棄物について、より安全性に配慮した処理基準を策定した上で、焼却施設や最終処分場を建設・管理・運用するに当たって、適切な環境アセスメント制度・安全審査制度、十分な情報公開と住民参加を実現する制度及び独立・中立の監視機関を設けるなど、適正な制度を作るべきである。

国及び地方公共団体は、より安全性に配慮した特定廃棄物等の処理基準を策定し、適正な制度を作るまでの間、安全性が的確に確認でき、特定廃棄物等が環境中に拡散しないよう管理を強化した方法で、かつ十分な情報公開と住民参加の下で、暫定的に地上保管をすべきである。

(4) 国は、指定廃棄物について、十分な情報公開と住民参加を尽くさないまま、宮城県、栃木県、茨城県、群馬県、千葉県において各県ごとに1か所ずつ最終処分場を設置するとした方針を見直し、改めて指定廃棄物の処理方針を策定するに当たっては、十分な情報公開と住民参加を尽くすべきである。

以上のとおり、決議する。

2015年(平成27年)10月2日
日本弁護士連合会

宣言全文
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/civil_liberties/data/2015_1002_03.pdf
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by kazu1206k | 2015-10-05 22:05 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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