トリチウム汚染水の海洋放出問題

 4月19日、経済産業省の汚染水処理対策委員会「トリチウム水タスクフォース」は、東京電力福島第1原発事故でタンクに貯蔵されているトリチウム汚染水の処分方法について、コストや処理期間などの試算結果を発表し、海へ流すことが最も短期間で低コスト処分できるとの試算結果を明らかにし、政府の汚染水処理対策委員会に判断を委ねた。
 タスクフォースは、「地層注入」「海洋放出」「水蒸気放出」「水素放出」「地下埋設」の5つの処分方法を設定し、前処理について「希釈」「同位体分離」「なし(そのまま処分)」の場合の技術的成立性について検証。それぞれ、トリチウム汚染水の総量を80万トン、1日の処分量を400トンなどと仮定し、処分期間やコストを計算、比較した。
 試算結果は、処理コストが少ないとされたのが「希釈後海洋放出」。調査から設計、建設、処分、監視までのトータルコストは「18億~34億円」とされ、トリチウム濃度によって変動するが、海洋放出は最長7~8年で処理することができ、5つの中でも最も低かった。一方、地下埋設は最長76年の管理が必要で、コストも高かった。「希釈海洋放出」は、1日400トンのトリチウム汚染水を、告示濃度の1リットル当たり6万ベクレル以下に海水と混ぜて希釈して海に流す。いま存在する80万トンの処分終了までに要する期間は88カ月(約7年)と算定した。これは東京電力の現在の運用基準1リットル当たり1500ベクレルを40倍も基準を緩めることが前提だ。
 同月20日、郡山市で開かれた「廃炉・汚染水対策福島評議会」では、このトリチウムの処分方法の試算について、慎重な議論を求める声が相次ぎ、「海洋放出は漁業者から認められるものではない。流せば福島の漁業は死んでしまう」とする県漁連会長は「タンク保管も評価に入れるべきではないか」と指摘し、福島県副知事も「経済的合理性だけではなく、風評被害などのリスクも踏まえて議論してほしい」と国と東京電力に要望した。
 同月25日の県地域漁業復興協議会でも、「漁業者を無視したものだ」と反発する意見が相次ぎ、同月27日の福島県漁連の各漁協組合長会議では、「実害になる」として、海への放出は認めない方針を確認した。反対の方針を確認した。県漁連哲会長は「トリチウム水が流されることになれば、これは実害になると思っています。このような議論の中で、さまざまな風評被害が起こることは心配しているので」と話した。
 こうした動きに、広瀬東京電力社長は同月27日、原子力規制委員会で「やれることは全部やらないといけない、まずはそういうスタンス」と話し、海洋放出を進めようとしている。
 これまで、原子力規制委員会は、昨年1月福島第一原発の「中期的リスクの低減目標マップ」案に「貯蔵液体放射性廃棄物」の削減策として、処理水の海洋放出等を明文化している。これに対して、全漁連は、昨年1月23日の会長声明で「原発事故発生以来、われわれ漁業者が汚染水の海への放出・漏出を行わないよう、再三再四強く求めてきたにもかかわらず、海洋放出等を前提とした方針が示されたことは極めて遺憾」と不快感を示し、「厳しく規制すべきところを緩和するような方針を示した理由、海洋放出による健康・環境への影響がないとする根拠などを漁業者のみならず国民全体に丁寧に説明すべき」「漁業者、国民の理解を得られない汚染水の海洋放出は絶対に行われるべきではない」としている。
 トリチウム汚染水の放出は、東電の試算で、サブドレン等の汚染水だけで一日9.65億ベクレルとされ、総量規制のないまま放出されれば、貯蔵タンクを含め総量1,000兆ベクレルのトリチウムが全量投棄されることになり海洋汚染が拡大する。
 国と東京電力は、広く市民説明会を開催するとともに、事故後の港湾内外への核種毎の放射能総放出量、貯蔵タンク内の核種毎の放射能総量などの情報の公開、港湾内外の放射能核種毎の連続モニタリングの実施、汚染水放出に関する環境アセスと総量規制を実施すべきである。
 
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by kazu1206k | 2016-05-18 22:56 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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