検審に慎重審査と陳述を求める!

 福島原発告訴団は、6月6日午前、東京電力福島第1原発放射能汚染水海洋放出事件について、拙速な結論を出さず、慎重審議と申立人らの陳述を求める上申書を、福島検察審査会に提出した。
 この事件は、東京電力が福島第一原発における汚染水対策を怠り、放射能汚染水を海洋に放出した事件で、福島地方検察庁が3月29日、嫌疑不十分などとして不起訴処分を行ったため、4月13日、福島検察審査会に対し、東京電力元会長勝俣恒久ら7名と法人としての東京電力株式会社を公害罪法で起訴するよう申立てたもの。
 告訴団は、今後約2,300人が追加の第2次申立を6月22日に行う予定でいたが、検察審査会事務局が6月15日までの早期の提出を求めるなどしたため、今月末にも結論を出すのではないかと観測され、緊急に上申書を提出した。
 上申の趣旨の趣旨は、「貴検察審査会の審査員の皆さまに、くれぐれも議決を急ぐことなく、事案を十分に把握・検討した上で、慎重に審査をして頂きたい」「申立人らは、貴検察審査会の審査員の皆さまに、汚染水被害の深刻性について申立人らの陳述を直接聴いて頂きたく、また質疑応答の中で事案の理解をさらに深めて頂きたく、これらの機会を設けて頂きたい」の2点。
 福島地検は、公害罪の成立要件から、汚染水貯蔵タンクからの漏えいは汚染水の海への「排出」に至っていない、遮水壁先送りも原子炉建屋の滞留水が水封され貯留しているため「排出」と「危険」を立証する証拠もない、従って嫌疑不十分と説明しているが、「地下水が海に達するまで相当の期間を要する」など明らかな誤解がみられる。また、昨年10月26日まで海側遮水壁は閉合されておらず、汚染水流出を放置してきた事実は隠せないし、現在でも完全な流出防止は実現していない。
 これほどの規模の事件では、検察審査会が告発人や専門家の意見を聞く機会を持つべきである。わずか数カ月で、起訴の是非の判断して、汚染水の海洋放出事件の幕引きをはかるのは、汚染水の海洋放出を福島県民が容認しているとみられ大変危険だ。漁業者はじめ多くの福島県民、周辺住民、海に生きる多くの人々、海洋の生きとし生けるものにとって、放射能汚染水の海洋放出は許されない。

上 申 書

平成28(2016)年6月6日

第1 上申の趣旨
 1 申立人らは、貴検察審査会の審査員の皆さまに、くれぐれも議決を急ぐことなく、事案を十分に把握・検討した上で、慎重に審査をして頂きたい旨を上申します。
 2 申立人らは、貴検察審査会の審査員の皆さまに、汚染水被害の深刻性について申立人らの陳述を直接聴いて頂きたく、また質疑応答の中で事案の理解をさらに深めて頂きたく、これらの機会を設けて頂きたい旨を上申します。


第2 上申の理由

 1 慎重な議決の要請(「第1」の「1」について)

  ⑴ 平成28年5月30日午前の貴検察審査会事務局担当者からの電話連絡の内容は、「6月15日までに追加の申立書を提出しなければ、申立人を追加する前に、検察審査会が議決を出す。」旨の連絡でした。
 しかし、貴検察審査会の審査員の皆さまにおかれましては、くれぐれも議決を急がず慎重に審査を行って頂きたいと思います。

  ⑵ 本件は公害事件史上、最大・最悪の汚染事件です。
 被告発人らは、高濃度の放射性物質に汚染された汚染水を大量に漏洩し、現在も漏洩し続けています。今なお、溶融した核燃料の場所は確定できず、汚染水は増え続け、サブドレン(原子炉建屋とタービン建屋近傍にある井戸)から検出される放射性物質は高濃度のままであり、地下水流入を防ぐ遮水壁も未完成です。汚染の広がりはとどまるところを知りません。2013年8月の約300トンの漏洩の時点で国際的な事故評価尺度(INES)において「レベル3」であり、現在はさらに危険度の高い評価となると考えられます。
 放射性物質の影響は、その性質上、数十年、長ければ100数十年にわたって残ります。例えば、セシウム137は、半減期が30年であることから、その影響が2分の1になるまでに30年、4分の1になるまでに60年、8分の1になるまでに90年かかります。
 人々は、少なくとも何十年にもわたって健康を蝕まれ続け、生命・身体を侵害される可能性があります。子どもや孫たちも同様に健康を蝕まれ続け、生命・身体を侵害される可能性があります。特に、子どもたちは、放射性物質に対する感受性が高いので、大人よりも敏感に放射性物質の影響を受け、健康を蝕まれます。さらに、汚染水が海洋漏洩していることから、日本に限らず、世界の人々、子どもたちにも同様の被害を引き起こします。
 このような広範囲かつ長期間にわたって深刻な健康被害を引き起こし続ける公害事件は、公害事件史上、最大・最悪の事件です。国際的にも帰趨が注目されています。

  ⑶ 汚染水漏洩の責任を問わないままでは、被告発人らはこれからも汚染水を漏えいし続けます。福島は、将来にわたっても汚され続けます。福島を守るため、将来の世代に負債を残さないために、汚染水漏えいの原因・責任の所在を正確に把握して頂きたいと思います。
 審査員のみなさまにおかれましては、事案を十分に把握・検討した上で、慎重に審議をして頂きたいと思います。
  ⑷ なお、貴検察審査会は、公訴時効の徒過を回避したいとのご配慮で議決を急いでおられるのかもしれません。検察官からこのようなご説明があるのかもしれません。
 しかし、私たちは、公訴時効は、まだ進行し始めていないという見解であり、このような見解に立脚して慎重な審査を遂げることを求めます。

 審査申立書29頁「第10 公訴時効」においても述べましたとおり、公訴時効の起算点には犯罪行為によって引き起こされた結果も含まれるというのが確立した裁判例です(最高裁判所昭和63年2月29日決定、申立書29頁「第10 公訴時効」)。
 放射性物質の影響が消滅するまでには数十年、長ければ100数十年にもわたる長い年月がかかり、その間、放射性物質は、継続して、人々の健康を蝕み、生命・身体を侵害します。しかも汚染水は日々漏洩し続けています。つまり、告発事実の犯罪行為によって引き起こされる結果(公衆の生命、身体に危険を生じさせること)は、22世紀になっても発生し続けます。
 したがって、本件については、公訴時効はまだ進行し始めていませんので、この点へのご配慮は不要です。
  ⑸ 結論
 以上の理由から、申立人らは、貴検察審査会の審査員の皆さまに、事案を十分に把握・検討した上で、慎重に審査をして頂きたい旨を上申します。


 2 意見陳述、質疑応答の機会の付与の要請(「第1」の「2」)
  ⑴ 汚染水漏えいの仕組み、被告発人らの行為の問題性を、書面のみで、正確に理解することは困難だと思います。現に、検察官は、本件を正確に理解できていませんでした。「東京電力福島第一原発の汚染水に係る公害罪法違反告発事件の処理について」(平成28年3月29日)は理解の誤りがたくさんあります。

 本件を正確に理解するには、原子炉、タンク、放射性物質などについての正確な知識を前提として、その上で、漏洩の仕組み・被告発人らの行為の問題性の理解に進む必要があります。いずれも複雑で理解の難しい事項です。
 そこで、申立人らは、審査員のみなさまに、これらの事項を口頭で意見を陳述する機会を頂きたいと思います。審査員のみなさまからのご質問にお答えします。これらの事項について、申立人らは、日々、文献を研究し、専門家の意見を聴き、住民の思いを聞き取り、理解を深めています。
  ⑵ 検察審査会において意見を陳述し、質疑と対話を行うことについては、過去に先例があります。
 日航ジャンボ機御巣鷹山墜落事故についての告訴告発事件は,平成元年(1989年)12月19日に検察審査会に申し立てられたものですが,翌年には3回にわたって申立人らが代理人とともに検察審査会に対して事情を説明する機会が設けられました(審査の冒頭に一回,検察官による不起訴理由説明のあとに一回,さらに第2回で委員から出された質問に答える形で一回の合計三回の審査立会が実現しました。本件の申立人代理人である弁護士海渡雄一は,この手続に出席し,意見を述べた経験を有しています。)。
 また,平成17年(2005年)4月25日に兵庫県尼崎市で起きたJR西日本福知山線脱線事故についての告訴事件においても,遺族の2人が審議に出席し,審査員に対して遺族の意見を述べる機会が設けられています。
  ⑶ 裁判手続においても、同様です。裁判官は、誤った判断を避けるために、事案を正確に把握しようと努めます。疑問点があれば、随時、当事者に対して質問し、当事者は回答します。
  ⑷ このような手続は,貴検察審査会において,審査に必要があるものとして議決さえすれば,実施することが可能です。本件申立事件においても,申立人らは、すみやかに意見を陳述し,審査員の皆さまとの質疑と対話の機会を設けていただくよう切望する次第です。
 なお,告訴団では多人数による追加申立を準備しており、近日中に提出いたします。今しばらく時間の猶予を頂きたいと考えています。
 立ち会い審理において、実際に立ち会う人数などについては,常識的な人数に限定することは当然のことであると考えております。
  ⑸ 結論
 以上の理由から、申立人らは、貴検察審査会の審査員の皆さまに、申立人らの陳述を直接聴いて頂きたく、また質疑応答の中で事案の理解をさらに深めて頂きたく、これらの機会を設けて頂きたい旨を上申します。


以上

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by kazu1206k | 2016-06-06 23:07 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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