原子力損害賠償制度で意見書、日弁連

 日本弁護士連合会は、8月18日付けで原子力損害賠償制度のあり方に関する意見書を取りまとめ、8月19日に内閣総理大臣、経済産業大臣、文部科学大臣、原子力委員会委員長、原子力委員会損害賠償制度専門部会長に提出しました。
 
 原子力損害賠償制度見直し議論の経緯と日弁連の基本な考え方は、
「福島第一原発事故によって広範な地域が膨大な放射性物質に汚染され、被害は現在も拡大し続け、被害額は既に13兆円を超え、健康被害の発生・拡大も懸念されている。ひとたび事故が発生した場合、その損害が莫大なものになること、被害者には予防可能性がないことが、原発事故の本質である。
 1961年に制定された原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」 という。)は、原子力事業者の無過失・無限責任(第3条第1項本文)、原子力事業者への責任集中原則(第4条第1項)、保険契約の締結義務(第6条以下、ただし1200億円にとどまる。)、政府の援助(第16条第1項)及び異常に巨大な天災による場合の原子力事業者の免責と政府の措置(第17条) の4点を特色としている。福島第一原発事故の損害賠償は、原子力損害賠償・1廃炉等支援機構法(以下「支援機構法」という。)が制定され、東京電力ホー ルディングス株式会社(以下「東京電力」という。)が無過失・無限責任を負い、政府が東京電力に融資を行うという枠組みで実施されている。」
 「支援機構法に定められた附則第6条に基づき、原子力損害賠償制度の見直しに関して、2015年5月21日,原子力委員会に原子力損害賠償制度専門部会(以下「専門部会」という。)が設置され、これまで合計11回の会合が重ねられている。これまでの審議において、原子力損害賠償制度の基本的枠組について、被害者に対する適切な賠償と国民負担の最小化の観点から、原子力事業者の無過失責任が維持されるべきであること、迅速かつ適切な被害者救済をはかるために、福島第一原発事故による損害賠償の経験を踏まえて、ADR手続や仮払いなどを制度化することなどが示されている。当 連 合 会 も、「基本的人 権の擁護」の観点から、こうした被害者に対する迅速かつ適切な賠償とそれを実現するための制度の拡充をはかることには賛成である。
 他方、原賠法第1条の目的規定における「原子力事業の健全な発達」の維持及び、原子力事業者の責任を一定限度に制限し,それを超える損害については国が負担すべきであるとする、いわゆる原子力事業者の有限責任論が、一部の委員から主張され、争点となっている。原子力メーカー等の製造物責任を排除する責任集中原則(第4条)の見直しを企図した議論はみられない。
 有限責任の論拠に、原子力事業の維持継続が国策であることが挙げられているが、国は原子力事業者に危険を発生することまで容認して事業の維持継続を推奨しているわけではない。また、2014年に閣 議 決 定 さ れ た エネルギー基本計画で原子力を重要なベースロード電源と位置付けたものの、電源構成における原発依存度については、政策の方向性として「可能な限り低減させる」とされており、国民世論も多数が原子力からの脱却を求め、再稼働にも反対している。原発の利用を止めていく方向 で あ れ ば、原子力損害賠償制度の在り方の議論は根本的に異なってくる。 当連合会は、かねてより、できる限り速やかに、全ての原発を廃止することを求めてきたところであるが、原子力損害賠償制度の見直しの議論を通じて、あらためて原発を維持することについても見直すべきであると考える。
 その上で、これまでの専門部会での議論における主要な論点について、以下に当連合会の考え方を述べる。」としています。

原子力損害賠償制度の在り方に関する意見書


2016年(平成28年)8月18日 日本弁護士連合会


意見の趣旨


1 原子力損害の賠償に関する法律の第1条(目的)から「原子力事業の健全な発達に資すること」を削除すべきである。


2 原子力事業者の無過失無限賠償責任はこれを維持し,有限責任に変更すべきではない。また,原子炉等の製造業者に対する製造物責任法の適用を除外した第4条第3項は廃止すべきである。


3 原子力事業者による損害賠償の実施に困難がある場合においては,原子力損害の賠償に関する法律第16条(国の措置)において,国は,原子力事故の収 束,被害者に対する損害賠償の立替払等,緊急の対応を行うことができること, 及びこれらにかかる費用を原子力事業者に求償することができることを明記す べきである。


4 原子力事故による損害賠償額が原子力事業者の支払い能力を超える場合にお いて,原子力損害賠償・廃炉等支援機構法を活用するほか,原子力事業者の法 的整理を必要とする場合に備えて,原子力事故被害者の損害の完全・優先弁済, 原子力事故の収束・廃炉にかかる作業の確保等を含む新たな制度を整備すべき である。


意見書全文 (PDFファイル;232KB)




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by kazu1206k | 2016-08-19 23:35 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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