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いわゆる共謀罪法案で日弁連声明

 日本弁護士連合会は、8月31日付けで「いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明」を公表しました。
 日弁連は、政府が2003年から2005年にかけて3回に渡り国会に提出し、日弁連や野党の強い反対で廃案となった共謀罪創設規定を含む法案について、「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めて取りまとめ、今臨時国会に提出することを検討していることについて、「提出予定新法案は、組織的犯罪集団の性格を定義し、準備行為を処罰の要件としたことによっても、処罰範囲は十分に限定されたものになっておらず、その他の問題点も是正されていない。よって、提出予定新法案の国会への提出に反対する」としています。

いわゆる共謀罪法案の国会への提出に反対する会長声明

今般、政府は、2003年から2005年にかけて3回に渡り国会に提出し、当連合会や野党の強い反対で廃案となった共謀罪創設規定を含む法案について、「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めて取りまとめ、今臨時国会に提出することを検討している旨報じられている。

政府が新たに提出する予定とされる法案(以下「提出予定新法案」という。)は、国連越境組織犯罪防止条約(以下「条約」という。)締結のための国内法整備として立案されたものであるが、その中では、「組織犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪」を新設し、その略称を「テロ等組織犯罪準備罪」とした。また、2003年の政府原案において、適用対象を単に「団体」としていたものを「組織的犯罪集団」とし、また、その定義について、「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」とした。さらに、犯罪の「遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし、その処罰に当たっては、計画をした誰かが、「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を付した。

しかし、「計画」とはやはり「犯罪の合意」にほかならず、共謀を処罰するという法案の法的性質は何ら変わっていない。また、「組織的犯罪集団」を明確に定義することは困難であり、「準備行為」についても、例えばATМからの預金引き出しなど、予備罪・準備罪における予備・準備行為より前の段階の危険性の乏しい行為を幅広く含み得るものであり、その適用範囲が十分に限定されたと見ることはできない。さらに、共謀罪の対象犯罪については、2007年にまとめられた自由民主党の小委員会案では、対象犯罪を約140から約200にまで絞り込んでいたが、提出予定新法案では、政府原案と同様に600以上の犯罪を対象に「テロ等組織犯罪準備罪」を作ることとしている。

他方で、民主党が2006年に提案し、一度は与党も了解した修正案では、犯罪の予備行為を要件としただけではなく、対象犯罪の越境性(国境を越えて実行される性格)を要件としていたところ、提出予定新法案は、越境性を要件としていない。条約上、越境性を要件とすることができるかどうかは当連合会と政府の間に意見の相違があるが、条約はそもそも越境組織犯罪を抑止することを目的としたものであり、共謀罪の対象犯罪を限定するためにも、越境性の要件を除外したものは認められるべきではない。

当連合会は、いわゆる第三次与党修正案について、我が国の刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高く、共謀罪導入の根拠とされている、条約の締結のために、この導入は不可欠とは言えず、新たな立法を要するものではないことを明らかにした(2006年9月14日付け「共謀罪新設に関する意見書」)。また、条約は、経済的な組織犯罪を対象とするものであり、テロ対策とは本来無関係である。

そして、以上に見たとおり、提出予定新法案は、組織的犯罪集団の性格を定義し、準備行為を処罰の要件としたことによっても、処罰範囲は十分に限定されたものになっておらず、その他の問題点も是正されていない。

よって、当連合会は、提出予定新法案の国会への提出に反対する。


 2016年(平成28年)8月31日
日本弁護士連合会
   会長 中本 和洋
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by kazu1206k | 2016-09-01 23:09 | 平和 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k