令和7年度のいわき市議会政策総務常任委員会の行政視察が1月21日、22日の両日実施されました。
1、長崎県雲仙市の「観光振興や誘客の取組について」
雲仙市役所で、一般社団法人雲仙観光局 統括事業部長 瀬戸 正志さん外5名の方から説明を受け、質疑応答を行いました。
雲仙市では、観光振興を専門的に担う組織として雲仙観光局を設置、市全体の観光施策を一体的に推進しており、雲仙観光局は、ブランディング、マーケティング、観光コンテンツ開発、官民連携による事業展開等を基本機能とし、持続可能な観光地づくりを目標に事業を展開しています。
また、雲仙観光局では、訪問者アンケートを集約し、属性、旅行形態、訪問目的、満足度、消費額等のデータを収集・分析し、分析結果から、温泉、宿泊、食、自然分野に対する評価が高いことや、宿泊者一人当たりの消費単価が増加傾向にあることが確認されており、観光施策やコンテンツ造成の方向性整理に活用していました。連泊率の低さ、食事場所の不足といった課題も把握され、観光事業者等を対象とした講習会を実施し、改善に向けた取組を進めています。
インバウンド観光では、韓国、台湾、香港からの宿泊者が多く、全国及び県内他地域との比較資料が作成され、観光事業者等に対して、毎月マーケティングレポートを作成・配布、数値データに加えて読み取れる傾向やポイントを示して現場での活用を図っています。
雲仙市では、地域の魅力や価値を体系的に整理し来訪者に分かりやすく伝えるため、「インタープリテーション全体計画」を策定。同計画は、地域の自然、歴史、文化、暮らし等を一貫したストーリーとして共有するための共通基盤として位置付けられ、地域関係者が参加するワーキンググループを設置し、自然・歴史・文化等の地域資源を整理するとともに、それらの価値を来訪者に伝えるための表現やストーリーの整理が行われています。
計画は、観光コンテンツ造成やガイドの取組、宿泊施設や土産物店における情報提供、観光案内等に活用され、観光案内所においてAIAIを活用した多言語対応ツールが導入されるなど、情報提供手法の多様化が図られています。ブログ形式の雲仙ポータルも運営、継続的な情報発信を行い、交通事業者との連携やライドシェア実証実験につながった事例も紹介されました。
2、長崎県長崎市の長崎スタジアムシティの「長崎スタジアムシティプロジェクトについて」
長崎スタジアムシティで、株式会社リージョナルクリエーション長崎 スタジアムシティ運営部 自社店舗運営課 山田 未菜さんからから説明を受け、質疑応答を行いました。
長崎スタジアムシティは、総事業費約1,000億円規模で整備され、サッカースタジアム(約20,000席)、アリーナ(約6,000席)、ホテル(243室)、約80店舗の商業施設等から構成され、スタジアムを核とした「まち」としての機能集積が図られています。
来場者数は、開業後の累計来場者数が485万人を超え、年間を通じてほぼ想定どおりの来場を確保。サッカーのオフシーズンに一時的な来場者数の減少は見られるが、大きな落ち込みには至らず、スポーツ以外のイベントや日常利用によって来場が下支えされています。
平均来場者数は、平日約12,000人、休日約20,000人から最大で約30,000人規模、特定日の集客に依存しない利用構造が形成されています。
来場者属性は、県内からの来訪が中心で、県内来場者の約半数が施設から5km圏内に居住し、年代構成は10 代から60 代以上まで幅広く、男女比は休日は概ね5:5、平日は6:4、特定の層に限定されない利用が進み、地域住民の日常的な利用の場として機能しています。
運営面は、株式会社リージョナルクリエーション長崎が整備から運営までを一体的に担い、スタジアム、アリーナ、商業、宿泊、業務機能を総合的に管理。V・ファーレン長崎や長崎ヴェルカの本拠地としての役割に加え、年間約250 件に及ぶ多様なイベントを開催することで、施設全体の稼働率向上と来場機会の創出が図られていました。
・事前質問への回答
Q: 開業1年で485万人を達成できた最大の成功要因はどんなところにありますか。
A:成功要因は、365日の日常利用の創出である。サッカーは年間約19試合、バスケットボールは約30試合程度であり、それ以外の約300日をどう機能させるかが課題であった。ホテルやオフィスを整備し、試合日以外も日常的に人が集まるまちとして機能させたことが成功要因の一つと考える。
Q: 計画と比較して想定以上・想定未満だった点がありますか。
A: 想定以上は、試合日以外のホテル稼働が好調である点。初年度に485万人の集客ができたのは、ホテル稼働が大きな要因と捉えている。
想定未満は、ホスピタリティ人材の育成等に関し、人数(量)は確保できたが、求めるサービス水準(質)に到達できていない点。人によって接客サービス等の差が大きいことが課題である。
Q: 平日の集客を成立させるために最も効果があった施策はどんなものがありますか。
A: 平日平均約1万2,000人を呼び込めた理由は、オフィス入居者と地域住民の日常利用が大きい。施設内に約2,000人のオフィスワーカー等がいることに加え、学習塾、温浴施設、ダンススクール等があり、買い物だけでなく「学ぶ場所」としても機能している。
Q: 2年目650万人達成に向け、最も効果が高いと考える施策はありますか。
A: 650万人達成のキーはインバウンドと考える。県内外の来訪は多く、J1昇格決定により県外来訪も見込める。一方、海外への周知が不十分であり、海外客を増やせれば650万人達成も可能と考える。
Q: 投資回収が30年~35年を前提にしておりますが、最も注意している経営リスクはどんな問題がありますか。
A: 「建てて終わり」ではなく、魅力の再投資を続けることが不可欠。変化を止め、改善を行わない「ハコ物」になった瞬間が最大のリスクと考える。新しいことを継続し、「箱はすごいが中身が…」と言われない取組が重要である。
Q: 地方都市が同様の複合施設に挑戦する際、最も重要な前提条件はどんなことがありますか。
A: 一概に示すのは難しいが、リスクを負う覚悟を持った民間企業が主体であること、アクセスの良いまちなかの立地が要因の一つと考える。
Q: スタジアムシティ来場者のアクセス方法で一番数の多い交通手段は。
A: 日常とイベントで異なる。日常は買い物目的が多く、短時間利用が多いため車が多い。イベント時は徒歩または公共交通機関が多く、電車・路面電車利用が多い。開業時に試合日の駐車場を事前予約制・一律1日4,000 円で開始したが、利用が少なかったため途中でプランを変更した。一方、当初施策により「車で行く場所ではない」というイメージが形成され、現在も公共交通機関利用が多い。また、施設内でビールを販売しているのも、渋滞緩和(ビール目的の来場者は車で来ない)を理由の一つとしている。
Q: スタジアムシティ開業後の観光地や周辺地域(商店街など)の経済効果はどのようなものか。
A: 駅や商店街など中心部の周遊効果は出ている。経済効果の社内試算はないが、周辺の土地代が上がっていると聞いている。また、長崎県内の最低賃金がここ数年で最も上がった年があり、一定の貢献がある可能性をポジティブに捉えている。
Q: コンサート開催誘致へ向けた取り組みにはどのようなものがあるのか。
A: 興行主のコスト・工数削減を強みとしている。誘致はリージョナルXが主に担う。アリーナは、機材持ち込みが少なくても実施できる設備を備えており、長崎は機材搬入が理由で断られるケースがあったが、「機材がなくても来られる」点が誘致の強みとなっている。また、座席規模を調整できるよう、座席途中に舞台幕を設置できるレールを整備している。大規模(約5,000~6,000 人)だけでなく、中規模(約3,000 人)にも対応でき、空席が出にくい提案が可能である。
Q: スタジアム・アリーナにおける看板等の広告収入はどれぐらいあるのか。
A: 金額は非公表。施設ではビジョン広告を実施している。施設内で見える企業名は、クラブに対する広告であり、スタジアムのゲート企業名はチケット表記にも関係するなど、クラブの収益になっている。
Q: スタジアムシティ内移動の際のバリアフリー化の取組みは。
A: 強みと言えるほどのバリアフリーは実現できていない。車椅子専用駐車場は約10台用意し、貸出用車椅子も約10台準備している。しかし、屋外施設で路面が不均一な箇所があり、車椅子利用者には使いづらい面がある。
Q: 長崎市内の企業や事業所・商店との共存共栄をどのように図ってきているのか。
A: スタジアムシティが1人勝ちするのではなく、長崎県内全体で盛り上げたい考えである。コラボ企画や、クラブマスコットによるPR等を実施している。また、長崎市と調整し、サッカーのホームゲーム前後に町中周遊の無料シャトルバスを運行し、中華街付近などへの誘客を図っている。
Q: 平日でも一日12,000人の来場という状況で、交通渋滞の対策は、どのようにしているのか。
A: 平日は特段の対策をしていないが、渋滞は発生していない。試合時も公共交通機関利用が多く、施設付近で渋滞が起きたことはない。初戦等では警察も配置されたが、渋滞が起きず、その後は警察配置もなくなっている。
・追加質問(抄)
Q: 公共交通の増便等の協力体制を伺いたい。
A: 路面電車は長崎電気軌道と10契約を結び、増便や分岐(レール追加)等で回転率を高める仕組みを整備した。停留場名も「スタジアムシティ」に変更した。長崎バスはクラブのパートナー企業であり、試合時は依頼せずとも増便していただいている。JRは増便申請に時間を要するため、増便ではなく車両数を増やす(2両編成→イベント前後に6両編成等)対応をしていただいている。
Q: 事業としての収支状況を伺いたい。
A: 昨年1年間は赤字であったが、想定どおりの着地である。ホテル稼働が増加したことが一因で、役員陣の見立てとしては、来年あたりから黒字化が見えてくる可能性があるとのことであった。
Q: 防災対応に関し行政との関わりを伺いたい。
A: 開業前から協議しており、避難所登録については現在も調整中。開業前は要件を満たせず避難所登録できなかったが、災害時の避難所として案内できるよう消防とも協議している。まもなく登録できる見込み。現在、施設管理部が中心となり、防災グッズの準備等を進めている。
Q: ジュニアサッカーやミニバス等、裾野拡大の取組を伺いたい。
A: クラブがクリニック等を実施している。学校訪問等も行い、子どもに身近に感じてもらう取組をしている。オールスター時も他選手がクリニックに参加した。子どもの夢がサッカー選手等に変化してきており、試合観戦をきっかけにサッカーやバスケットを始めたというSNS投稿も見受けられている。
Q: 事業評価の精度が高い理由、評価方法を伺いたい。
A: 比較できる施設がないため自社目線の数字で見ている。経営陣の中にEBITDAの基準ラインがあり、まず経営として成り立つラインを超えるかを重視している。
Q: 現状把握のためのデータ収集方法を伺いたい。
A: 来場者データは、ソフトバンクの分析システム(来場者の携帯GPSを用いた分析)を活用している。各事業でもヒアリングツールを持ち、例としてスタジアムツアーでは配付するプレゼントに印字しているQRコードからアンケートを収集している。テナント担当部署でも来訪者属性等をデータ化しており、売上データについても日次で確認している。それらのデータは長崎大学の情報分析センター(テナント入居)に分析を依頼している。