小名浜火力発電所の環境アセス、環境相が反対意見を提出
2009年 05月 26日
意見書提出を受けた二階経済産業相は「(勧告はCO2排出削減の)対応を事業者に求める内容になっていく。関係者と早急に調整したい。排出が着実に低減される仕組みの構築が大事だ。前向きに対応する」と語り、勧告が注目される。
(仮称)小名浜火力発電所は、日本化成とダイヤモンドパワーの共同出資事業会社「小名浜パワー事業化調査」が日本化成小名浜工場に建設を計画した石炭燃料の出力40万kWの火力発電所。しかし、石炭の燃料コストは安いものの、化石燃料の中でCO2排出量が最も多い、極めて環境負荷が大で、新規に年間228万トンの二酸化炭素を排出する。
斉藤環境相は、昨年9月の記者会見で「二酸化炭素排出抑制が日本の大きな課題であるときに、そのような計画が国民の皆さんに受け入れられるとはとても思えません」と発言。
さらに、福島県も昨年12月、環境影響評価準備書に対する知事意見を経済産業大臣に提出したが、総括的事項で、 本事業による多量の二酸化炭素の排出増加が日本の「低炭素社会づくり行動計画」との整合及び「福島県地球温暖化対策推進計画」との整合が図られていないとし、大幅な排出量削減が可能となる抜本的な環境保全措置である燃料種の転換、規模の縮小などの検討を求めた。
また、小名浜地区が「大気環境及び海域における水質が環境基準を達成していない 状況にあることから、対象事業に係る環境影響ができる限り回避・低減される よう最大限配慮すること」を求めていた。
斉藤環境相の意見書では、発電所の発電量1kw時当たりのCO2排出量は約0.8キログラムで、電気事業連合会の排出抑制目標の2倍以上になるため、京都議定書目標達成計画と昨年閣議決定の「低炭素社会づくり行動計画」に掲げた「温室効果ガス排出量を50年までに60~80%削減」という長期目標達成に影響するとし、経産省に対して、電気事業者全体として発電量当たりのCO2排出量を減らす枠組みの早期整備や、今後計画される石炭火力発電所は、その時点で採用可能な石炭ガス化複合発電、CO2回収・貯留など最高水準の技術を用いて、CO2の排出を最大限抑制したものとするよう求めることを要請した。
経済産業省は、これを元に「小名浜パワー事業化調査」に対策を求める勧告をするものとみられ、「小名浜パワー事業化調査」は小名浜火力発電所の計画を練り直すことが求められる。
※小名浜火力発電所のCO2排出原単位は、0.8kg-CO2/kwh。電力会社の販売電気のCO2排出原単位は、0.34kg-CO2/kwh。小名浜パワーのような特定電気事業者でも天然ガスのCO2排出原単位は、0.37kg-CO2/kwh。