第五十八寿和丸海難事故、なぜ漁労長の書類送検なのか?
2009年 06月 03日
6月3日、福島海上保安部は、行方不明で死亡とされた同船の漁労長を業務上過失致死の疑いで地検いわき支部に書類送致した。
報道によると、保安部は、事故原因について、海上保安大学校の鑑定結果をもとに、推定約6mの大波を連続的に2回受けて転覆、沈没したと特定した。保安部によると、 漁労長は船員法で航海当直の見張りの配置が義務づけられているのに、事故当時、見張りを立てていなかったので、船室で休憩中の船員の避難誘導指示ができず、船員を死亡させたとしている。
第五十八寿和丸事故は、救助された生存者の証言から、船首右舷船底近くの側面に2度の強い衝撃を受け、船底の燃料タンクが何らかの原因で損傷、この損傷で右舷側に傾き、わずか10〜15分で沈転覆沈没したものだ。
いわき市議会も、昨年12月定例会で「第五十八寿和丸」転覆沈没海難事故の原因究明を求める意見書を全会一致で採択し、「速やかに潜水調査を含め、徹底調査に努めること」「行方不明の乗組員御家族の心情を察し、第五十八寿和丸の船体映像を確認すること」を国に求めている。
今年1月には、ご遺族と船主の酢屋商店社長はじめ小名浜機船底曳網漁協組合理事、いわき市長、市議会議長らが、国土交通省などを訪問し14万5,683人の署名を手渡して、「波浪による単純な転覆事故ではない。寿和丸の船体を確認する必要がある」、水深5.800mの沈没地点を独立行政法人海洋研究開発機構所有の深海調査船によって潜水調査を行うよう要望した。
運輸安全委員会での調査は現在も進行中だ。
なぜ漁労長の書類送検なのか?
福島海上保安部は、見張りをたてずに船員を死亡させたとしているが、それは事実なのか?
そのような生存者の証言があったのか?
特定する原因も証拠もそろっているのか?
報道をきいて、第五十八寿和丸の犠牲者やご遺族の心情を察すれば余ある。
何としても第五十八寿和丸転覆海難事故の原因を、徹底究明する必要がある。
それには、潜水調査と船体映像の確認だ。
海の安全を願う市民、国民の願いをぜひとも実現しなければならない。
第五十八寿和丸は、水深5.800mの深海の底で、今も待っていると思えてならない。