第五十八寿和丸転覆海難事故、酢屋商店が独自調査開始
2009年 10月 01日
このことは、事故原因を調査している国交省運輸安全委員会が、7月に調査の経過報告書を公表した際、野崎酢屋商店社長が「油の流出量に納得いかない所がある。生存者の証言から、油はもっと多く流出したのではないか」として、「運輸安全委員会から説明を伺い、疑問点をきいてみたい」と言っていたことから、当然のことで、遺族をはじめ漁業関係者、いわき市民も同じ想いだ。
運輸安全委員会の経過報告書は、浮遊していた燃料油の拡散範囲や航空写真による推定油膜の厚さなどから流出量を推定し、同船の燃料の満載搭載量は約65キロリットルで、仮に船体に何かが衝突して損傷すれば、流出量はさらに多くなると予想されると見解を示し、現場海域の流出燃料の油量は約15~23リットルと燃料の満載搭載量に対しては「ごく少量だった」と分析、船体が外的要因で損傷し転覆、沈没した可能性は低いと推定。船から流出した油量状況のみの公表で、事故原因についてはふれなかった。 しかし、流出油量の推定は科学的にみて妥当か、流出油量を推定した油膜の厚さ分析は合理的なのか、運輸安全委員会の推定に客観的普遍性、科学的合理性があるのかは不明だ。
このため、酢屋商店は、船主としては異例の独自調査に乗り出し、調査結果をまとめ、同委員会の最終報告書公表後の意見聴取の場で提出するという。野崎酢屋商店社長は、 「委員会の調査結果を動かすのは難しいかもしれないが、実際に船体を見ずに自然現象などで原因を判断するのはいかがなものか」と語ったという。
今年1月、「波浪による単純な転覆事故ではない。寿和丸の船体を確認する必要がある」、水深5.800mの沈没地点を独立行政法人海洋研究開発機構所有の深海調査船によって潜水調査を行うよう要望した全国14万5,683人の署名人に、運輸安全委員会は「金銭面などから、潜水調査は現状では考えていない」との見解を示しているが、到底納得できるものではない。
長崎県平戸市沖で沈没した「第11大栄丸」が9月22日、161日ぶりに海底から引き揚げられ、12名の行方不明者のうち11名が船内捜索で身元が判明したニュースを聞くに連れ、第五十八寿和丸の遺族のみなさんの心中いかばかりかと思わずにいられない。
いわき市民は決して第五十八寿和丸を忘れない。