反対討論、常磐病院の廃止・学校体育館の使用料・美術館観覧料
2009年 12月 18日
市病院事業の設置等に関する条例の改正など条例案14件、約22億4000万円の補正予算案7件、教育委員会委員任命など人事案6件など合わせて40件が原案通り成立。
このうち、市病院事業の設置等に関する条例の改正、市公立学校屋外運動場夜間照明設備使用料条例の改正、市立美術館条例の改正、常磐病院継承開設費補助金の債務負担行為を設定した一般会計補正予算案の4件は、反対と賛成の討論となり、私も会派を代表して、4案の反対討論を行いました。
裁決の結果、市立常磐病院を民間譲渡し用途廃止する、市病院事業の設置等に関する条例の改正は、賛成24、反対14で可決、他の3案も賛成多数で可決となりました。
●以下は、私の討論です。(長いですが、宜しければご覧ください)
20番、いわき市議会創世会の佐藤和良です。
ただいまより、会派を代表して、「議案第8号 いわき市病院事業の設置等に関する条例の改正について」、「議案第11号 いわき市公立学校屋外運動場夜間照明設備使用料条例の改正について」、「議案第13号 いわき市立美術館条例の改正について」、「議案第15号 平成21年度いわき市一般会計補正予算(第7号)第2条の『第2表 債務負担行為補正』のうち、常磐病院継承開設費補助金について」、いずれも反対、
「請願第5号 市立常磐病院の存続・充実を求めることについて」を採択すべきとの立場から討論を行います。
まず、「議案第8号 いわき市病院事業の設置等に関する条例の改正について」「議案第15号 平成21年度いわき市一般会計補正予算(第7号)第2条の『第2表 債務負担行為補正』のうち、常磐病院継承開設費補助金について」及び「請願第5号 市立常磐病院の存続・充実を求めることについて」は、いずれも、いわき市立常磐病院の民間譲渡に関するものですので、一括して申し上げます。
まず、第一点は、いわき市市立病院改革プランに基づく、いわき市立常磐病院の民間譲渡の問題点について、です。
いわき市立常磐病院の民間譲渡は、「いわき市市立病院改革プラン」に基づいています。
そもそも、「いわき市市立病院改革プラン」は、新自由主義政策による小泉構造改革によって、国の社会保障費が抑制され、医療費削減が進行した結果、地域医療が崩壊し、全国の8割近い公立病院が財政赤字を抱えることになったため、総務省の公立病院改革ガイドラインによって、公立病院を再編統合し、赤字病院を切り捨てるために、全国の公立病院に示したものです。
本年2月の衆議院予算委委員会で当時の鳩山総務大臣は、「公立病院改革ガイドライン」は、「地方自治法上は、技術的な助言。単なる指針だ」としていましたが、このガイドラインに基づき20年度中に策定したのが、「いわき市市立病院改革プラン」です。
プランの内容は、短期的には「運転資金の確保」、中期的には「一般会計からの所定の繰出し後、経常黒字の達成」を経営目標としており、平成22年4月に、総合磐城共立病院に常磐病院のリハビリテーション医療と精神医療を統合、統合後の常磐病院は2次救急機能の存続を前提にして、民間の医療法人などに譲渡する計画です。
これに対して、地元常磐・遠野地区の「常磐区長会」、行政嘱託員、保健委員みなさまが存続を求める声をあげました。
ところが、病院局は、出先機関再編の説明会のように、市内各地で市民に対して丁寧に説明し、理解を得るという細やかな対応をとらず、プラン案にするパブリックコメントでも、総合磐城共立病院の元院長、医師会、病院協議会、学識経験者はじめ市民各層から寄せられた貴重な提言や対案に対して、意見拝聴といいながらパブコメの意見を取り入れることはありませんでした。
このため、市議会2月定例会には、「常磐区長会」会長、「いわき市立常磐病院腎友会」会長ら3人が請願者となり、2万5,154人の署名を添えて「安心・安全・信頼の地域医療のために市立病院の充実等を求めることについて」の請願が提出されました。
わたしどもは、地域医療を守るために、安心信頼の市立病院の実現をめざして、市民の議論を十分に保障し、理解と合意を得た上で決定すべき、との立場から請願に賛成し、市立病院全体の経営と市民の医療サービスの観点から民間譲渡案を見直し、医療関係者はじめ市民の声を聴いて、市立病院改革プラン案を見直すべき、と提言しました。
わたしどもは、こうした経過を踏まえて、本市病院事業中期経営計画の検証と総括が不十分なままプランが作成され、病院局首脳陣の責任ある経営が行われていないことを問題にして参りました。
平成18年の市立病院改革基本方針、平成19年の市病院事業中期経営計画では、取り組み実施後、経営目標が達成され、平成20年度末で現金残高17億円とされておりました。これが、平成21年度には、運転資金の枯渇が予測される事態に、何故、変化したのか。
国の医療費削減策、医師不足の影響は大きいとしても、公営企業法全部適用後3年、組織の問題点を切開して、医師や看護士、コメディカルなど現場の声を積極的に活かす、人を生かす経営が不在ではないのかと指摘して参りました。
また、わたしどもは、プランの収支計画について、見通しの甘さと実現の困難性を指摘して参りました。
プランは、常磐病院の民間譲渡によって、常磐病院の医師11人が共立病院に移ることを前提にした収支計画でした。最近では、前提ではないと修正していますが、意向調査では共立病院に移るのは4人です。医師の移動数をみる限り、平成25年の収支黒字化の実現は厳しく、実効性に大きな疑問が残ります。
収益と費用に踏み込むといいながら、肝心の医師確保の抜本的な改善策が提起されておりません。
本市の医師数の現状は、厚生労働省調査でも「100床あたりの医師数統計で、いわき市が青森市と並んで全国最下位の6.6人。郡山市の9.2人の約7割」というものです。医師確保に特化した抜本的な対応策が喫緊の課題であり、いわき市病院事業の死命を制するものです。
こうした問題点を指摘しながら、わたしども創世会は、5月に「市立病院と地域医療を守る市民集会」を開催し、市民のみなさまから、ご意見ご要望を拝聴いたしました。
わたしどもは、市民のご意見を踏まえて、約8割の参加者が市立常磐病院の存続を求めたアンケート結果を尊重し、市立常磐病院の存続について再考を求めること、市立総合磐城共立病院の抜本的改善、病院経営と耐震対策のため、新病院建設を5年以内の目標として検討機関の設置をすること、地域医療崩壊と公立病院の財政難の大きな原因である国の社会保障費抑制、医療費削減策の転換を国に強く要請すること、などの要望書を市長に提出し、その実現に向けた努力を求めてきたところであります。
つぎに、第二点は、いわき市立常磐病院の後継医療機関への引継ぎの問題点について、です。
市立常磐病院の後継医療機関は、本年6月から7月にかけて公募され、7月20日に、いわき市後継医療機関選定委員会が、応募があった「財団法人ときわ会」のプレゼンテーションとヒアリングを行いました。
「診療体制」「地域医療機関との連携」「人材の確保」などを評価、審査した結果、法人の提案内容について、常磐地区の地域医療を担おうとする意欲が認められ、引き継ぎ後も安定した経営が可能であると判断した上で、救急医療、土地、市に対する財政支援の要望の3点について、付帯意見を提出しました。
この後継医療機関選定委員会の審査結果を受けて、病院局は、10月、「財団法人ときわ会」に対し、22年4月1日に常磐病院を引き継ぐことで、22年度に「常磐病院継承開設費補助金」8億8,000万円を交付する財政支援について合意に達した、と公表しました。
この補助金について、法人側の投資計画は、開設時の概算経費を、耐震補強、老朽施設の解体・改修、高性能医療機器の導入、透析センターの建設などの総額約33億円としており、市に対して、土地代相当分を含めた約11億3,000万円の支援要望でした。これに対し病院局は、①円滑な引き継ぎ②法人の初期の経営安定③老朽化した施設の改修・解体の必要性④救急医療の充実⑤過去5年間で年間平均約5億円を市一般会計から常磐病院に財政負担をしている、などを総合的に検討して、施設の耐震補強・解体・改修経費計約17億4,000万円の2分の1相当額、8億8,000万円を開設資金として補助することとした、と説明しました。
そして、土地・建物のうち、土地は当面、市有地部分について無償貸与、5年程度の一定期間後、譲渡する際は有償とし、建物は無償譲渡というものです。
これらの合意は、11月30日、いわき市長と財団法人ときわ会の間で、医療機能の継承や土地の貸付、建物等の譲渡、財政支援など九条にわたる「いわき市立常磐病院の引継ぎに関する基本協定書」として締結されました。
後継医療機関への引き継ぎをめぐって、市民からは、「救急医療は大丈夫か」「常磐病院継承開設費補助金の約8億8千万円の交付は、公平公正なのか」「後継医療機関の経営と資金調達は大丈夫か」などの疑問が出されました。
議会としては、後継医療機関への引き継ぎにあたって、後継医療機関選定委員会が示した附帯意見が解決されたか、確認しなければなりません。
付帯意見のうち、土地については、当面、市有地部分について無償貸与、5年程度の一定期間後、譲渡する際は有償と、整理されました。
法人から市に対する財政支援の要望については、老朽化した施設の解体など理解できるものと、新病棟建設補助など理解を得難い内容もあり、選定委員会は、対応は市に委ねるとしていました。
この財政支援については、開設資金として「常磐病院継承開設費補助金」約8億8千万円を交付すると整理されました。施設の耐震補強・解体・改修経費合計の2分の1相当額、8億8,000万円を開設資金として補助するとした、財政支援2分の1の補助金が、好間病院の事例の3分の1の補助金と比較して、果たして公平公正なのか、疑問が残りました。
付帯意見の最大の課題は、救急医療について、です。選定委員会は、「救急医療については、引き継ぎの条件は満たしているものの、これまで常磐病院の実績を踏まえ、提案がなされている診療体制のより一層の充実を図るなど、法人に対し更なる努力を求める」と、救急医療、二次救急機能の充実を強く求めました。
救急医療について、市立常磐病院の引き継ぎに関する基本協定書では、「後継医療機関選定委員会報告書の内容を踏まえ、特に救急医療について診療体制の一層の充実に努める」とされています。確認すべきは、譲渡引き継ぎの前提条件である「二次救急における常磐病院の実績、年間900件を確保できる保障はできたのか。それを担保する医師の確保はできたのか」ということです。
現状は、2次救急について、常磐病院の実績、年間900件を確保できる保障は、未だ確認できず、であります。
この点が、明確に保障されなければ、二次救急医療体制の混乱、ひいては地域医療の崩壊につながる恐れなしといえません。
病院局の答弁では、提案がなされている診療体制である「約300件程度の受け入れは最低でも可能となる」というものです。しかし、選定委員会報告の付帯意見、常磐病院の実績、年間900件は抽象的な精神論ではありません。日々の目の前で起きている現実です。
常磐病院の実績、年間900件はおろか、法人が経営してきた竹林病院の300件も初年度は施設の改修によって怪しいというのでは、年間900件近い二次救急をどこで受け入れるのか、早晩問題となることは必至です。
このことは、本市の二次救急医療を担う病院群輪番制事業に参加する市病院協議会のみなさん、そして二次救急の3割強を引き受けている市立総合磐城共立病院がどう対応するのか、すぐさま跳ね返ってきます。
本市として、地域の救急医療体制を崩壊させないために、いわき市地域医療協議会をはじめ、市病院協議会、市医師会など関係機関のみなさんと救急医療体制の再構築の協議を、可及的速やかに進めることが必要です。
このように、後継医療機関選定委員会が示した附帯意見の最大の課題である救急医療について、現時点では未解決、という他ありません。
二次救急医療という常磐病院が担ってきた医療サービスが保障されないまま、選定委員会の附帯意見の最大の課題が未解決のままで、見切り発車することは、市立病院に対する市民の信頼を傷つけ、地域医療の将来に禍根を残すことになります。
本請願に示される、市立常磐病院の民間譲渡に対する市民の根強い反対の声、そして、患者さんたちの不安、医療関係者の疑問の声が消えていないのが実状であります。
以上の理由から、「議案第8号 いわき市病院事業の設置等に関する条例の改正について」「議案第15号 平成21年度いわき市一般会計補正予算(第7号)第2条の『第2表 債務負担行為補正』のうち、常磐病院継承開設費補助金について」反対し、「請願第5号 市立常磐病院の存続・充実を求めることについて」に賛成するものです。
つぎに、議案第11号 いわき市公立学校屋外運動場夜間照明設備使用料条例の改正について、であります。
本案は、本市の「第5次市行財政改革行動計画」における「全庁的な使用料・手数料の見直し」により、「受益者負担の原則」を基本に提案されました。
使用料を有料化している屋外運動場夜間照明設備の利用者と、屋内運動場照明設備の利用者との公平性を図るためという理由で、来年4月より、屋内運動場照明設備の利用者から、電気料金相当分の使用料を1時間あたり200円負担して頂くというものです。
それでは、市民負担はどの程度になるのか。平成20年度の小中学校体育館の夜間の利用実績からすれば、410団体、1万9,347件と報告されていますので、1団体あたりの年間負担額は、平均で約1万8,000円程度、負担が最大となる団体は年額約7万6千円になると説明されました。
これに対して、主に小学校の体育館を拠点に活動しているスポーツ少年団25団体の保護者でつくる「いわき市小学生バレーボール健全育成会」のみなさんが、「市は、スポーツ振興を重要施策に掲げているが、少子化などで入団希望者が減っている上、新たな負担を父母に求められない」と窮状を訴え、市長に3,670人分の署名を添えて有料化反対の陳情を行いました。
翻って、学校体育施設は、学校教育のために設置している施設であります。
学校体育施設の市民開放は、学校教育に支障のない範囲で、市民の社会体育の促進及び普及を図ることを目的として行っているものです。
本案による総収入の予測は、昨年実績で約760万円ですが、行財政改革の一環として、果たして押し通すべきものなのか、大いに疑問です。
地域経済が疲弊し家計収入も厳しい中にあって、学校教育施設において、新たな市民負担を設けるべきではありません。
さらに、教育委員会は、減免を4月の施行までに検討するといいますが、そもそも、減免規則も不明確なまま議案提案するというのは如何なものでしょうか。いかにも付け焼き刃的な対応であり、減免規則が不明確なまま、賛成するわけにはまいりません。よって、本案には反対であります。
つぎに、議案第13号 いわき市立美術館条例の改正について、であります。
本案も、本市の「第5次市行財政改革行動計画」における「全庁的な使用料・手数料の見直し」により、「受益者負担の原則」を基本に提案されました。
来年4月より、常設展観覧料の一般個人150円を210円に、企画展観覧料の一般個人を上限1,050円から上限1,500円に値上げするものです。
そもそも、美術館の観覧料については、博物館法第二十三条によって「公立博物館は、入館料その他博物館資料の利用に対する対価を徴収してはならない。但し、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対価を徴収することができる。」と規定されております。
市立美術館は、市民の芸術文化振興、良質な作品鑑賞の提供施設であり、博物館法の趣旨を踏まえ、観覧料は維持運営にやむを得ない必要な対価として、低料金としてきた経緯があります。
教育委員会は、美術館運営に当たって、サービス水準を維持しながら、経費の節減に努めてきたが、県内及び近隣公立美術館と比較し低い受益者負担となっている現状を踏まえ、値上げが必要と判断したといいます。
しかし、いわき市立美術館は、市民の地道な美術運動と市民からの強い要望を受けて誕生した経緯があり、もともと、スタートのときから、一般市民が日常感覚で気軽に安い値段で入場できるということでスタートしてきました。
このため、行財政改革の一環として値上げすることはなじまないばかりでなく、むしろ、入館者増加のために、なお一層の創意工夫をこらすことこそ求められております。
教育委員会は、いわき市立美術館が県内及び近隣公立美術館と比較し低い受益者負担であることを値上げの理由にしていますが、いわき市もいわき市民も、市民の芸術文化振興、良質な作品鑑賞の提供施設として、低い受益者負担であることは、むしろ大いに誇るべきことであります。
いわき市立美術館は、現代美術コレクションを柱とした国内初の公立美術館として、今年、開館25周年を迎えました。
地域経済が疲弊し家計収入も厳しい中にあって、だれもが親しめる出会いと安らぎの広場として、市立美術館が愛され続けることを願い、本案に反対致します。
以上をもって、わたくしの討論といたします。
議員各位のご賛同を賜りますようお願い申し上げて、わたくしの討論を終わります。
ご清聴ありがとうございました。
*最後まで、お読みくださって、ありがとうございます。
