始まっている未来 新しい経済学は可能か
2010年 01月 03日
内容は、次のように紹介されている。
「世界と日本に現れている未曾有の経済危機の諸相を読み解きながら、パックス・アメリカーナと市場原理主義で串刺しされた特殊な時代の終焉と、すでに確かな足取りで始まっている新しい時代への展望を語り合う。深い洞察と倫理観に裏付けられた鋭い論述は、「失われた二〇年」を通じて「改革者」を名乗った学究者たちの正体をも遠慮なく暴き出し、「社会的共通資本」を基軸概念とする宇沢経済学が「新しい経済学は可能か」という問いへのもっとも力強い「解」であることを明らかにする。」
「儲けるために法を犯さない限り何をやってもいい」という、経済学というより一種の信念である、フリードマンらアメリカの市場原理主義者の歴史、日本の「そっくりさん」中谷巌、竹中平蔵、島田晴雄らの役割、「日本の危機はなぜこうも深いのか」、日本の植民地化と日米構造協議、自治体行政への市場原理の導入など、1980年代以来の新自由主義と小泉構造改革の市場原理主義によって破壊された日本の経済社会の中で、地方議会で抵抗を試みてきたものとして、一気に読んだ。
補論に、農業協同組合新聞に掲載された鼎談が「社会的共通資本としての農の営み」として載っているが、農政のあり方、WTO体制の欺瞞性、FTA・EPA交渉の問題、大規模化追求の近代化、「社会的共通資本」としてのため池、農村の再生など、農業と食料の危機にどう対応すべきか、示唆に富む。
本書は、日本の国と社会がどう変わらねばならないのか、何を変えるのか、めざすべき進路は何か、考える一助となる。対談なので読みやすい、一読をお勧めしたい。