保安規定違反繰り返す福島原発
2010年 09月 29日
保安規定第41条には、原子炉の状態が運転、起動および高温停止において、原子炉隔離時冷却系が動作可能であることを運転上の制限とすると規定されている。今回の違反は、5号機の原子炉隔離時冷却系の機能喪失が17日間も続いたことだ。約半月以上にわたり緊急時に原子炉へ冷却水を送れない状態のまま運転していたことに気づかなかった。
東京電力の調査によると推定される原因は、5号機の隣にある定期検査中の6号機で実施すべきケーブルの取り外し作業を作業員が誤って運転中の5号機で行ったこと。作業員がケーブルを取り外す前に6号機の図面と誤って5号機のものを印刷、チェックする当直長らもミスに気付かず作業手順を記した表示札が作成された。定期検査の作業手順書に間違った号機が記された上、作業表示札をチェックする審査担当者4人と承認担当者1人も見逃し、現場作業員は作業表示札に従い、5号機のケーブルを外したことから、8月16日から9月2日まで間、同系統が動作不可能な状態で放置されていた。
繰り返すが、東京電力の保安規定違反は、福島第一・第二両原発で11件目にものぼる。
福島県も東京電力に対し原因究明と安全確保を求め厳重注意した。県の厳重注意は2006年に発覚した東京電力のデータ改ざん問題以来だが、東京電力は同じ第一原発3号機でプルサーマルを強行し、起動時に点検漏れを起こし謝罪したばかり。東京電力は毎回、「重く受け止め再発防止に努める」というが、改善の兆しさえ見えない。東京電力は、原子炉の運転管理者として、依然として基本的な安全管理に重大な欠陥をはらんでいることが再び明らかになった。繰り返す保安規定違反に対して、「報告」と「厳重注意」だけで、安全軽視、効率優先、国民無視の東京電力の体質を変えることはできない。プルサーマルをブルドーザーのように強行していることと同時に起きているこの事態、経済産業省原子力安全・保安院と福島県も責任なしといえない。安全軽視、効率優先、国民無視の病根は深く、しかも同根である。