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農業振興基本計画とTPP参加の影響

12月定例会、6日の一般質問のご報告です。
大きな3項目のうち「農業の再生について」のやり取りを以下、紹介します。
長いですが、ご覧ください。

3 農業の再生について

 「農は国の基なり」と、命を育んできた農業ですが、日本農業の現実は厳しいものがあります.
 11月に農林水産省が公表した、2010年「農林業センサス」によれば、全国の農業就業人口は75万人減の260万人になりました。福島県の農業就業人口は、10万9100人で、前回の2005年から19.2%の減となり、平均年齢は66.8歳となり高齢化も進みました。耕作放棄地は前回より3.2%増加し、2万2395ヘクタールで、20年連続全国ワースト1です。
 一方、福島県内の農産物の産地直売所の増加率は25.5%で、食の安全志向の高まりの中、消費者への直接販売で所得向上に取り組む農家が増えています。
 また、生産物加工に取り組む県内の農林業者は1,593経営体で前回調査より36.6%増加しました。都市部住民への貸し農園や体験農園の経営は161経営体、49.1%の大幅増です。観光農園は202経営体、農家民宿は117経営体と「地域産業の6次化」に取り組む農林業者が着実に増えています。
 こうした「農林業センサス」で明らかになった農山村の実態を踏まえながら、本市の農業の再生に向けて、以下伺います。

 ⑴ 新いわき市農業・農村振興基本計画の具体的取り組みについて

 本市農政の指針である新いわき市農業・農村振興基本計画は、平成23年度から27年度までの本市農業・農村の目指すべき姿と実現方策を示しています。
 農業振興施策として、3つの柱、8つの基本項目をあげていますので、以下伺います。

ア 計画の基本項目のうち「人」の「担い手の育成・確保」では、重点施策が「意欲ある若手専業農家の育成・支援」とされているが、第二期新規就農支援推進事業の支援内容や補助金など、その具体的内容をお尋ね致します。
  【答弁:以下、農林水産部長】 市におきましては、市内で就農するための相談窓口として就農サポーターを設置し、就農相談や就農促進活動に取り組んでおります。
また、市外から就農を希望する学生を対象に大学へのプロモーション活動等を展開するために「担い手・就農支援促進事業」を実施し、その中から、若く意欲のある担い手を選定して「第二期新規就農支援推進事業」により農業経営技術習得等の研修を行っております。
さらに、計画の初年度となる平成23年度からは、新たに短期間の農業体験・農業研修の機会を設ける「ステップアップ就農事業」を構築するなど、より効果的な就農促進に努めていく考えであります。

  イ 計画の「多様な担い手の育成・確保」の「集落営農を推進」について、集落営農への支援を具体的にどのようにすすめるのか、お尋ね致します。
  【答弁】 これまで、市におきましては、JAいわき市担い手・集落営農
支援センターが中心となり、関係機関・団体が連携し、国・県の事業の活用を図るため、その受け皿となる集落営農の組織化に努めてきたところであります。
 今後とも、関係機関・団体が連携し、集落座談会等を通して、農地の利用集積や、農作業の共同化などによる効率的な生産体制を支援し、農用地利用改善団体等への誘導活動を行うと共に、集落の条件に即した、多様な担い手の育成・確保に努めていく考えであります。

ウ 第二期新農業生産振興プラン推進事業費補助金によるいわき市農業生産振興協議会の各種事業など具体的内容をお尋ね致します。
  【答弁】 いわきらしい生産振興を図るため、農業関係機関・団体等を構成員とした「いわき市農業生産振興協議会」が実施している主な事業を申し上げますと、本市農産物等をPRするイベントである「いわきdeマルシェ」の開催や、市内イベントへの出展を通じ販路拡大や地産地消を推進するとともに、中学生を対象とした「伝統食教室」や「児童と生産者との交流会」の実施などにより、いわゆる食農教育の充実に努めているところであります。
また、生産者の情報発信の仕方や技術的知識等の習得を目的とした「農業者パソコン講座」を開催しております。
さらに、「いわき産農産物加工品開発事業」により、生産者の皆様を対象として新たな農産物加工品の開発やパッケージ・ラベルの製作を助成しております。

  エ 6次産業化モデル事業の具体的内容をお尋ね致します。
  【答弁】 6次産業化モデル事業につきましては、平成23年度からの新規
事業として位置付けている事業でございまして、生産・流通・販売など、幅広い分野に渡る情報、ノウハウ、ネットワークを有するコーディネータを配置し、地域資源の調査や他産業との連携を図りながら、農業者が主体となって取り組む、農産物の高付加価値化を図るモデル的な取組みを支援していく予定でおります。

  再質問 コーディネータには、どのような人を想定しているのか、お尋ね致します。
  【答弁】 6次産業化のポイントにつきましては、ノウハウを持っているコーディネータの設置が肝要でありまして、まず、農業者が主体となることは勿論でありますが、農業者の意識の喚起を図ったり、潜在的ニーズを掘り起こしたり、そして何よりも、他産業や大学等の高等教育機関、研究機関、産業支援機関等との相乗効果を高められるような、そういったネットワークをお持ちの方々を念頭に、今後、予算等の議論を経て、設置に向け取り組んでいきたいと考えております。

  オ 新いわき市農業・農村振興基本計画では、推進体制や役割、進行管理も示されており、本市として責任を持ってどのように進めるのか、お尋ね致します。
  【答弁】 市といたしましては、当該計画の策定主体であるという基本認識のもと、各種事業の着実な実施に努めて参りたいと考えております。
また、本市農村の主体となる農業者の皆様、そして、関係機関・団体等との緊密な連携・協力のもと、基本理念を相互に共有し、それぞれの役割分担による協働作業を通じて、施策展開を図り、適切な進行管理に努めていく中で、その職務・責務を果たして参りたいと考えております。

 ⑵ TPP=環太平洋パートナーシップ協定参加による本市農業への影響について

 菅総理は、アメリカが提唱するTPP=環太平洋パートナーシップ協定への参加を打ち出しました。輸入・投資の関税を完全にゼロにして例外なく自由化する包括的関税撤廃協定ですが、輸出市場の大半がアジア諸国になっている中、経済衰退するアメリカとの自由貿易協定は、日本の利益が上がらないばかりか、郵貯の資金運用への米国金融機関の参入やBSEの肉用牛月齢30ヶ月の安全基準の撤廃など、TPPの名の下にアメリカ産業に有利な条件の実現を求める対日要求が突きつけられるとみられています。
 また、農業の平均規模が180haのアメリカや3,400haのオーストラリアに対し平均規模1.4haの日本農業を4haにと、いくら規模拡大を叫んでも日本農業が対等に競争することは困難であることは火を見るより明らかです。
 現状で拙速にTPPに参加すれば、食の安全確保はおろか国の「食料・農業・農村基本計画」の食料自給率50%目標は到底不可能であるばかりか、12%にまで落ち込むと試算されています。そこで、以下伺います。

  ア TPP参加による影響について、農林水産省の具体的な試算内容はどのようなものか、お尋ね致します。
 【答弁】 農林水産省におきましては、全世界を対象に、直ちに関税を撤廃し、何らの追加対策も講じないという前提のもと、コメ、小麦等の関税率10%以上の品目、かつ、国内生産額10億円以上の19品目について生産減少額を試算したところであります。
 具体的な試算方法については、関税撤廃による輸入増大等を考慮した品目ごとの生産量減少率を算定し、その減少率をそれぞれの生産額に乗じて総和を求めたものであり、その額は、4兆1,000億円程度になるとしております。
その他、産業連関分析等の手法により、食料自給率の低下、GDP減少額、多面的機能の喪失額などを併せて試算しております。

  イ TPP参加による影響について、農林水産省試算の対象品目から本市で影響のある品目を選んで、本市として影響を試算する考えはあるのか、お尋ね致します。
 【答弁】 我が国のTPPへの参加がなされた場合におきましては、国の各種試算にもありますように、本市農業の面におきましても、影響が避けられないものと考えておりますが、現在、市といたしましては、その影響額を算出するための基礎的資料を持ち合わせておりませんので、試算することは困難であります。

  ウ TPP参加により、本市の経営耕地面積、農業粗生産額、生産農業所得額をはじめ、地産地消や新いわき市農業・農村振興基本計画にも影響が考えられるのではないか、お尋ね致します。
  【答弁】 我が国が、TPPへ参加した場合におきましては、本市農業にありましても、影響があるものと考えておりますが、今般、国におきましては、「食と農林漁業の再生推進本部」を設置し、TPP参加に向けた総合的な議論がはじまったところであり、戸別所得補償制度、農林水産業の成長産業化、消費者ニーズに対応した食品供給システムなどを論点に、議論が進められることと承知しております。
今後、市といたしましては、国・県などの動向を十分に注視しながら、当該会議の中で、「新いわき市農業・農村振興基本計画」の根幹に関わる大きな情勢変化が生じ、見直しが必要となる場合などにおきましては、適時、適切に対処して参る考えであります。

  エ TPP参加について、食の安全確保や政府が閣議決定した農政の基本方針である「食料・農業・農村基本計画」の食料自給率の目標に相反するものではないか、お尋ね致します。
 【答弁】 国においては、平成22年11月9日に閣議決定された「包括的経済連携に関する基本方針」に基づき、11月30日に「食と農林漁業の再生推進本部」を設置するなど、食料自給率の向上や力強い農業を育てるための対策などを議論している段階であります。
このため、食料自給率と「食料・農業・農村基本計画」との整合については、その議論の結果を待って判断されるものと認識しております。

  オ TPP参加について、JA福島中央会、県森林組合連合会、県漁業協同組合連合会、県生活協同組合連合会など県内農林水産団体と消費者団体の参加反対の声を、どのように受け止めて対応する考えか、いわき市農業委員会のご所見を伺います。
 【答弁:農業委員会会長】 TPPにおける関係国との協議開始の表明を受け、全国をはじめ県内の農林水産団体や消費者団体から、参加については、農林水産業が打撃を受けるだけではなく、消費者が求める安全・安心な食生活を脅かすことなど、それぞれの立場から反対するとの共同声明が発表されたことは承知しております。
 これらと相応し、いわき市農業委員会と致しましても、「第55回福島県下農業委員大会」への多数の委員が出席し、TPPへは、農業・農村を守る立場から参加しないことを決議してきたところであります。
 これを受け、12月2日に開催されました「全国農業委員会会長代表者集会」におきましても。都道府県農業会議からの決議を集約し、例外無き関税撤廃を原則とするTPPへの産科には、反対の立場から、政府に対し、絶対に参加しないことを要請してきたところであります。
 このような動きの中で、TPPへの参加は、農業・農村が壊滅的な打撃を受けるばかりか、地域経済や食料自給率の向上、食の安全・安心の妨げになることなど、農業の衰退が大きく危惧されていることに加え、これらに対する今後の農政振興施策等が示されていない現段階において、TPPへの拙速な参加につきましては、反対して参りたいと考えております。

  カ TPP参加について、本市として農業への影響を十二分に分析し、本市農業の再生を図る方向で、慎重に対応すべきと考えるが、市長のご所見を伺います。
 【回答:市長】 農業分野については、国において「食と農林漁業の再生推進本部」を設置し、中期的な行動計画を策定することになっておりますが、この農業分野をはじめとする多大な影響が想定される産業分野に関して、国の責任において、国際化に対応できる競争力の強化に向けた方針の策定や実効性のある対策を講ずることが、何よりも先決であると考えております。
先ほど、蛭田議員にも答弁しましたように、今、佐藤議員からもお話ありましたように、食料の安全保障というものをどう認識するかということが、一番肝要なんだろうと思っております。
それと、やはり、穀物の自給率をどう確保するのか、そのためには、国は、具体的な施策をどう構築するのか、ということが肝要なんだろうと思っております。
先ほども、申し上げましたように、1つには、ロシアの小麦の問題もあります。多分、相当な影響が出るだろうというオーストラリアのバッタの異常発生の問題もあります。自然環境で、左右される農業でありますから、入る前提で物事を決めていくことは、中々、難しいんだと思います。
それが、食料の安全保障だと私は理解しておりますので、国が、やはり、具体的な施策を国民に示して、その中で、具体的に作業が始まったなかで、TPPを進めるべきではないかというのが、私の認識であります。

 【まとめ】
 ご答弁頂きましたが、今は製造業利害と農業利害の不毛な対立をこえて、国の独立の基礎である食料自給、食料安全保障を冷静に確保していかねばならない時です。
 農業の国際競争力を高める方法は、ヘリコプターで農薬をまくような大規模農業にはできない安心・安全の農業を追求し、安心・安全のブランドを作ることで、日本の農林水産物をアジア諸国に輸出していくことです。
 米価はじめ農産物価格が下落するデフレ下では、個別経営の規模拡大は、かえって経営を苦しくしています。
 小規模でもやっていける地域農業を集積し、加工と流通部門を取り込んだ地域農業の6次産業化を進めることが、農業再生にとって肝要だと考える次第です。

*最後まで、ご覧頂きありがとうございました。


by kazu1206k | 2010-12-07 19:24 | 議会 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k