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寿和丸事故の最終報告案と意見聴取会

17人の犠牲者を出した第五十八寿和丸転覆事故。2008年6月23日の事故発生以来、2年半。報道によると、事故原因を調査している国土交通省運輸安全委員会は、今年度内に調査報告書を国土交通大臣に提出する、といいます。

一昨年11月に船主・酢屋商店の海事補佐人は、運輸安全委員会に対して「転覆原因究明には外部専門家の意見が不可欠だ」として、最終報告書作成前に、関係者並びに学識経験者からの意見聴取会の開催を求めて上申書を提出していました。国土交通省運輸安全委員会は、年度内の調査報告書提出前にして報告書の最終案をまとめ、2月7日に意見聴取会を行うとされています。

沈没原因について、国土交通省運輸安全委員会は、事故経過報告で流出量は15〜23ℓで、現場の油膜は厚いところで0.01ミリ。油量は微量で船体に大きな損傷はなく大波が原因としていました。
このため、昨年4月、原因調査を進める船主・酢屋商店の海事補佐人は、現場に浮いていた燃油量を確かめる実験結果を、千葉県の銚子漁恊で生存乗組員3人と僚船乗組員1人にみせ、当時の燃油の流出量を確認しました。これは、日本海難防止協会の協力で、水槽中で浮いている重油の見え方などについて、油膜を0.0003ミリから2ミリの6段階で実験したもので、実験の写真をみた4人は、油膜の厚さ2ミリの写真が一番当時の状況に近いと話しました。
この結果を、船主・酢屋商店の海事補佐人は、「落ち着きある気象・海象条件で、突然、船体が衝撃を受けた。パラシュートアンカーで停留中にも係らず、一瞬で転覆した。船体損壊の可能性を示す多量の油の流出があった」「運輸安全委員会の経過報告書では解決できない」と指摘。「流出油量は単純な転覆による量を超え、安全委の見解は前提で間違っている。船体に何らかの損傷があり、一瞬の沈没につながったと考えられる」とし意見書を提出していました。

船主・酢屋商店と第五十八寿和丸の遺族のみなさんは、一昨年1月、「波浪による単純な転覆事故ではない。寿和丸の船体を確認する必要がある」として、独立行政法人海洋研究開発機構所有の深海調査船が水深5.800mの沈没地点の潜水調査を行うよう、いわき市民はじめ全国の漁業関係者14万5,683人の署名を添えて国に要望しています。

潜水調査による事故原因の究明もないまま「大波による転覆」という最終報告書では、海難事故の再発防止もはかれないばかりか、対策の指針にもなりません。
17人の犠牲者の無念を思うとき、関係者の皆さんには、2月7日の意見聴取会で、第五十八寿和丸の遺族のみなさんのみならず、原因究明を求めるいわき市民・全国の漁業関係者の声を運輸安全委員会に届け、正々堂々と論陣を張って頂きたいと切に願うものです。


by kazu1206k | 2011-01-17 16:40 | 農水商工業 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k