矢ヶ崎克馬先生のメッセージ
2011年 03月 31日
●以下、転載。
矢ヶ崎克馬
怒りを胸に、楽天性を保って最大防御を
福島原発炉心溶融で多くの人が被曝しています。放射能におびえているだけでは被害が拡大するだけです。主権者である住民が「愚民」扱いされています。過酷な環境の中で、開きなおって、楽天的に、被害に対するこれからの手立てを考え、福島周辺だけでなく日本の社会をどう再建するか、この事故を教訓として新しい日本をどう「たたかいとるか」、知恵を集めるべきです。放射線被曝に対して最大防御を行いつつ、被害を受け身で受けるのではなく、被害の結果を先取りして認識しつつ、やるべきことは全部やり、要求すべきことは全て前もって要求するようなファイティングスタンスを構えようではありませんか!
我々は内部被曝隠蔽の歴史を学ぶ必要があります。
被爆者が内部被曝を隠ぺいされて苦しんできている事実を、事実として学びましょう。
被爆者は原爆にやられ、その上、内部被曝を切り捨てた「被爆者認定基準」によって苦しめられました。被爆者は二重の苦しみを味合わされたのです。原爆症認定集団訴訟はそのことをよく物語っています。第1次集団訴訟の全判決が内容的に内部被曝を認めて原告側が勝訴したことを再認識しましょう。そして今回の原発炉心溶融の事態に、内部被曝隠蔽の歴史を繰り返させてはなりません。内部被曝を否定された被爆者の苦しみを再現してはなりません。
文科省による汚染度の調査データはものすごい値を示しています。3月21日の測定結果は茨城ひたちなか市で最高値を示し、沃素とセシウム合わせて97,000MBq(Mは百万)。これをキュリー数に直すと2.6Ci(1Ci は3.7掛ける10の10乗Bq)。何とチェルノブイリ事故時の炉心周辺の最高汚染度の10分の1程度の値になっています。この値はチェルノブイリ災害の時に日本に降った放射性物質の濃度は0.1Bq/m2程度なので、その10万倍に相当します。福島のデータは無いが、汚染は広範に広がっています。政府はこの事実を数字だけ出して、国民に何の指示も出さないでいるのです。食品の汚染が報道されていますが、空気の汚染も、ものすごいものです。積極的に事実を知らせないで、隠すことが何をもたらすかわかっているのでしょうか?
「直ちに・・・」のまやかしの内に国民の被曝被害は拡大していきます。
汚染は放射性微粒子によって進みます。どのような姿で放出されているのか一切明らかにされていません。小さい酸化物数分子の形で方出されているのか?多原子からなる微粒子で放出されているのか?ここでは微粒子として放出されていることを仮定してどこまで飛ぶかを試算してみます。放射性微粒子は発電炉上空100mに吹き上げられて、毎秒4mの一様な風に乗るという想定で計算すると、直径1μmくらいならば1500kmはゆうに運ばれます。風が強ければもっと遠くまで運ばれます。現実はシミュレーションのように、放射能汚染の地域が拡大しています。チェルノブイリの時の日本の汚染状況よりはるかに高い汚染が進んでいるようです(小出裕章先生資料)。
スギ花粉の直径が30-40μmですが、放射能微粒子の直径はその10分の1以下のサイズです。普通のマスクでは防除が困難なサイズです。ずいぶん広範囲な地域の住民が内部被曝を受けざるを得ない危機状態が進んでいます。
私たちは汚染される覚悟が必要です。しかし、悲観して恐怖の内に汚染を待つのはよしましょう。この怒りを胸にしっかり収めて、開き直って、楽天的に、知恵を出し、最大防御を尽くしつつ、やるべきことはすべてやることしかありません。そして核のない新しい日本を創ることを決意するしかないのです。
今、端的に言って、日本のどこにいても汚染は避けられません。汚染から精神的に逃げていれば、被災地救援や日常生活にも、「恐怖」は足かせになります。政府の「安全」、あるいは「直ちには健康に影響は無い」という不誠実極まりない「安全神話」に乗せられば、しばらくしてから現れるとんでもない悲劇が待っています。
みなさん、開き直って楽天的になり、支え合って、最大防護を致しましょう。やるべきことは全部やって、危機を脱出しましょう。救援も生活もやるべきことは全部やって 切り抜けましょう。
正しい知識を獲得することが大切です。心構えは、「みんなで支え合う大きな利己主義」を持ちましょう。
テレビで流されているような、「汚染されたホウレンソウを一年分食べても平気です。」等という蛮勇は、無知であり人間を大切にする思想に欠けたものです。正しい知識を持ち、勇気を持って、賢く人間愛に基づく判断を致しましょう。
ガンマ線発射の放射性放射体が測定されたら、その背後にはたくさんのアルファ線放射体やベータ線放射体が一緒にいます。政府発表は「X線検診の被曝量と比較して・・」と言いますが、医療では被曝させるけれども被曝する危険以上の医療的メリットがあるという目的を持った被曝です。それだけに被曝限度も大きく設定されているものです。このようなメリットを伴う被曝と迷惑千万な受動被曝を比較すること自体が、まさに不遜な行為ではありませんか?
飛行機に乗った時の被曝といえば宇宙線による被曝です。日常受ける被曝には様々な原因がありますが宇宙線がかなり寄与しています。宇宙から飛んでくる放射線は透過力が高いものです。透過力が高いということは物質(身体)との相互作用が少ないということです。放射線が身体を突き抜けるということは、突き抜けた放射線は相互作用しなかったということです。内部被曝する場合は相互作用の非常に強い放射線(アルファ線、ベータ線)にも被曝することになります。比較する土台に共通性のない比較です。このような発表をする人には、内部被曝の危険性を勉強してくださいと言いたいものです。
がんになって亡くなるのは、1万人に一人くらいのものでしょうか(これは多分非常に低く判断していると思います《肥田舜太郎先生のチェルノブイリ放射性降下物被曝時の乳がん死亡調査》)?(それでも人口が1億人だと1万人!!!)これらの方は病名が判明してもその原因は決して解明されることがありません。決して国家的に補償されることがない被害です。それだけに、原子力発電をやめさせることしか報いる方法がありません。我々の根本的な責任です。閉じ込めることしか対応方法がない原子力発電は、本質的に未熟なテクノロジーなのです。
今は、みんな「貧乏くじは当たらない」と楽天的な願いを持ちましょう。しかし、貧乏くじを引くものは必ず出ます。それだけに必ず出る結果についての補償などをきちんと要求することです。それはあくま開き直らなくてはできません。あくまで楽天的に憲法の精神で、『個の尊厳』を守ることでやり遂げましょう。
今は楽天的に、悲観を先取りせず、悲劇の確率を最小限に食い止めることです。汚染が進む地域で「建物内退避」は危険の増幅です。内部被曝を拡大します。政府は、住民避難領域を実態に合わせて拡大・縮小すべきです。被曝弱者である乳幼児、妊婦、感染症罹患者等々の保護や避難をすぐ行うべきです。
汚染が深刻な場所で町を再建する「ど根性」を発揮している多数の市民の皆さんがいます。土壌汚染等々に対するさまざまな「郷土再建」にあらゆる知恵を出し合いましょう。
汚染が確認されている地域だけでなく、もっと広い範囲にいる人も放射能汚染の対応を致しましょう。完全防護はできなくとも、部分的でも可能な限り防護することです。
①マスクをしましょう。
②帽子を被りましょう。肌をむき出しにせず、外套は埃の付きにくいものがベター良いでしょう。家に入るときはマスクをしたまま、埃を払い、それから家に入りましょう。
③野菜等の食品はよく洗うことです。流水で洗いましょう。お湯でゆがけばもっと効果が上がるようです。この判断は放射性微粒子が表面にくっついているだけであると判断をしています。放射性物質を根から吸い上げて内部が汚染されている状態ではないと願っていますが、そうなったら廃棄しかありません。汚染されている水から放射性物質を取り除くことは一般家庭では難しいものです。
防護のことは知恵を出し合って致しましょう。
政府は、この事態を客観的に把握し対処できる組織を確保し、体制をとること。政府は正しい認識を持つこと、迅速に正確な情報を提供すること、人間尊重の立場から対処すること。
政府が客観的な科学的な認識を確保しない限り、原子力発電推進派のまやかしの安全性吹聴は続きます。
私たちの声はそろえましょう。
以上