深刻化する海の汚染
2011年 06月 11日
6月8日、原発の汚染水問題が福島第二原発にも飛び火。第二原発でタービン建屋などに溜まっている放射能汚染水3000トンを、東京電力が海へ投棄する案を水産庁や漁協に呈示したとされます。今回の放射線汚染水は、原発事故によるものではなく除染して投棄するといいますが、放射性セシウムを含む汚染水に変わりはありません。
これまでに福島第一原発から漏れだしたり投棄された放射能汚染水の内蔵放射能量は77京ベクレルとされ、福島県沖から茨城県沖の広範囲に海洋汚染が進みました。第一原発には、すでに10万5000トンを超える汚染水がたまっており、内蔵放射能量はおそらく100京ベクレルを遙かに超え、その中にはセシウムはじめ、ストロンチウムやプルトニウムが大量に含まれているとされます。
海洋の生物から高濃度のストロンチウムやプルトニウムが見つかれば、漁場の汚染は拡大し一層深刻化します。漁業者の出漁停止が長期化し漁場自体の長期間の放棄につながります。土地の除染はできても、海の除染はできません。
これまでの海の汚染を見ると、イギリス・セラフィールド再処理工場によるアイリッシュ海の汚染に関する京都大学の今中哲二先生の報告があります。1952年から1990年までセシウム137の放出量は4京1000兆ベクレルにおよび、チェルノブイリ事故で放出された量の2分の1から3分の1で、プルトニウムの放出量は610兆ベクレルで、長崎原爆プルトニウムの約2個分。その他の放射能を含め大変な量の放射能が、英国とアイルランドの間の狭いアイリッシュ海に放出されました。1970年代後半のアイリッシュ海での魚のセシウム137濃度は1kg当り1000ベクレルを越え、海草のルテニウム106濃度は1kg当り1万ベクレルを越えました。
セラフィールド再処理工場によるアイリッシュ海の汚染では、子供の白血病の増加やがんの多発が問題化しました。今回、福島で放出された放射性物質は既にセラフィールド再処理工場汚染の量をはるかに凌いでいます。
こうしたことを考えれば、東京電力のさらなる放射能汚染水の海洋投棄は、許されるものではありません。これを止めなければ、常磐沖は壊滅的打撃をうけ、汚染規模は日本沿岸を超え、太平洋全域に拡散する恐れがあります。
事故から3ヶ月。汚染水の処理がいっこうに進みません。注水し続けるかぎり、破壊された原子炉と建屋からは高レベルの汚染水が漏れだし、地下水に浸透し、海洋に浸出し続けます。仏アレバ社製の装置は前評判にも拘らずその機能は発揮もされていません。水棺路線が破綻してもなお、東京電力と国は次の手を打てずに混迷しています。人々の放射線被ばくは深刻化するばかりです。東京電力と国には、石棺への移行を含め、世界から知恵を借りるしか方法は残されていない。
原子炉から燃料棒を取り出して処理したスリーマイル島原発と同じ方法だと、廃炉費用は10年間で6兆円弱。燃料棒を取り出せず、原子炉をコンクリート製の「石棺」で覆ったチェルノブイリ原発の処理方法を採用すると、20兆円を要することになる。チェルノブイリ原発の事故処理には10年以上かかった。「試算で示した廃炉費用は、最低金額とみるのが妥当だ」(同センター)
石棺への移行をしないのは、この廃炉費用の問題があるのでしょうか。
そもそもメルトスルーした燃料を取り出すことは可能なんでしょうか。