表土改善事業の修正案と会派間質疑
2011年 08月 01日
わたしたち創世会は、表土除去の実施対象を拡大し、表土除去した施設と除去しない施設が存在するという、教育環境整備の不公平感を極力防ぎ、表土改善事業の充実を図るため、予備費5億円を組み替えて同事業にあて事業費を拡充する修正案を提案しました。
創世会の修正案は、全体で約55.6%の実施にとどまる市の原案に対して、保育施設、市立幼稚園、私立幼稚園、市立小学校のすべてで100%(市立中学校のみ約57%)、全体で約91.4%の実施になることを説明しましたが、賛成は創世会のみの7、他の会派は全員反対で25という数、残念ながら少数否決となりました。
市の補正予算に対する創世会の修正案、それに対する志道会(自民党系)の質疑と創世会の答弁の内容をご紹介します。少々長いですが、ご覧下さい。
●平成23年度いわき市一般会計補正予算(第6号)に対する修正案について
議案第2号 平成23年度いわき市一般会計補正予算(第6号)に対する修正案について、提案理由の御説明を申し上げます。
原案は、原発事故対策事業費のうち、空間線量が0.3マイクロシーベルトパーアワーを超える校庭・園庭の表土を除去する表土改善事業に 10億 1,151万 5,000円を計上しております。
これは、6月議会での「表土を取るというような対応はいわきにはそぐわないのではないか」とする教育長等の答弁からすれば、福島県による半額補助があるとはいえ、子どもたちや市民の要望に応えたものと評価されるところです。
しかしながら、いわき市は行政目標値として、空間線量0.3マイクロシーベルトパーアワーを「しきい値」にしてしまいました。我が国の一般公衆の年間許容限度は1ミリシーベルト、毎時0.11マイクロシーベルトであることからも、到底許容基準としては認めがたく、行政としての目標値は年間許容限度1ミリシーベルト、毎時0.11マイクロシーベルト以下とするのが本来の姿です。
空間線量0.3マイクロシーベルトパーアワーを「しきい値」にすることは、0.3マイクロシーベルトパーアワーに近い施設は除去しなくていいのか、除去した施設と除去しない施設とを差別することになるのではないか、教育環境の整備に不公平感が生まれるなど、利用する児童・生徒はじめ保護者の理解と合意を受けにくいものとなっております。
そもそも、放射線に「しきい値」はありません。空間線量0.3マイクロシーベルトパーアワーを「しきい値」にすることは、安全基準として認められるものでもなく、むしろ、子どもや保護者、市民の安全・安心を最優先にするならば、いわき市内全ての校庭・園庭の表土除去を実施すべきであり、市民のいのちと健康を守るために、行政は公平な対応をとることが必要であると考えます。
よって、表土除去の実施対象を拡大し、表土改善事業の充実を図るため、同事業の事業費を拡充する修正案を提案したものであります。
今回提案しました修正案は、歳出中、第3款民生費のうち、第2項児童福祉費 165億 3,786万 4,000円を 1億 1,206万 4,000円増額して 166億 4,992万 8,000円とすることにより、民生費を 494億 8,878万円から 496億 84万 4,000円とし、第10款教育費のうち、第1項教育総務費 25億 5,188万 5,000円を 3,344万 4,000円増額して 25億 8,532万 9,000円と、第2項小学校費 17億 8,116万 7,000円を 3億 3,947万 9,000円増額して 21億 2,064万 6,000円と、第3項中学校費 15億 4,436万 2,000円を 918万 3,000円増額して 15億 5,354万 5,000円と、第4項幼稚園費 4億 3,821万 7,000円を 583万円増額して 4億 4,404万 7,000円とすることにより、教育費 115億 9,341万 9,000円を 3億 8,793万 6,000円増額し、119億 8,135万 5,000円とするものであり、増額分合計の5億円については、第14款予備費 20億円を減額して 15億円とした分をもって充当するものであります。
増額分の合計5億円については、全て表土改善事業費を増額しようとするものであり、これにより、同事業費の合計額を 10億 1,151万 5,000円から 15億 1,151万 5,000円とするものであります。
試算したところによれば、いわき市内全ての校庭・園庭の表土除去を実施するためには、約17億円の事業費を要すると見込まれるところであり、本来は、その額をもって修正案とすべきところでありますが、予備費からの充当可能額や予算修正の限度などの制約がある中で、将来的には全ての校庭・園庭の表土除去を実施すべきことを念頭に置きながら、総合的に判断し、当面の措置として可能な限り最大限の範囲まで表土除去を実施すべきと考え、本修正案のとおり15億 1,151万 5,000円の事業費額を提案したものであります。
本修正案に基づく予算により事業執行を行っても、なお、表土除去を実施できずに残存する学校等については、今後、市当局において、福島県に対し補助金交付の要望を行うなど財源の確保に努め、事業費を確保できたならば速やかに表土除去を実施することとし、最終的には、市内全ての校庭・園庭について表土改善事業を実施すべきと考えます。
予備費の全額を表土改善事業費として用いることにより、予備費の使用可能額が大きく制約されることについては、緊急かつ不測の支出に備えるため、予備費の計上の必要性は認識しているところでありますが、ただいま申し上げましたとおり、今後において鋭意財源の獲得に努め、事業執行のための歳出予算を確保することにより、予備費への計上可能額も捻出されるものと考え、今般、喫緊の対応を要する表土改善事業費の増額を優先すべく、やむなく減額するものであります。
本補正予算原案の原発事故対策事業費について、「本市の放射線量は、全般的に低い水準で推移しているものの、一部高い線量が測定されている地区もあり、特に放射線量に対する感受性が高い子供達への影響に不安を感じる市民の方も少なくない状況です。そのため、モニタリングの継続・拡大や除染作業(清掃・除草等)の実施体制を整備するとともに、学校や通学路、地域・町内での放射線量低減の取組みなど、実現可能な原発事故対策事業を新たに展開する」との提案理由の説明がありました。
現在も収束の見通しの立たない東京電力福島第一原子力発電所の事故の下、市民の放射線被ばくをより低く抑えることは、市政喫緊の課題であり、このことの重要性と目指すところに関しては、市当局と議会との間においても、同じ認識を共有できるものと信じるところであります。
以上、議案第2号 平成23年度いわき市一般会計補正予算(第6号)に対する修正案について、提案理由の説明をさせていただきましたが、議員各位におかれましては、何とぞ本提案の趣旨に御賛同賜りますようお願い申し上げます。
●議案第2号いわき市一般会計補正予算(第6号) 修正案に対する志道会の質疑と創世会の答弁
1 議案第2号いわき市一般会計補正予算(第6号) 修正案について
(1) 提案理由等について
ア 執行部提案の議案第2号いわき市一般会計補正予算(第6号)の提案理由説明で、市長から、状況の確認をしながら表土除去等を進める旨の発言が為されているが、その施策の推進の体制との違いはどこにあるか伺います。
●答弁:(以下、創世会)
執行部提案と修正案の施策の推進体制の違いついては、子どもたちの安全・安心を最優先することで、執行部提案より修正案の方が速やかにしかも倍近く表土改善事業が進み、表土除去した施設と除去しない施設が存在する教育環境整備の不公平感を極力防ぐことができることです。
イ 既定の事業予算を増額することによる効果はどこにあると考えるか 伺います。
●答弁:
既定の事業予算を増額することによる効果については、具体的に、執行部提案の表土改善事業の実施率は、保育施設は約59%、市立幼稚園は約67%、私立幼稚園は約34%、市立小学校は約61%、市立中学校は約57%となり、全体で約55.6%にとどまります。
これに対し、修正案の表土改善事業の実施率は、保育施設、市立幼稚園、私立幼稚園、市立小学校のすべてで100%、市立中学校のみ約57%ですが、全体で約91.4%の実施率となることから、増額効果は著しいものがあります。
ウ 事業実施に当たって、どのような効果を期待しているか伺います。
●答弁:
事業実施による効果ついては、空間線量毎時0.3μSvを「しきい値」にしないことで、内部被曝の拡大と長期的な低線量被曝という環境の中で、より子どもたちの被曝を低減する効果を期待できます。
エ 市当局がその実施基準を0.3μ㏜/hとした事とは、齟齬が生じますが、その実施に当たっての根拠は何か伺います。
●答弁:
実施に当たっての根拠ついては、放射線防護の基本として、国際放射線防護委員会も採用している、どのような線量であっても放射線被曝は生体に有害であるとする、「放射線にしきい値はない」という立場に立って対処するということです。
オ 0.3μ㏜/h以下の数値を示している場所についての事業実施については、どのような効果を期待するか伺います。
●答弁:
0.3μ㏜/h以下の数値を示している場所の効果ついては、現状よりも除染が進むことで、児童・生徒、保護者の安心感がひろまり、市民の安心感向上、市政への信頼感の回復に寄与することができます。
カ 本市において児童生徒が学校で過ごした時間は、3月11日以降どれ程あったと捉えているか伺います。
●答弁:
3月11日以降児童生徒が学校で過ごした時間ついては、どれほどあったかについて、計数的に把握してはおりません。
キ 子どもたちのこれまでの被ばく量をどれ程と捉えているか伺います。
●答弁:
子どもたちのこれまでの被ばく量ついては、計数的に把握してはおりません。ちなみに、3月13日から7月10日までの、いわき市平における空間線量率の積算は、1,253μ㏜となります。
ク 国の示した放射線被ばくの基準には、年間で1~20m㏜と幅がある事をどう捉えているか伺います。
●答弁:
国の示した放射線被ばくの基準ついては、国際放射線防護委員会が示した事故収束時の数値です。福島原発事故が収束していない現段階でこれを適用することが果たして妥当なのか、意見の分かれるところと認識しています。
ケ 比較的線量が高い福島市や郡山市その周辺域と本市と比べた時、あるいは市域全体で見たときの市内各地点での空間線量自体に大きく差異がみられますが、基準とされる数値を下回っている校庭や園庭に当該事業を実施していくことについての考え方をお示し頂けますか。
●答弁:
基準とされる数値を下回っている校庭や園庭に当該事業を実施していくことについての考え方については、子供たちの安心・安全を最優先として、問題のある「しきい値」にとらわれず、すべての児童・生徒に公平に対処することが、市政執行の基本的態度とすべきものと考えています。
コ 現在の放射線量と、3月11日以前に存在していた自然由来の放射線量との差異については、どのように考えているか伺います。
●答弁:
現在の放射線量と自然由来の放射線量との差異については、現在の放射線量が福島原発事故によって環境中に放出された人口放射性物質によるものです。環境中の放射性核種の分析、除染を含めて、汚染された環境でどのように生活していくのか、3.11以前と全く違う世界で、行政としては、市民の被曝をより少なくすることを最優先にして、市政執行にあたる必要があります。
(2) 財源等について
ア 修正案の積算根拠を伺います。
●答弁:
公立・へき地保育園は12箇所から40箇所、私立保育所は16箇所から27箇所、公立幼稚園は12箇所から18箇所、私立幼稚園は13箇所から38箇所、公立小学校は46箇所から77箇所、実施箇所が増え、中学校は25校実施となります。
イ 私立の中高一貫教育を行っている中学校に対しての手当てはどのようにしていくのか伺います。
●答弁:
当初より原案には入っておりませんがこれも手当すべきと思います。 修正案は、予備費からの充当可能額や予算修正の限度がある中ですので、今後、市当局において、福島県に対し補助金交付の要望を行うなど財源の確保に努め、事業費を確保出来たならば速やかに表土除去を実施することとすべきと考えます。
ウ 福島県より交付される表土除去事業に関わる福島県補助金の福島県における財源は何か伺います。
●答弁:
「福島県 原子力被災者 子ども健康基金」の特別緊急除染事業 学校・公園等の公共施設や通学路等の線量低減事業等の表土緊急改善事業費です。
エ 財源を予備費に求める事の論拠を伺います。
●答弁:
市長の発案権を侵害しないためには予備費を充当することが妥当と考えたためです。
オ 地方自治法第217条の規定をどのように解釈されているか伺います。
●答弁:
自治法217条の規定は、僅少な額でその度に補正予算を編成する煩雑さを避けるために、予備費を計上すべきことを定めていると解釈され、想定外の多額の支出が発生した場合は、予備費ではなく補正予算によるべきであり、既に支出が見込まれるものは、予備費ではなく、具体的事業費に計上すべきであると考えます。
カ 既に計画的な事業実施が想定される状況で、予備費を事業費に充当することは、その規定から外れることにならないか伺います。
●答弁:
計画的な事業実施を損なわないためにこそ、予備費からの充当が適当であると考えます。
キ 減額された予備費は、今後、どのような手法をもって補てんしていくのか伺います。
●答弁:
財政調整基金・繰越金で充当出来ると考えております。
ク 予備費からの充当によって、当面の津波等による被災者支援に対する施策展開への影響は無いのか伺います。
●答弁:
予備費で対応すべき被災者支援は、縮小傾向にあるので影響はないと思われます。
ケ 予備費については、額面15億円の残がある事になっていますが、被災者に対する支援策のために既に13億5千万が執行されており、現実には1億5千万円ほどしか残余金がない状況であることに鑑み、今、進められている避難所対策経費や被災児童生徒の通学スクールバス借り上げ費用等については、どの様に対応するお考えか伺います。
●答弁:
まずは予備費1億5千万円で対応し、その上で支出を確定させて事業として計上させるべきと考えます。
コ 執行部提案の議案第2号いわき市一般会計補正予算(第6号)が原案の通り可決し、この修正案が可決されなかったときの子どもの健康被害の発症状況には、どの程度の差異が出ると見込まれるか伺います。
●答弁:
将来の子どもの健康被害の発症状況は修正案を可決された方がよりよくなると見込まれます。先ほども申しましたが、むしろ児童・生徒、保護者の安心感がひろまり、市民の安心感向上、市政への信頼感の回復に寄与することができます。
*最後まで、ご覧いただきありがとうございました。