県民健康管理調査でいいのか
2011年 08月 04日
福島県は、6月27日から警戒区域や計画的避難区域の浪江町、飯館村、川俣町等の住民2.800人を対象に先行調査を実施しています。このうち122人について、放射線医学総合研究所でホールボディカウンターによる内部被曝線量の測定を行い、「健康に影響はない」としています。
全県民を対象とする「県民健康管理調査」は二つあり、県内各自治体と調整する説明会が8月中旬に開かれます。ひとつは、基本的に3月11日時点での県内居住者を対象に実施する「基本調査」で、3月11日~25日の行動記録を中心に自分で質問表に記入する自記式の方法で、被曝線量の推計評価を実施し、その結果を通知するというもの。8月以降、問診票を配付する予定です。
二つ目の「詳細調査」は、避難区域等の住民と基本調査で必要と認められたものを、調査会場や医療機関での検診方式により、質問紙調査、身体測定、血液検査、尿検査等を行うものです。これと並行して、事故時に0歳〜18歳までの全県民36万人を対象に、甲状腺超音波検査を実施するとしています。
福島県によるとこれらの調査により、データベース化され、健康状態の把握と県民の健康相談や支援でフォローされると説明されていますが、3月11日~25日の行動記録による被曝線量の推計評価が妥当なのか、詳細調査の対象県民が限定され差別化されているのではないか、データベース化が先行しデータは積み上がっても県民の健康を守るために本当に役立つのか、そもそも健康を守ることが前提になっていないのではないか、等の疑問が県民の間から出されています。住民の健康を守ることより研究のための調査が透けて見えるからです。福島県民はモルモットではありません。
「県民健康管理調査」について、いわき市では、いわき保健所が所管することになります。
しかし、いわき市の役割はというと、調査票を市民に発送する住基台帳の名簿の提供、県の意向と調査の実施を市民に広報せよというもので、実際に市民に対応し市民の健康を守らねばならない基礎自治体の役割を実に軽視した内容となっています。
これでは、県民の健康管理とは名ばかりのデータベースづくりであり、県民の健康を守るためのフォロー体制等考えていないことが明らかです。
そもそも、今回の福島原発事故による放射線被曝は、「福島県 原子力被災者 子ども健康基金」などという、付け焼き刃的な対応で打開できる状況ではありません。まして「100ミリシーベルトまでは安全」などという人がリーダーでは、福島県民は浮かばれません。人類史上類例のない長期的な低線量被曝に対して、どのように人々の健康を維持していくのか、未来を担う子どもたちをどう守っていくのか、その手だてを日本国家の総力を挙げてつくり出していかねばなりません。
その点で、まずは、東京電力と国よって、強制的にヒバクシャにされた福島県民に対する恒久的な健康維持と社会的救済の法的措置が必要なのです。「福島原発被曝者援護法」を制定して、差別することなく200万県民に「被曝者健康手帳」の交付を行ない、定期的な健康診断による健康管理の実施、診療医療行為の無償化、社会保障の実施等、まず補償していくべきです。