防災まちづくり及び原子力災害対策
2011年 08月 25日
現在、いわき市が復興計画の策定を進めていることから、いわき市議会は、7月29日に復興・復旧に関する「緊急提言書」を提出しました。今回は、その後の検討の結果、中・長期的な課題について第1次提言として取りまとめ、市民の声を届け、議会としての基本的な考え方を明らかにしようとしたものです。
「東日本大震災からの復旧・復興に向けた第1次提言書」は、大きく3項目です。
1 生活再建支援・居住環境整備
2 地域産業再生・復興及び雇用対策
3 防災まちづくり及び原子力災害対策
このうち、第三分科会で集約された「防災まちづくり及び原子力災害対策」は、以下のようなものです。
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3 防災まちづくり及び原子力災害対策
⑴ 災害に強いまちづくり
ア 防災・減災力の強化
市民の生命・財産を守り、子供から高齢者まで安全・安心に暮らすことのできるまちをつくるため、防災に加え、減災の概念も取り入れたまちづくりを進めること。
イ ハザードマップの早急な見直し・作成
(ア) 今回の震災被害の状況を踏まえ、国・県と連携しながらも、地域住民が主体的に見直し・作成にかかわる、市オリジナルのハザードマップを作成すること。
(イ) 津波被害エリアにおける避難場所及び避難経路を見直すとともに、避難所を含め、ハザードマップの内容について、市民への周知を徹底すること。
(ウ) がけ崩れ・土砂崩れ・地すべりによる住家被害を未然に防ぐため、急傾斜地などの危険箇所を早急に調査し、ハザードマップに反映させること。
ウ 宅地・団地を造成する際の基準・規制の見直し
(ア) 宅地・団地におけるがけ崩れや液状化現象による被災の状況を調査し、被災者への生活支援をはじめ、地質調査費用の助成制度の構築を図ること。
(イ) 被災地及び危険箇所に対する支援に必要な法律の整備を、国に要請すること。
エ いわき市地域防災計画の改善・マニュアル化
(ア) 今回の震災を通して、計画通り「できたこと」、「できなかったこと」を検証し、「できたこと」については必要に応じて強化するとともに、「できなかったこと」については原因を究明して改善を図り、震災の教訓を活かした実効性の高い計画とすること。
(イ) 災害時の人的・物的支援の協力や民間企業が管理・運営する生活基盤施設の復旧状況の情報など、迅速な情報収集を可能とするため、民間企業との災害協定の締結を検討すること。
(ウ) 震災時、十分には機能しなかった自主防災組織の活動状況を検証し、市民力(マンパワー)が発揮できるように組織を見直すこと。
(エ) 原子力事故への対応項目である「第5編 個別災害対策 第2章 放射性物質等対策計画」の内容を検証し、早急に見直すこと。
⑵ 災害に対応し得る地域力の再生・強化
ア 災害時に求められる市民意識の醸成
非常時に求められる、人のつながり、助け合いの意識を市民一人一人が高めることができるよう、防災訓練等を通じ、意識の醸成を図ること。
イ 防災・避難訓練の徹底及び体系化
多様な災害に備えるため、地域・時間ごとに異なる内容の防災訓練を行うとともに、実際に防災サイレンを吹鳴させるなどの現実的な訓練を行うための仕組みづくりを進めること。
ウ 自主防災組織などの防災団体をはじめとする各種地区団体と市の関わり方の見直し
震災時、地域で組織されている各団体がとった災害への対応状況を把握・分析し、今後の災害発生時の対応に反映させること。
エ 高齢者などの地域における災害時要援護者への対応の強化
これまでの形にとらわれない、地域の実情に即した災害時要援護者に対する支援体制を再構築し強化すること。
⑶ 防災基盤施設などの高度整備
ア 防災センターの整備などの公共施設の高度化
(ア) 本庁舎・各支所などの公共施設を結ぶ非常用通信網のバックアップ体制を強化すること。
(イ) 高度化とは対極の位置にある汲み取り式トイレなどを再評価し、今後の災害対応に反映させること。
(ウ) 非常災害時には一元的に対応できる拠点となり、平常時には防災意識普及施設などとして多目的に活用でき、また、食糧・水などの物資の備蓄機能や自家発電機能、貯水機能などの非常時にも対応できる高度機能を有した耐震構造の防災センターの設置を検討すること。
(エ) ハザードマップの見直しにあわせ、民間施設の活用を含めた避難所の見直しを図ること。
(オ) 社会福祉施設等に入所する障がい者や高齢者などの社会的弱者が、施設ごと全員避難することができるような規模・機能を持つ避難所について検討・整理すること。また、透析患者の避難についても、医療機関との連携を密にした万全の体制をとること。
イ 市災害対策本部と各地区災害対策本部の情報伝達の連携強化
防災行政無線及び衛星電話について、災害時に確実に運用できるようにするため、今回の震災時の運用状況を把握し検証を行うこと。また、実際に防災行政無線を用いた本庁と各支所間の定期的な訓練体制を確立し、情報伝達の連携強化を図ること。
ウ 公共施設への避難所機能の付加・導入
公共施設の改築・新築時には、被災者支援及び避難所機能の付加・導入を図ること。
⑷ 復旧・復興に要する財源の確保
ア 国・県に対する復旧・復興に係る財政支援措置等の積極的かつ継続的な要請
(ア) 特区制度を活用して復旧・復興事業を積極的に実施すると共に、事業実施に必要な財政支援措置について、国・県に積極的かつ継続的に要請すること。
(イ) 仮設住宅や一時提供住宅については、時限的措置の経過後(2年後)を見据えて対応するよう、国・県に要請すること。
(ウ) 市債に係る利子補給等の財政支援措置を国に要請すること。
(エ) 被災自治体として、また、被災者受け入れ自治体としての所要経費の財政的支援を国・県に要請すること。
イ 既存事業の見直し
歳出の抑制を図るため、市みずから既存事業の見直しを行い、さらなる財源の確保に取り組むこと。
⑸ 市の取り組み及び組織体制
ア 情報が錯綜した原因の究明と今後の各種計画への反映
各地区災害対策本部の情報伝達方法について検証し見直すとともに、指揮系統の主体を整理し、各種計画に反映させること。
イ 地域における団結力の醸成
地域における団結力の差が被災者支援の差に直結しないよう、地域の団結力醸成を図るための支援を行う仕組みづくりを進めること。
ウ 災害時における職員配置の適正化及び職員の意識の向上
(ア) 震災発生時の各部署の対応状況を検証し、災害時に柔軟に対応できる横断的な組織体制の確立を図ること。
(イ) 市災害対策本部と各地区災害対策本部の機能・役割を明確にし、市災害対策本部に人材・権限が集中しない体制を構築すること。
(ウ) 災害業務に従事する職員の業務時間や作業量を平準化させて職員の身体的・精神的ストレスの負担軽減を図る体制を構築すること。
(エ) 災害発生時には、交通基盤施設の被害状況や職員の通勤手段等を考慮し、職員が住居の最寄りの災害対策本部・避難所などで被災者支援業務に従事できる体制を構築すること。
(オ) 災害発生時にも強い使命感と責任感を持って冷静に対応できる職員を育成するため、定期的に研修会を開催するなど、職員の教育体制の充実を図ること。
エ 原子力発電所事故に対応する組織体制の構築
福島第一・第二原子力発電所の状況などの情報収集及び市民に向けた情報の提供など、また、国・県及び東京電力株式会社との連絡調整を執り行う原子力発電所問題に特化した部署を設置し、原子力災害に適切に対応すること。
オ 専門的知識技能を有するボランティアの活用について、市も積極的に対応できる体制の構築を図ること。
⑹ 原子力発電所事故への対応
ア 事故の早期収束・情報開示
(ア) 原子力発電所に近接する自治体として、東京電力・県との三者安全協定若しくは覚書を締結し市民の安全の確立を図ること。
(イ) 東京電力との新たな連絡通報体制(ホットライン)の構築など、法改正を含め連絡通報体制の確立について国に要請すること。
(ウ) 福島第一・第二原子力発電所の現状及び事故収束に向けた作業状況を注視し情報の収集に努めるとともに、それらの情報をリアルタイムに市民に提供できる仕組みを早急に構築すること。
(エ) 福島第一原子力発電所の事故発生時の国・県・東電の初期段階の行動を検証し、今後の災害対応に反映させるよう要望すること。
イ EPZ(緊急時計画区域)等の設定の検証と見直し
EPZ(緊急時計画区域)等の設定範囲の検証を行い、その見直しについて国に対し要望すること。
ウ 適正かつ速やかな補償実施の要請
原子力発電所事故に起因する被害への適正かつ速やかな補償と損害賠償への支払いの実施を国に要請すること。
エ 原子力発電所に依存しない意志の表明
エネルギー転換を推進し、原子力発電所に依存しない社会を目指す、本市としての意志を表明すること。
⑺ 放射性物質への対応
ア 除染の実施
市民が安心して生活できる生活空間に戻すため、早急かつ公平に除染を開始すること。
イ 放射線に対する情報の積極的な提供
放射線に関する情報を市民に積極的に提供するため、広報紙をはじめ、セミナーや出前講座を開催するなど、広報・情報提供体制の充実を図ること。
ウ 内部被曝低減への対応
(ア) 内部被曝から市民を守るため、水質、土壌、食物に係る放射線量の測定を強化すること。
(イ) ホールボディカウンターを確実に設置するとともに、子供の内部被曝の測定など多様な検査需要に対応できるよう検査体制の強化を図ること。
(ウ) ストロンチウム90やプルトニウムなどの多様な放射性核種を早期に検出し、内部被曝から市民を守るため土壌調査など各種調査を早急に実施すること。
エ 市民の健康管理・被曝量低減に対する対応の強化
市民の長期的健康管理については、市が責任をもって県と連携して推進させるとともに、(仮称)原発事故被曝者援護法などの特例法の制定、被曝者健康手帳の交付及び定期通院・医療行為の無償化・社会保障などを国の責任において行うことを要請すること。