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実情無視の農地除染

福島県主催の「農用地除染に伴う反転耕実演会」が2月2日午後、福島第一原発30キロ圏に隣接するいわき市大久町小久集会所と大久町小久字火之口地内の水田で開催され、いわき市内の農業者、農業団体はじめいわき市や周辺町村等から約150人が参加した。県の開催目的は、「除染対策について、農用地では表土の剥ぎ取り技術の実証や放射性物質の吸収抑制技術の開発等を国等と連携し進めてきた」が、除染技術の普及を加速させるため実演会を通じて、今後市町村が実施する除染作業を円滑に推進するとしている。
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公民館では「除染をねらいとする『反転耕』等について」県の担当者が説明。続けて、DVDをみながら全農の担当者が「水田の『反転耕』について説明があった。1台1千万円前後のトラクターに特殊機具を付けた大型農業機械を使い、表層土と下層土を30センチほど入れ替える「反転耕」に対して、詰めかけた農業者からは「30~45センチの深さまで耕す馬力は大丈夫なのか」「ゼオライト散布の補助は、農協の2分の1とどう違うのか」「農地除染はやってくれるのか」「市の除染計画はいつできるのか」「農業者に先の見通しはあるのか」など、切実な質問や意見が出された。県の担当者からの回答は、除染計画は市町村任せ、補助制度も使い勝手が悪く、農業の見通しもたてられない対応であった。
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水田における「反転耕」の実演は、大型機械4台を使って各メーカーによって行なわれ公開された。トラクターに特殊機具プラウを付けた「反転耕」や同じくバーチカルハローによる砕土・整地・鎮圧、レーザーレベラーによる均平作業。
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多くの農家が見守る中での「反転耕」作業に、農業者からは深堀によって硬盤層が露出した状況に溜息が漏れた。 1日測定の水田の放射線量は0.3~0.42マイクロシーベルトで、反転耕後の測定では0.23~0.3マイクロシーベルト。
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環境省は放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、市町村が除染計画を策定し除染を行うとしている。環境省は、効果的に空間線量が下げられるという理由で、昨年作付けした水田・畑地について、特殊機具を付けた大型農業機械による表層土と下層土を30~45センチ入れ替える「反転耕」と、約30センチの深さまで耕す「深耕」に限り補助対象としている。一方、いわき市はの除染計画は、30キロ圏内を優先しており、一般住宅地周辺の計画もこれからで、農用地については未だ緒に就いていない現状だ。しかも、いわき市の30キロ圏内は、山間地の狭隘な耕地も多く大型機械が入りにくい場所が多く、大型農業機械の導入による作業は実情を無視したものになる。また、昨年作付けした水田・畑地についても大型農業機械の導入などは最初から経済的困難が予想されるし、大型機械を使った特定の方法しか除染費用が補助されないともいう。放射性物質を吸着する「ゼオライト」の購入費用についても、大型機械を使った特定の方法の時にしかを助成しない。
国も県もどっちの方を向いて、仕事をしているのか。農業者の苦境を考えているのか。実情を理解しているとは思えない。
by kazu1206k | 2012-02-03 16:55 | 農水商工業 | Comments(0)