双葉断層による直下型地震の危険性
2012年 03月 01日
東北大学地球物理学部の趙大鵬(Zhao Dapeng)教授(地震学)ら日中の研究チームは、昨年4月11日に福島第1原発から南西60キロの距離にあるいわき市の井戸沢断層で起きた地下6.4キロを震源とするマグニチュード7.0の誘発地震に着目して調査した結果、「いわきと福島原発両地区の地下に構造上の異常が示され、いわきで大きな地震があったことから、福島原発で同じくらいの大きな地震が起こる可能性がある」とし、双葉断層などが活動しやすくなって強い直下型地震の危険性が高まっていると指摘、将来起こりうる大規模地震に備えて、福島原発での安全対策を強化すべきであると警告した。ただ地震発生の時期までは予測できないとしている。
趙教授らは、東北地方の地殻やマントルに地震波が及ぼす影響を、地震波断層撮影と呼ばれる、医療用のCTスキャンと同様の原理で地層を調べ、地震波の種類やセンサー間を伝わる速度から地中の断面図を構築する技術を用いて調べた。
それによると、井戸沢断層はじめ、いわき市内の低活動性活断層が、この地震の揺れで活性化した可能性があること。いわき地域では昨年3月11日から10月27日までに、M1.5以上の揺れが2万4108回観測されたが、2002年6月3日から昨年3月11日までの期間に同規模の揺れは、わずか1215回しか観測されていない。その要因は、太平洋プレートが、ほぼ東北全域の地下に横たわるオホーツクプレートの下に沈み込む際、発生する摩擦熱で水が上昇し、活断層周辺が滑りやすい状態となっているとし、さらに東日本大震災後、いわき市の断層がオホーツクプレートから受ける圧力の方向が大きく変わったとしている。
●「2011年いわき地震(マグニチュード7.0)及び福島原発地域の断層撮影」(Tomography of the 2011 Iwaki earthquake (M 7.0) and Fukushima nuclear power plant area)の概要は、以下の通り。
概要:2011年いわき地震(マグニチュード7.0)および福島原子力発電所立地点および周辺地域における地殻および上層部マントルの高解像度断層撮影画像は、有限周波数法および放射線断層撮影法の両者を用いて数多くの高品質到達時間を反転させることによって得られた。いわき地震およびその余震は、地震波速度およびポアソン比の強度なばらつきを伴って起こった。いわき震源域および福島原発の下層で低速度および高ポアソン比が顕著であり、このことは、東北日本の下層にある沈降太平洋スラブの脱水によって放出された流体を反映しているのかもしれない。2011年東北沖地震(マグニチュード9.0)が上部に重なるオホーツク・プレートに静力学的な応力転移を引き起こし、そのため、東北沖主震直後、いわき震源域で地震活動が著しく増進した。本調査の結果は、いわき地震が東北沖主震に起因する太平洋スラブ脱水による流体上昇および応力変異を引き金とするものであったことを示唆している。いわき震源域および福島原発下部の構造類似性は、将来における潜在的な大規模地震に備えて、原発用地における安全対策を強化すべきであることを示唆している。
概要サイト(英文)
http://www.solid-earth.net/3/43/2012/se-3-43-2012.html
原文
http://www.solid-earth.net/3/43/2012/se-3-43-2012.pdf
*日々の新聞 第216号 2012年2月29日が、特集しているので参照されたい。
『趙先生の地震のはなし』 http://www.hibinoshinbun.com/