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3.10シンポ「福島原発事故被害者の権利宣言」

「私たちは、これ以上奪われない、失わない」。福島原発震災2年目を前に、シンポジウム「福島原発事故被害者のいのちと尊厳を守る法制定を求めて」が、3月10日午前10時半から午後3時過ぎまで、郡山市民交流プラザの会場溢れる参加者のもとで開催されました。主催の脱原発福島ネットワーク・ハイロアクション福島原発40年実行委員会・子どもたちを放射能から守る福島ネットワークを代表して、ハイロアクションの宇野さんが主催者あいさつ。
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講演は「福島原発震災被害者の援護のための特別立法について―広島・長崎・ビキニ―ヒバクシャの悲劇を繰り返さない」と題して、日本弁護士連合会、東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部原子力PT事務局長の秋元理匡さん。
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各地からの報告として、福島市渡利地区、福島市大波地区、二本松市、飯館村、南相馬市、浪江町、いわき市、県外避難者、更に、福島の子どもたちを守る法律家ネットワークの大城弁護士、福島原発震災情報連絡センターの松谷静岡市議などがスピーチ。
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パネルディスカッション「福島原発震災被害者のいのちと尊厳を守る法制定を求めて」は、佐藤和良(脱原発福島ネットワーク、福島原発震災情報連絡センター)をコーディネーターに、秋元理匡さん(日弁連・東日本大震災原子力発電所事故等対策本部原子力PT事務局長)、石丸小四郎さん(双葉地方原発反対同盟)中手聖一さん(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク)、宇野朗子さん(ハイロアクション福島)がパネラーとなって進められ、最後に「3.10福島原発事故被害者の権利宣言(案)」を満場の拍手で確認して閉会しました。

以下に、講演「原発被害者援護のための特別立法制定運動の意義と課題」と、「3.10福島原発事故被害者の権利宣言(案)」を掲載します。

●原発被害者援護のための特別立法制定運動の意義と課題
2012年3月10日    弁護士 秋元 理匡

1 本件事故の特徴
⑴ コミュニティの破壊
広範,継続的,予測不可能(時間的にも,空間的にも,内容的にも)
全面的かつ全面的被害
生活,事業,労働=人間らしい生活の基盤,生と命を受け継ぐ場所を壊された
被害と加害の非互換性,損害の回復困難性
⑵ 被害者の置かれた状況
困難,困窮,差別,分断
⑶ 放射能被害の特徴=科学的に解明されていない部分がある
ア 「科学的に分からない=ない」(不可知論)をとってはならない。
 →これなら,調べなければ対策をとらなくていいことになる。
科学の不確実性を率直に認めた上で,政策(社会的合意)をつくることの重要性を自覚することが大切。
→科学の厳密性ではなく,民主主義の問題。
→ひとりひとりの世界観・価値観の尊重。
正しい情報の流通と自由な言論の重要性。
イ 常に安全方向で考える余地を残す。
「予防原則」
…新技術などに対して,人の健康や環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合,科学的に因果関係が十分証明されない状況でも,規制措置を可能にする制度や考え方のこと。
国連環境開発会議(1992年)リオ宣言 原則15
「環境を保護するため、予防的方策(Precautionary Approach)は,各国により,その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な,あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には,完全な科学的確実性の欠如が,環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない」。
⑷ 公害(天災ではない!!)
被害の規模は未曾有でも,加害と被害の構造は未曾有ではない
地域独占企業(東京電力)の利益追求の過程で起きた重大な環境破壊。
さらに国家権力が原子力発電を推進していた。
→加害責任の明確化
汚染者責任の原則
公害では,加害企業は常に責任を曖昧にしようとする。
宇井純『公害の政治学』(1968年) 「公害の起承転結」
…公害発生(起)→原因究明(承)→反論提出(転)→中和(結)
アイリーン・美穂子・スミス「水俣と福島に共通する10の手口」(2012.2.27毎日夕刊)

2 原発被害者の立法運動のための基礎作業
⑴ 立法事実(被害実態=法律が必要であることの裏付け)の解明
⑵ 被害者要求の積み上げ
・実態調査と情報開示 ・避難・滞在とその後の生活支援
・被ばく防止措置 ・健康診断・健康管理 ・差別防止措置 等々
⑶ 人権侵害の発見(理論化の第一作業)=全人格的被害
居住・移転の自由,職業選択の自由,財産権,生存権
幸福追求権,人格の形成・発展の権利

3 原爆被爆者のたたかいの教訓
⑴ 経過
1945.8.6,9 原爆投下
1945.9.6   トマス・ファーレル准将(マンハッタン計画副指導官)
「原爆の放射能で苦しんでいる者はいない」
1945.9.9 プレス・コード
1952.4.28 サンフランシスコ条約発効
1952.8.6号『アサヒグラフ』
1954.3.1 ビキニ環礁水爆実験
原水爆禁止運動が高揚→被爆者が声をあげ始める→原爆医療法制定
⑵ 原爆被害者援護法の四つの柱
(日本原水爆被害者団体協議会「被爆者の基本要求」)
① ふたたび被爆者をつくらないとの決意をこめ、原爆被害にたいする国家補償をおこなうことを趣旨とする。
② 原爆死没者の遺族に弔慰金と遺族年金を支給する。
③ 被爆者の健康管理と治療・療養を全て国の責任で行う。
④ 被爆者全員に被爆者年金を支給する。障害をもつものには加算する。
⑶ 被爆者運動にみる加害責任明確化の要求=国家補償
被害は被害者のせいではない
加害者の財布で被害の枠が決められるものではない

4 日弁連の立法提案
2012年2月16日付け「福島の復興再生と福島原発事故被害者の援護のための特別立法制定に関する意見書」
⑴ 意見の趣旨
① 生活再建支援制度の創設
② 警戒区域の住居についての損失補償制度の創設
③ 健康管理調査と無償医療の実施
④ 被害者が被ばくしているかを知る権利を認めること
⑤ 避難・残留について、被害者の自己決定権を尊重した、十分な支援策
⑥ 差別防止措置
⑦ 警戒区域設定解除に当たっては、公正な判断がなされるための第三者機関の設置
⑧ 国から東京電力に対する求償等の措置の検討
⑨ 情報共有
⑩ 二重生活家庭の維持の支援を行い、避難者の受入れ自治体は住居の提供や雇用の創出・斡旋に努めること。
⑵ ルールの手掛かり
「国内強制移動に関する指導原則」
「自然災害時における人々の保護に関するIASC活動ガイドライン」
安全,支援等に関する情報アクセス,支援の差別,家族の離散,個人の身元に関する書類の消失・破壊,強制移住,危険・非自発的や帰還・再定住,財産の不返還等が人権課題とされている。
→国際人権法上,被害者支援は国の責務
⑶ 国家責任の根拠
ア 国際人権・人道
イ 政策責任=原子力開発を推進したことに対する責任(法的・社会的)
⑷ 抵抗のあらわれ

5 被害者のたたかいの道
被害者こそが法=正義の担い手
その動きを社会に広げる運動の重要性

以  上


●3.10 福島原発事故被害者の権利宣言
 
2011年3月11日、地震と津波に続いて起こされた、東京電力福島第一原子力発電所の大事故により、私たちはみな突然に、3・11前の暮らしを根こそぎ奪われました。
被害の大きさと深さにもかかわらず、私たち被害者は、必要な情報から遠ざけられ、総合的な支援策が講じられないまま、不安と被曝受忍の中で分断され、その傷を深くしています。
福島県民だけでも避難を余儀なくされた人は15万人といわれ、放射能汚染地では住民が復興の糸口を見いだせないまま放射能汚染への日々の対処を強いられ、人としての幸福と尊厳ある暮らしの権利を奪われ続けています。
終らない原発震災は、2年目に入ります。
私たち福島原発事故被害者は、いのちと尊厳を守るため、以下のことを宣言します。

私たちは、東京電力が引き起こした福島第一原発事故の被害者です。
この人災で奪われたものはすべて、加害者が「原状回復」を基本に、完全賠償するべきです。
私たちには、尊厳をもって幸福な生活をする権利があります。
私たちには、安全な地で暮らす権利があります。
私たちには、福島にとどまる、離れる等の選択を尊重され、生活を保障される権利があります。
私たちには、危険を回避するために必要なあらゆる情報へのアクセスを保障される権利があります。
私たちには、被ばくによる健康障害を最小限にするための、保養・疎開を含めた防護策と、健康障害の早期発見および適切な治療を保障される権利があります。
私たちは、自分や家族、コミュニティの将来に重大な影響を与える決定過程に参加する権利があります。

私たちは、これ以上奪われない、失わない。

私たちは、故郷にとどまるものも、離れるものも、支えあい、この困難を乗り越えていきます。
私たちは、かけがえのないひとりひとりの幸福と、差別なき世界を創造し、未来世代に対する責任を果たし、誇りを持って生き延びていきます。

私たち、東京電力福島第一原発事故被害者は、国に対し、以下のことをもとめます。

1 国は、国民の安全が確保できないにもかかわらず、国策として原子力政策を推進した責任を認め、謝罪・補償を行うこと。
2 国は、未曾有の大地震と津波および複数号機の原子力発電所過酷事故という複合災害の被害者の生活再建、健康確保、および人権擁護について、一義的な責任を負うことを明確にし、以下のような施策を行うための、恒久法を制定すること。

被害者の生活再建支援
3 被害者に対する生活給付金、一時金等の生活再建支援制度を創設すること。
4 警戒区域の被害者に対し、損失補償制度を創設し、被害者が、東京電力による損害賠償と損失補償制度のどちらかに請求できるようにすること。
5 広域避難をしている被害者とその家族に対して、避難先での雇用の斡旋、家族の面会のための遠距離交通費の助成など、家族の統合を支援する施策をとること。
6 広域避難者台帳をつくり、避難者が各種の支援等を平等にうける権利を保障すること。

健康の確保
7 原発事故に由来する被曝量が年間1ミリシーベルトを超える汚染地域は選択的避難区域とし、避難をする場合の各種の支援を行い、住民に避難の権利を保障すること。
8 上記区域に暮らす住民に対し、定期的な保養の権利、除染期間中の避難の権利を保障すること。
9 特に、上記区域に暮らす子ども、妊婦、障がい・疾病をもつ者などの被曝弱者が、安全な地域に居住できるよう、緊急に必要な措置をとること。
10 健康障害の予防と早期発見のために、無料健康相談、精度の高い無料定期健康診断を実施すること。
11 全被害者のWBC検査および必要な内部被曝の指標を得られる検査を実施すること。情報は正しく本人に伝えられ、記録されること。
12 対象疾病を設けず、無料の医療を提供すること。通院支援を行うこと。これらは避難地域でも同様の支援を受けられるようにすること。
13 精度の高い検診、医療体制を確立すること。
14 「健康被害の予防、早期発見、治療」を目的とした、適切な健康管理調査の実施と公開を行うこと。調査のデザイン、実施に関して、当事者が参加の機会を保障されること。
15 原発事故被害者健康管理手帳を発行し、健康に関する情報を本人が保管できるようにすること。
16 内部被曝を予防するため、汚染されていない食物と水を確保し、精密な検査データをリアルタイムに公開すること。

防災・危機管理体制の整備
17 公正な立場から、人々のいのちを最優先に掲げた第三者機関を作り、刻々と変わる事故現場と放射能拡散の状況をリアルタイムで情報を住民に伝え、余震による倒壊など状況悪化が起きた場合に、速やかに、被害可能性のある地域の住民を避難・防護できる体制を早急に確立すること。

決定過程への当事者の参加の保障
18 制度の運用・制度の見直しにおいては、被害当事者の参加を制度的に保障すること。

2012年3月10日 
シンポジウム:福島原発事故被害者のいのちと尊厳を守る法制定を求めて 参加者一同
by kazu1206k | 2012-03-10 23:00 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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