チェル支援法から福島原発被曝者援護法へ
2012年 07月 01日
調査訪問団は、チェルノブイリ原発事故後、被災者への支援法を制定し、自国民の保護にあたってきたウクライナ政府と地方行政府、研究者、活動者などから直接話を伺い、福島原発事故によって被災し、被曝した人々の援護法の制定に役立てようと、ウクライナの実情を調査するために、5月9日から14日の日程でウクライナを訪問しました。
報告会では、調査訪問団の趣旨を説明後、約15分間、静岡の壷阪道也さんに編集して頂いた調査訪問団の動画を上映しました。
その後、わたくしから調査先、調査項目、ウクライナの教訓、日本と福島における課題など概要を約1時間報告。休憩をはさみ、福島原発震災情報連絡センターのアドバイザーで、コーディネーター兼同行者の独協医科大学准教授の木村真三さんから、今回のコディネートのポイント、ウクライナでの被曝による疾病の現状、ウクライナから学ぶ保健医療上の被曝対策などのお話を頂き、質疑応答を行いました。
最後に、6月21日に国会で可決された「東京電力福島第一原発事故の被災者支援法」が被曝者援護法の橋頭堡となったことを評価しつつも、「仏作って魂入れず」にならぬよう、
医療費負担の減免は大人も含めて全被災者に適用すること、
支援対象地域は追加被曝線量が年間線量1mSv以上となる地域を全指定すること、
事業計画の策定にあたっては被災当時者の意見を反映する制度的保障を担保すること、
健康管理手帳の交付を求めることなど、
個別法の制定や予算化にむけて、実効性ある制度の拡充を被災当時者から求めていこう、署名運動などをはじめていこう、と提案し閉会しました。
以下、当日配布致しました、わたくしの調査報告書のまとめの部分だけ、抜き出します。
*まとめーチェルノブイリ支援法から福島原発被曝者援護法へ
ウクライナでは、被災者支援と汚染地域の定義という、二つの大きな柱によって原発事故被災者支援の法整備がなされ、事故処理作業者と被災者に対して、汚染地域の放射線管理、食料の配給、住居の提供、公共料金・医療・保養などの支援が行われてきました。
しかし、ソ連邦崩壊によるウクライナの財政危機と財源問題、それによって社会保障実施の困難性と社会保障措置の切り捨て問題の発生、国家による汚染地域指定見直しと地方自治体での社会保障維持のための国際的連携活動など、調査の結果、ウクライナが直面している課題もまた浮かび上がってきました。
被災者支援と汚染地域の定義という、ウクライナの二つの大きな柱を踏まえ、日本において、原発事故被災者支援、原発被曝者援護法の制定。さらに、その内容について原発事故の国家責任に基づく原発被災者への国家補償の明文化、また、被災者支援は一時金的補償ではなく恒久的社会保障を盛り込むべきこと、など法の基本原則として確立すべきです。
6月21日に国会で東京電力福島第一原発事故の被災者支援法が可決されました。
正式名称は、「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進関する法律案」 です。
支援対象者は(1)避難区域(4月に再編される前の福島県内の警戒区域と計画的避難区域)に住んでいた人(2)一定基準以上の放射線量が計測された地域に住んでいたか、住み続けている人。自主避難者も対象に含め、国が住宅の確保や就業を支援する。(2)の地域は福島県内に限定せず、放射線量の基準は地元との協議で定めるため、県外でも放射線量が比較的高い地域の住民が対象となる可能性があります。対象者のうち子供や妊婦の医療費は、国の財源で免除または減額する。また被曝の可能性がある子供の健康診断を生涯にわたって実施。事故の影響で家族と離れて暮らす子供への支援や、自主避難者の帰還なども国負担とするものです。
この法律は理念法、プログラム法のため、今後、政府が地域指定、事業計画の策定などに取り組むことになります。課題は、医療費負担の減免が子どもと妊婦に限定されている点、支援対象となる「一定の基準より高い放射線量」地域の設定も政省令に委ねられる点、具体の事業計画策定にあたって被災当時者の参加制度が曖昧である点などです。
このため、医療費負担の減免は大人も含めて全被災者に適用すること及び支援対象地域は追加被曝線量が年間線量1mSv以上となる地域を全指定すること、並びに事業計画の策定にあたっては被災当時者の意見を反映する制度的保障を担保することなど、実効性ある制度の拡充を被災当時者の観点から求めていく必要があります。