除染の限界、住民の生存権守れ
2012年 10月 08日
環境相に指示した内容は、(1)除染や廃棄物処理に当たる環境省の出先機関「福島環境再生事務所」に権限を移譲し作業を迅速化(2)関係府省の連携強化(3)進捗状況を住民に情報提供とされ、環境省は10月中に対策を取りまとめて公表する方針だという。
楢葉町は、8月10日に警戒区域が解除となり、政府により20ミリシーベルト未満の「避難指示解除準備区域」。環境省の「特別地域内除染実施計画」によって、住民の帰還に向けて学校など子どもの生活圏での除染作業、道路や水道などのインフラの復旧状況を見極め段階的に縮小することになっている。いま町のあちこちで、環境省の「福島環境再生事務所」所管のゼネコンのJV企業体による除染が始まっている。財物補償もままならないのに、何が何でも帰還させようという政府の意図がみえる。


政府が、20ミリシーベルト未満の「避難指示解除準備区域」に住民の帰還を強制することは、被曝の強制であり、明らかな生存権の侵害だ。「法治国家」でこんなことが到底許されるものではない。
窓ひとつ、隣りを気にして生活なければならない仮設住宅で先の見えない困難な生活に喘いでいる避難住民。汚染された大地への帰還を迫る政府と行政の理不尽さ、利権化した除染への不信、破壊された日々の暮らし、怨嗟の声が深まっている。
除染しても空間線量が下がらないところに帰還はありえない。汚染された大地で農業はじめ産業がどう成り立つのか。誰がどのように生産活動を行い、誰が流通させ販売し、誰が消費するのか。帰還して生活が成り立つのか。
1兆5千億円を超える除染事業費は壮大な無駄遣いにならないのか。それよりも、住民が次の生活に進むことができる一律財物補償を早急に行うことが必要だ。政府や行政には、被災住民の生存権を守る義務がある。

