捜査尽くさず不起訴!卑劣な東京地検への移送
2013年 09月 10日
また、福島地方検察庁に告訴した事件は、福島地方検察庁で処分するという事前の約束を破り、公表1時間前に東京地方検察庁に移送し、東京地方検察庁が処分をしました。これは、不起訴の場合、福島検察審査会に申し立てるという告訴団の方針をみて、福島検察審査会への申し立てを妨害し、被害当時者である福島県民による不起訴が適切かどうかの検察審査をさせない卑劣な行為です。強制捜査を行わず、証拠も積み上げないまま、東京電力などの被告訴人に温情的なれ合い捜査を進めてきた検察庁は、最後まで被害者を泣かすつもりなのでしょうか?
①地震調査研究推進本部による2002年段階の長期評価では、福島県沖を含む三陸沖から房総沖にかけて、明治三陸地震の規模の津波地震が発生する可能性があるとされたが、この長期評価自体に予測を裏付けるデータが十分にないことに留意すべきと付記され、津波評価技術では福島県沖海溝沿いに津波地震を想定しないこととされていた。
②東電が2008年に津波高さ15.7メートルと試算していた点についても、試算結果の数値どおりの津波の襲来を具体的に予見することが可能であったとは認められない。
しかし、地震調査研究推進本部の長期評価が津波評価技術に取り入れられなかったのは、東京電力などが規制機関も虜にしていたからであり、福島県沖海溝沿いに津波地震を想定しないという判断こそ、何の科学的根拠もありません。また、想定された6メートルを超える津波の確率は、相当高く、東京電力は想定に基く対策を先送りにし、何の対策も講じなかったのが問題であり、対策を講じて不十分だったわけではないのです。
検察の処分理由の骨子は、東京電力や規制機関など被告訴人らの主張をなぞったものに過ぎず、強制捜査をしないままに捜査を終えた限界は明らかです。東京電力の原子力改革特別タスクフォース報告でさえ、結果を回避できた可能性を認めているにもかかわらず、東京電力は一切の対策をとらなかったのであり、予測されたレベルの地震と津波対策を講じたにもかかわらず、それが不十分であったわけではないのです。津波対策を免罪した上で、予見可能性及び予見義務違反、結果回避可能性及び結果回避可能性義務違反はないとする検察官の処分を認めることはできません。
告訴団は、検察の不起訴に対して、「わたしたちは挫けない!原発被害者は生きるために正義を求める!」と、近く検察審査会へ審査申し立てを行うとともに、福島原発事故について、新たな告訴・告発を準備していきます。
■武藤類子団長 談話■
検察による「全員不起訴」の判断に対して大きな驚きと憤りを感じています。
私たち福島原発告訴団が告訴・告発した33名+1法人全員が不起訴とは信じ難いことです。
私たちが何度も何度も要請した「強制捜査」はとうとう行われませんでした。
果たして検察は捜査を尽くしたといえるのでしょうか。
検察には、被害を受けたものたちの悲痛な叫びが届かなかったのでしょうか?
たくさんの命、家、生業を奪い、地域や家族を引き裂くという、言葉には尽くし難い甚大な被害を招いた電発事故の責任が、誰も問われないのですか? 日本は法治国家と言えるのでしょうか?
汚染水や甲状腺検査結果など被害は更に拡大しているのです。
この事故の原因を明確にし、責任を問うことは、被害者が正当に救済され、新たな日本社会と新たなエネルギー政策の構築のために、何としても欠かせないことなのです。
検察は被害者の声を無視し、その責務を放棄したのだと思います。
検察の判断に強く抗議するとともに、私たちは「検察審査会」への申し立てをします。
■検察の不起訴処分の報に接して、福島原発告訴団の声明■
わたしたちは挫けない!
原発被害者は生きるために正義を求める!
福島原発告訴団は、昨年6月11日、福島地方検察庁に対して、東京電力の勝俣恒久前会長・清水正孝元社長、元原子力安全委員会の班目春樹委員長ら計33人を、東京電力福島第一原発事故で大量に放出された放射性物質により福島県民などを被曝させ傷害を与えた業務上過失致傷罪などの容疑で告訴し、また避難中になくなった双葉病院の患者さんや原発内での作業中に亡くなった労働者や被曝した人について業務上過失致死罪の疑いで告発した。続いて昨年11月15日には、全国から1万3千人余が告訴・告発をした。これに対して東京地方検察庁は、本日、全員不起訴の処分を公表した。
わたしたち福島原発告訴団は、たった一度の家宅捜索さえ行わず、強制捜査もないまま、全員不起訴の処分が決定されたことに対して、果たして捜査は尽くされたのか、そして徹底捜査の上に下された判断なのか、根本的な疑問を持たざるを得ない。
本件処分は、人類史上かつて経験したことのない最大級の公害事件であるにも拘らず、我が国における法と正義が貫かれたのか、法の下に被害者が救済される道を開いたのか、歴史の審判に耐えうるものとは到底思われない。
翻って、福島原発事故は、事故以来2年5ヶ月が経過したが、今なお収束の見通しさえ立っていない。被害者は、放射能汚染と被曝の脅威を前にして、15万余の人々がふるさとを追われ、家族や地域共同体が分断され避難生活を強いられている。当たり前の日常生活を奪われたまま、生存権をはじめとする基本的人権が侵害され、疲弊と困難のただなかにある。
原発震災発災の2011年3月11日、福島第一原発の建屋の中で帰らぬ人となった東京電力社員、避難の最中次々と力尽きた双葉病院の50名の患者さん、津波被災地の沿岸部で福島原発事故による避難指示で救助できなかった多くの命、相馬市や須賀川市など各地で、生業を奪われ絶望の果ての多くの自死、これらはすべて原発事故による死者だ。
かけがえのないいのち。亡くなっていった人々の無念を想うと涙が溢れる。放射能汚染と被曝の脅威にさらされ、離ればなれになった家族、分断された共同体、小児甲状腺がんなど健康被害の現実を想うと、悔しい限りである。本件不起訴処分は、疲弊と困難を極めながら、各地でもがき、涙をふきながら生き抜こうとするわたしたち福島県民を始めとする被害者を愚弄し、その生きる道に立ち塞がる邪悪な試みである。
検察は、傷ついた被害者の心に寄り添い、巨悪を眠らせないという基本姿勢を忘れたのか。
検察は、福島県民はじめ被害者の窮状を理解しているなら、そして、この国の国民の信頼に足る確たる法治国家の番人たろうとするならば、不起訴処分を撤回しなければならない。
福島原発告訴団は、挫けることなく、被害者が生きるために、正義を求め、「検察審査会」に即刻申し立てをする。この国に生きるひとりひとりが尊敬され、大切にされる新しい価値観を若い人々や子どもたちに残せるように、手を取り合い、励まし合い、立ち向かっていく。
福島原発告訴団