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東電破綻処理、事故収束廃炉庁の設置

 東京電力の発表でも毎時1000万べクレルの放射性物質が環境中に放出され、放射能汚染水の漏えい、海洋放出は深刻な事態となっている。賃金はじめ労働条件・放射線防護と健康管理など、多重下請け労務構造の下での劣悪な労働環境下にあって、汚染水対応での「素人」作業員の初歩的ミスや被曝量超過による熟練作業員の現場離脱が指摘される中で、東電の対応力、当時者能力は低下し続けている。
 「国が前面にたつ」というが、その実、原子力規制委員会・規制庁は再稼働審査に主力をおき、福島第一原発の現場に規制庁職員は10名、資源エネルギー庁がJビレッジに8名という現状で、国の東電任せに変化はない。東電自体、福島1000人に対し柏崎1200人の体制で福島に人員を回したのはたったの20人。国が凍土壁建設に470億円予算化したというものの、当の東電は、柏崎刈羽原発の再稼働のために3200億円以上を投入している。
 東電は、既に経営破綻状態にありながら、大手金融機関など株主と債権者を守るための原子力損害賠償支援機構法によって破綻を免れ、実質的国有化によって、この2年8ヵ月、延命してきた。国の資金援助=「国家的粉飾」で債務超過を回避させ、国が前面に出るという汚染水対策470億円の支出ですら、結局は国民に負担を押し付けたものだ。
 財務省は、事故処理のコスト負担を渋り、経産省も発送電分離などの電力改革をきらい、銀行の損失回避を行なっている。とどのつまり、国民の税金と利用者の電気料金に負担を転嫁する、東電破綻回避の銀行救済スキームである。廃炉、賠償、汚染水処理、除染で数十兆円にのぼる費用が見込まれる中で、東電には、三井住友銀行・みずほ銀行・三菱東京UFJ銀行など金融機関からの長期借入金3兆5千億円、社債残高4兆4千億円の残高がある。
 東電は「廃炉センター」なる社内分社化を画策し、自民党の体制見直し案は (1)汚染水対策などの専門組織を設ける社内分社化(2)資本を切り離す完全分社化(3)独立行政法人化などだが、いずれも東電の破綻処理を免れるためのマヤカシで、東電延命策である。
 東電を破綻処理しなければ、銀行の貸し手責任も国の株主責任も問われず、経産省と東電の事故責任、原子力行政の失敗の責任もうやむや、利権が温存され、国民だけが負担を半永久的に強いられるという状況になることは必至だ。
 いま原発事故収束及び廃炉にむけて、必要なことは何か。事故収束及び長期にわたる廃炉過程に対応するためには、東電の破綻処理を行なうこと、国が国策として原子力を推進してきた結果、福島第一原発事故を引き起こした責任を認め、事故処理と被害に対する責任ある体制を確立すること、である。それが事態を解決するための必要条件である。
 チェルノブイリ原発事故対応のひそみにならえば、ウクライナなど三国が政府機関として、「非常事態省」を設置して、今日まで長期にわたり、事故処理から被害者の生活支援、社会保障まで一元的に対応してきたように、国の一元的体制の確立が望ましい。イギリスでの、イギリス核燃料公社の債務を引き受け、稼働を終えた原子力発電所の解体と使用済み核燃料の処理を管理する「原子力廃止措置機関」の例もある。
 いまこそ、福島原発事故収束から廃炉に対応する「事故収束廃炉庁」を政府機関として設置すること、その下に、事故収束及び廃炉に向けて士気を高め、長期的に作業員を確保する、事故作業員の公務員化などの法整備を検討すべきである。
 このままでは、原発事故被害者はおろか国民も救われない。

『はんげんぱつ新聞』428号(2013年11月)
反原発講座『政府は「事故収束廃炉庁」の設置を』
佐藤和良(脱原発福島ネットワーク)
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by kazu1206k | 2013-11-18 21:01 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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