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こんなところで諦めるわけにはいかない

『 震災、そして原発過酷事故から3年を経るわけですが、3月11日の午後7時3分に当時の菅総理が原子力非常事態宣言を発した時、ほぼメルトダウン近しとの思いがよぎり、わたしたちが25年間、脱原発を標榜して運動をしてきたことが水泡に帰したなと思った瞬間でありましたが、この事態を見届けることを含めて市民に避難を呼び掛けつつ、自分は残るしかない、と思ったのがあの時の感想です。
 あの時に事故の収束はもちろんですが、結局は被曝の世界にわたしたちが入っていくという中で、どんなふうに生きていくのか、ということが、とにかく避難せよっていうことと同時に、それぞれそのことが問われたんだというふうに思います。これはわたしたち直接被害を受けた者たちばかりではなくて全国の人々がそういうところに立ったんだと思います。

 結局、この3年間福島県内で行なわれてきたことは、「避難なき除染」であり、「治療なき検査」でありました。事故が無かったことのように進められて、今度の平成25年度の政府の補正予算、あるいは26年の当初予算を見ると、東日本大震災と原発の事故対応では早期の帰還、帰還促進っていうところにすべてが集中されていまして、その予算取り、枠取りであって、一方では原子力規制庁から年間被曝線量20mSv以下についてはとにかく帰還させるという方向で現実的にすべてがセットされて動いているということであります。
 都路も、浪江までも帰すなんてことになるかどうかですけれども、20ミリまで帰すということはとんでもない話です。これは常識的にありえないのですけれども、日本政府はそれをやると言っているわけですから、当初から言ってきたように、わたしたちは棄てられた民だと。難民どころではないのだと。棄民なんだというのが現状の実態であります。
 ですから「原子力ムラ」というのは弱体化したのでもなく、焼け太ってさらに強大に振る舞っているっていうのが実態でありまして、除染に2兆円、3兆円と投入しているわけですけれども、それこそゼネコンも含めまして、「原子力ムラ」をさらに延命させ、肥大化させる役割のためにこそ、除染費用が投入されているわけです。政治家、議員が何やってるんだという話もありますけれども、結局、自国民を毀損するというのか、国民を守らないという政府国家が本当に続くのかなあと思います。やっぱり日本は自滅の道をひた走っているんじゃないかな、と危惧します。

 地震の問題でも南海トラフ地震などが極めて接近しているわけです。10年、あるいは20年のうちにそれが起るであろう、あるいは富士山爆発も近いであろうと。これは平安時代の貞観地震津波の再来であるという今回の東日本大震災のことを考えれば、歴史的にそのような評価もできるわけですから、そういう中で依然として再稼動というようなことを言い続ける政府に我々は日々苛まれ、悩まされ続けているわけです。それが何か考えているならいざ知らず、何も考えていないでただ押し付けているという状況でありまして、腹立たしいというのが福島県民の率直な思いだと思います。
 結局、汚染水の放出の問題も「0.3km平方をブロックしている」とか、「アンダーコントロール」と言い続けてオリンピックを招致する、国際的な虚偽発言でやっているという、これこそまさに福島原発事故自体を隠蔽するという、日本国家の非常に悪辣な企みです。わたしは「それどころではないんじゃないでしょうか」といいたい。福島県民としては、はっきり言ってオリンピックが開かれるというニュースに、「そんなことやっているどころじゃないでしょう」と。実際、4号機の燃料集合体の取り出しが間に合って移動が終ればいいですが、例えば共用プールに移して乾式貯蔵にある程度もって行くというようなことが間に合えばいいですけれど、その前に燃料プールが倒壊するというような規模の地震が来て、プールの冷却材が喪失するというようなことになったらどうでしょうか。その時が例えば東京オリンピックとマッチングしたらどうなるんでしょう。これは危機管理上も国際的なリスクを抱えるということであって、国家のリーダーとしてはちょっと考えにくい発想です。そういう非常に甘い発想でオリンピック開催、それを虚偽の発言で招致するというようなことはやっぱり許し難いことだというふうに福島県民の大方の人は思っているだろうと思います。

 必要なのはやっぱり早く事故を収束して欲しいというのが、福島県民の願いであります。作業員の皆さんが日々苦闘しています。熟練の皆さんが被曝線量がとにかく累積してサイトを離れざるをえないということで、除染作業の方に回ったりしているわけであり、非常に構内の作業がたいへんな状況になっています。本当に言われているような40年間の廃炉作業なんていうことができるのかどうか。これ自体がまた、砂上の楼閣のような状況であります。ですからそういう意味では、国として「事故収束・廃炉庁」というような国家機関を設立して、国家公務員として廃炉作業の作業員の方を、健康管理も含めて、社会保障も含めてキチンと対応していくということを長期的に担保するような態勢を取って初めて「国が前面に出る」とか「国が責任を持つ」ということの中身が具体的になってくるのではないかと思います。

 そういう意味で、今やられていることは、福島県民に我慢を強いる、従属を強いる、ことです。心のストレスなどといいますが、現に外部的な社会的な要因によって圧迫を、ずっと忍従を強いられていくということであって、そこのところが取り除かれていけば、自死する方を少なくすることも可能であろうかと思うんです。今のままでは大量の自死者が出ても不思議ではない、厳しい現状にあるのです。今、応急仮設住宅に住まわれて3年経って疲弊している皆さん、それから借り上げ住宅に住んでも、とにかく自主避難して県外に行っても県内に行っても、住替えができないということの負担というのは、これまた大きなものなのです。それをカバーするために「原発事故子ども・被災者支援法」ができたはずなのに、それがまったく骨抜きにされてまったく作動しない、法的に予算も何も担保されない、というようなことが平気で行なわれております。

 告訴団としても、こんなところで諦めるわけにはいかないと。東京検察審査会で「起訴相当」を2回出して起訴まで行きたいということなんです。本当に、心の底から。東京の世論にアピールしていかなきゃならないっていうことです。3月1日に「被害者証言集会」を豊島公会堂で、実際に証言をします。旧警戒区域からの強制避難者、それから自主避難者、そして県外に行っている方、あるいは除染作業員の方、それから県外で被曝した方、特に東葛地区と言われている千葉県も含めた関東の被曝者の方も発言をされます。ですから、この東日本全体が汚染されて被曝したという実態をやはり共通の経験として、この被曝の実態を明らかにしていくことによって検察審査会にわたしたちの声を届けていきたいというふうに考えております。』

 2014 年2月 18 日 福島原発告訴団 ~出版記念メディア懇談会、福島からの発言~
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by kazu1206k | 2014-03-11 20:10 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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