脱原発の貴重な出発点ー図書新聞にアサツユ書評
2014年 04月 12日
書評のタイトル、見出し。
脱原発を志向する人のための貴重な出発点――福島の脱原発運動の歴史から読み取れる、苛酷事故への必然的な道程と、かかわってきた人たちの無念さ
評者◆竹内雅文
アサツユ 1991‐2013――脱原発福島ネットワーク25年の歩み
脱原発福島ネットワーク編
七つ森書館
アサツユ 1991−2013
脱原発福島ネットワークの歩み
脱原発福島ネットワーク:編
定価:3,800円+税/発行年月:2014年01月
A5判/並製/912ページ
ISBN978-4-8228-1493-9 C3036
●内容紹介
「2011年3月の福島原発震災、福島第一原発の過酷事故以来、1000日が過ぎました。この原発事故を何とか防ごう、危険な原発を何とか止めよう、としてきた福島県内各地の市民グループのネットワーク」(「まえがき」より)が発行するニュースが「アサツユ」です。1991年7月の創刊準備号から2013年12月発行の267号まで、22年分を収録!
●もくじ
【巻頭対談】「脱原発福島ネットワーク」の軌跡
佐藤和良(福島県いわき市議会議員)
武藤類子(福島原発告訴団団長)
司会・澤井正子(原子力資料情報室)
アサツユ 1991−2013
●まえがき
まえがき──佐藤和良(脱原発福島ネットワーク)
原発のない社会をめざすネットワーキングニュース「アサツユ」は、1988年にスタートした「脱原発福島ネットワーク」のニュースレターです。1991年7月の創刊準備号から、22年間毎月発行され続け、最新号の2013年12月まで267号を数えます。
2011年3月の福島原発震災、福島第一原発の過酷事故以来、1000日が過ぎました。この原発事故を何とか防ごう、危険な原発を何とか止めよう、としてきた福島県内各地の市民グループのネットワークが「脱原発福島ネットワーク」でした。
「脱原発福島ネットワーク」は、1988年の創設以来、福島第二原発3号機の再循環ポンプ破損事故と再稼働反対・廃炉要求、福島第一原発7、8号機の増設反対や軽水炉でプルトニウムを燃やすプルサーマル計画に反対する「ストップ・プルサーマルキャンペーン」の結成および県民署名運動の展開、原子力発電所の地震対策や津波対策、老朽化対策、度重なる事故やトラブルなどの原因追求、東京電力と毎月交渉する活動や監視活動を25年間続けてきました。
また、原発を増やさずみどりの地球といのちを守ろうと「うつくしま風のまつり」などのイベント、国内外の専門家を講師にした講演会や学習会、東京電力の不正事件を受けて福島県のエネルギー政策転換を市民レベルから追求した「エネルギー政策市民検討会」の開催と報告書刊行、福島第一原発1号機営業運転40年を前にしたハイロアクション福島原発40周年実行委員会の結成の呼びかけ、そして、3.11原発震災後の被曝の最小化、「原発事故被曝者援護法」の制定と「原発震災集団告発」の提起など、市民の恊働の力を発揮するために、活動を続けてきました。
この「アサツユ」22年間の縮刷版には、これまでのわたしたちの活動が刻まれております。原発事故を止めようとした福島県民の活動の軌跡です。
福島原発事故の責任を問う告訴では、スマトラ沖地震後、2005年、東京電力に対して要請書を提出し約半年にわたり地震津波対策を求めた事実の証拠として「アサツユ」を検察側に提出し、東京電力が「事故の可能性を予見できた」「事故回避の可能性があった」ことを主張しました。このことからも、「アサツユ」22年間の記録を市民の共有財産として残す、時代的歴史的価値はあるものと思いました。
福島原発事故は、今なお、収束の見通しさえたたず、子どもたちをはじめ14万をこえる人々がふるさとを追われ、家族や地域共同体が分断されたまま、避難生活を強いられています。被害者は、放射能汚染と被曝の脅威にさらされながら、心身の疲弊にさいなまれています。
被曝後の世界を生きる、わたしたちは、ひとりひとりの人間としての再生、生きる権利の確立をめざして活動を続けています。これを手にしたおひとりおひとりが、わたしたちとつながっていくことを願ってやみません。
2014年1月
●プロフィール
脱原発福島ネットワーク(ダツゲンパツフクシマネットワーク)
福島県内各地の市民団体のネットワーク、1988年結成。以来、福島第二原発3号機の再循環ポンプ破損事故や東京電力の燃料輸送容器データねつ造問題、圧力容器・炉心シュラウド・再循環系配管等のひび割れ隠し問題、格納容器漏洩率検査データ改ざん問題、制御棒破損問題など福島第一原発、第二原発での数々の事故や東京電力の不正行為を追及。福島第一原発3号機でのプルサーマル計画や第一原発の7、8号機増設計画に対して反対し、県民投票条例の制定運動やエネルギー政策市民検討会の実施、東京電力・行政との交渉を続けるなど粘り強い運動を持続してきた。
2011年、「原発集中立地県での日本最大の電力会社である東京電力との闘いという困難な条件の下での20年余にわたる運動の継続に敬意を表し、今なお運転再開に向けて画策する官僚・東京電力との今後の闘いに期待して」多田謡子反権力人権賞を受賞。
ネットワークニュース「アサツユ」を毎月発行。