起訴へ!院内集会&東京地検を包囲し上申書提出
2014年 09月 30日
13時30分、弁護団と副団長告訴人は、東京地検で佐藤・古宮両検事と面談して上申書提出(末尾に掲載)。終了後、記者会見を行った。
youtube「2014.9.30 福島原発告訴団 起訴へ! 9.30院内集会&東京地検包囲行動」の記録画像。http://www.youtube.com/watch?v=dh8mghQOwlU&feature=youtu.be
●上 申 書
平成26年(2014年)9月30日
最高検察庁
検事総長 大野恒太郎殿
東京地方検察庁
検事正 青沼 隆之殿
告訴・告発人代理人
弁護士 河合 弘之
弁護士 保田 行雄
弁護士 海渡 雄一
目次
はじめに
第1 被疑者勝俣,武黒,武藤,小森は本件事故のような深刻な災害を予見することができたし,現実に予見していた
1 福島原発事故が取り返しのつかない大災害であること
2 原発事業者には安全性の確保のために極めて高度な注意義務が課されている
3 審査会が重視した津波想定に関する事実
4 議決は武藤武黒らの土木学会への検討依頼は時間稼ぎと断定
第2 花火工場と原発では予見可能性を基礎付ける会社担当者の能力にも注意義務にも大きな違いがあること
第3 吉田調書の意義
第4 本件は検察が刑事起訴し,公判を遂行するべき事件である
1 再度不起訴にすれば強制起訴によって事件は指定弁護士に委ねられる
2 原発事業者の刑事上の注意義務のレベルについて決めるのは裁判所の役割である。
3 検察は,その総力を挙げて事件の真相に迫る立証を遂行するべきである
第5 結論
はじめに
告訴告発人らは,既に平成26年(2014年)8月8日付で,徹底した捜査と検察自らの手による起訴を求める上申書を提出した。
本書面においては,本件について,検察による起訴が可能であり,また起訴がなされるべきである理由について,前回の上申書をさらに敷衍して,意見を述べることとする。
第1 被疑者勝俣,武黒,武藤,小森は本件事故のような深刻な災害を予見することができたし,現実に予見していた
1 福島原発事故が取り返しのつかない大災害であること
平成26年(2014年)7月23日付東京第五検察審査会の議決(議決書は7月30日付,以下,本件議決という)は福島の人々の被害の重みを理解して出された画期的なものである。本件議決において,事故は現時点でも未だ収束していないことを前提にして,事故に遭われた方々の思いを感じるとともに,様々な要素が複雑に絡み合って発生した大事故について,個人に対して刑法上の責任を問うことができるのかという観点も踏まえつつ,検討を行ったとしている。
告訴人らは,8月8日東京地検あてに上申書を提出し,検察官は,東京電力に対して直ちに捜索を含む強制捜査を実施すべきであること,被疑者勝俣,武黒,武藤,小森について,再度取調を行うべきであること,検察審査会の議決に示された市民の良識に耳を傾け,不起訴の判断を見直し,被疑者勝俣,武黒,武藤,小森について起訴することなどを求めた。
2 原発事業者には安全性の確保のために極めて高度な注意義務が課されている
議決は,まず原子力事業者が業務の遂行の過程で負っている注意義務が高度のものであることを認めている。「原子力発電は一度事故が起きると被害は甚大で,その影響は極めて長期に及ぶため,原子力発電を事業とする会社の取締役らは,安全性の確保のために極めて高度な注意義務を負っている。最高裁判所における伊方原発訴訟に対する判決は,原子力発電の安全審査について『災害が万が一にも起こらないようにするため』に行われるものとしている。」「今回の福島第一原発の事故は,巨大な津波の発生が契機となったことは確かであるが,そもそも自然災害はいつ,どこで,どのような規模で発生するかを確実に予測できるものではない。今までの原子力発電所を襲った地震をみても,平成17年8月の宮城県沖地震では,東北電力女川原子力発電所で基準地震動を超える地震動が観測され,平成19年7月の新潟県中越沖地震では,東京電力柏崎刈羽原子力発電所で基準地震動を超える地震動が観測されている。根拠のある予測結果に対しては常に謙虚に対応すべきであるし,想定外の事態も起こりうることを前提とした対策を検討しておくべきものである。」としている(議決書3頁)申立人らは,検察審査会に提出した上申書の中で,二つの論拠をもって,電力事業者に課される注意義務が高度のものであることを主張した。一つ目が元検察と法務省幹部である古川元晴氏による「なぜ日本では大事故が裁かれないのか」の公表である(甲1号証『世界』の2014年6月号)。この論文が,検察審査会の決定の理論的根拠を与えたのである。
もう一つの論拠が,さる5月21日の福井地裁の大飯原発差し止め判決である。原発の運転差し止めをめぐる訴訟において,3・11後初めての司法判断である。判決は,原発に求められる安全性について,福島原発事故のような事態を招くような「具体的危険性が万が一でもあれば」,差し止めが認められるのは当然だと述べている。これは,未来の原発運転を認めるかどうかについての判断であるが,現実に発生した事故の刑事責任を考えるときにも,ほとんどそのまま適用できる。
3 審査会が重視した津波想定に関する事実
審査会が,被疑者勝俣らを起訴相当であると判断するにおいて,重視した事実の経過は以下のとおりである。
平成14年(2002年)7月,政府の地震調査研究推進本部(推本)は,福島第一原発の沖合を含む日本海溝沿いでマグニチュード8クラスの津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生すると予測した。
平成18年(2006年)9月,原子力安全委員会が耐震設計審査指針を改定し,津波については極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても,安全性が確保できることが求められた。
平成19年(2007年)11月ころ,東京電力の土木調査グループにおいて,耐震バックチェックの最終報告における津波評価につき,推本の長期評価の取扱いに関する検討を開始し,推本の長期評価を踏まえ,明治三陸地震の波源モデルを福島県沖海溝沿いに設定するなどして津波水位を試算したところ,平成20年(2008年)3月,福島第一原発の敷地南側においてO.P.+15.7mとなる旨の結果を得た。
被疑者武黒は,平成20年(2008年)2月の「中越沖地震対応打合せ」で,福島第一原子力発電所の想定津波高が上昇する旨の資料を確認するとともに,参加者から「14m程度の津波が来る可能性あるという人もいる」という発言を受け,「女川や東海はどうなっている」という質問をしている。
平成20年(2008年)6月,土木調査グループから被疑者武藤栄らに対してO.P.+15.7mの試算結果が報告された。被疑者武藤栄は,非常用海水ポンプが設置されている4m盤への津波の遡上高を低減する方法,沖合防波堤設置のための許認可について,機器の対策の検討を指示した。
平成20年(2008年)7月,被疑者武藤栄から土木調査グループに対し,耐震バックチェックにおいては推本の見解を取り入れず,従来の土木学会の津波評価技術に基づいて実施し,推本の長期評価については土木学会の検討に委ねることとし,これらの方針について,津波評価部会の委員や保安院のワーキンググループ委員の理解を得ることなどを指示した(議決書4頁~6頁)。
4 議決は武藤武黒らの土木学会への検討依頼は時間稼ぎと断定
このような経過について,議決は次のように判断した。
「東京電力は,推本の長期評価等について土木学会での検討を依頼しているが,最終的には,想定津波水位が上昇し,対応を取らざるを得なくなることを認識してワーキンググルーブを開催していることから,土木学会への依頼は時間稼ぎであったといわざるを得ない。…東京電力は,推本の予測について,容易に無視できないことを認識しつつ,何とか採用を回避したいという目論見があったといわざるを得ない。/地震・津波の予測は,不確実性を伴う自然現象に対するものであり,そもそも,いつどこで起きるかまで具体的に言い当てることは不可能である。推本の長期予測に基づく津波高の試算を確認している以上,原発事業者としては,これを襲来することを想定し,対応をとることが必要であった。」(議決書8頁)
東京電力は,以上の事実を認めつつ,推本の予測に基づいて行った数々の津波の試算についても試算が現実に起きるとは思わなかった,念のために土木学会に検討を依頼しただけであるなどと言い訳していた。検察庁はこのような不合理きわまりないいいわけをそのまま認めてしまった。これに対して,検察審査会は,市民的良識を発揮し,東電の役員たちは,対策が必要であることはわかっていて,途中まではその検討や準備もしたのに,改良工事のために原発が長期停止になることをおそれ,時間稼ぎのために土木学会に検討を依頼して,問題の先送りをしたと認定している。まさに,被疑者武藤と武黒は明らかに本件事故のような深刻な災害を予見し,その回避のために必要な対策についても具体的に検討しながら,その対策に要するコストと時間,そして一定期間の運転休止を見込まなければならないという事態のなかで,問題を先送りするために土木学会に検討を委ねたのである。これは,極めて明白な過失である。
なお,土木学会に検討を依頼したというが,それについては,①回答期限を付したのか,②検討依頼内容は何か,③検討依頼文書は有するのか,④回答は返ってきたのか,⑤その内容はどうだったのかが究明されなければならない。回答期限も定めない依頼だとすればまさに時間稼ぎということになろう。②ないし⑤の究明結果によって時間稼ぎであったことが立証される可能性は高い。
第2 花火工場と原発では予見可能性を基礎付ける会社担当者の能力にも注意義務にも大きな違いがあること
検察は,不起訴処分の理由(「東京電力福島原子力発電所における事故に関連する告訴・告発事件の処理について」別紙 1の(1)のウの(イ)」)において過失の要件として注意義務の内容を検討する場合に,行為者と同じ立場にある通常人の能力を基準とすべきであるとしている。
本件においては,原子力発電所事業会社の取締役としての能力を基準とすべきということになることは言うまでもない。
そこで,改めて被疑者らに要求されるべき注意義務について述べる。
東京電力福島第一原子力発電所の隣に花火工場があったと仮定する。
花火工場が本件地震や本件津波で爆発事故や火災事故を起こしても,それによる被害は限定的である。国を滅亡の危機にさらしたり,一地方を壊滅させたりする危険はない。そして,花火工場のような小規模な企業の取締役においては資金的にも人的にも限界があるから多額の資金や人的資源を使って地震や津波について調査する能力,予知する能力も極めて小さいか不存在である。
それと反対に,ひとたび事故を起こせば国を滅亡の危機にさらしたり,一地方を壊滅させたりする危険のある施設の運営事業者は大規模であって,資金的にも人的にも潤沢であることが多い。そのような事業者の取締役らは,「推本」などの機関からの情報も入手できるし,土木学会のような学会に多額の費用を払って研究委託もできるし,優秀な研究者を雇用して研究させることもできる。予見能力すなわち予見可能性が格段に高いのである。現に東京電力はそうである。
巨大被害を起こす危険のある企業=巨大企業=資金的・人的に潤沢な企業=予見能力・予見可能性が格段に高い
といえるのである。
そして,花火工場のような中小企業及びその取締役らについては逆のことがいえるのである。
したがって,本件地震と津波によって東京電力福島第一原子力発電所に隣接する花火工場で爆発事故が起きて人が死傷しても,花火工場の取締役らにおいては予見可能性がないので,無罪ということになる。逆に東京電力の取締役らは予見可能性があったことになるのである。そして,その予見により結果を回避すべき義務があったのに,それをしなかったのだから業務上過失致死傷として有罪なのである。
被害の大きさから逆算して,予見可能性を判断していくという発想が検察の思考には欠けていた。予見可能性がないのだから,被害の大きさは論議のしようがないという検察の思考方法は市民感覚と明らかに乖離している。検察の従来の思考方法は,原発と花火工場を同列に論じる平板な思考方法ということができる。
第3 吉田調書の意義
平成26年(2014年)9月11日に政府により福島第一原発所長(当時)吉田昌郎氏(以下「吉田所長」という。)に係る聴取結果書(以下「吉田調書」という。)が開示された。
この調書には事故対応だけでなく,事前の津波対策についても,吉田所長の認識が述べられている。この津波の検討は土木学会の今村氏から平成20年(2008年)2月末に福島県沖の海溝沿いで大地震が発生することは否定できないという話があったという質問者の指摘を「そうだと思います」と肯定している(甲3 平成23年11月6日付吉田調書4頁)。この点は,土木学会内にもこのような慎重な意見があったことを示すもので,極めて重要な指摘である。
当時,「中越沖地震対策会議」が社長,会長,武藤,武黒,吉田らで話し合う会議が持たれていた。当時の会長は田村,社長は本件被疑者勝俣である。最初は毎日会議が持たれていた。平成20年頃には月1回の会議であった。この中で,津波対策の費用も議論されていた(同9~12頁)。
また吉田調書によれば,「太平洋側の場合は,いろんな学説が今,出ておって,大きい津波が来るという学説もあります。それをベースに計算すると,今,想定している津波高の,…要するに,今,想定している5m何十cmという設計のベースよりも大きい津波が来る可能性が否定できない。…場合によっては高い津波が来れば,それなりの対策が必要です。…かなり桁の大きいお金が来ますよということを説明した」(甲3の17頁),「会長の勝俣さんは,そうなのか,それは確率はどうなんだと」(甲3の19頁),「貞観地震というのは,私はたしかその後で,ここで一回,社長,会長の会議で話をしました」(甲3の26頁),「日曜日にやる月1の社長,会長もでた中越沖地震対策会議の席では,皆さんに,その時点での最新のお金のものをお配りして」(甲3の27頁),「20年の6月,7月ころに話があったのと,12月ころにも貞観とか,津波体制,こういった話があれば,それはその都度,上にも話をあげています。」(甲3の36頁)とのことである。
この会議には被疑者勝俣が毎回出席していたことは明らかで,勝俣の聞いていないという証言がウソであったことが,この吉田調書で明らかに裏付けられる。
被疑者武藤や吉田が,津波は来ないと高をくくってしまい,いったん費用まで含めて検討された対策について,土木学会に先送りする形で見送ったことが本件の事故原因の根幹である。検察審査会の議決もこの点を明確に認定していたが,吉田調書は明確にこの議決を裏付けている。
第4 本件は検察が刑事起訴し,公判を遂行するべき事件である
1 再度不起訴にすれば強制起訴によって事件は指定弁護士に委ねられる
地検が再び捜査し,仮にあらためて不起訴処分としても,検察審査会が再度,「起訴すべきだ」との判断をすれば,強制起訴され,裁判が始まることとなる。
しかし,起訴相当の議決は11人中8人以上の賛同がなければ出せない。
本件議決について言うと,勝俣,武黒,武藤の三名の被疑者については,起訴することに,11人中8人以上の賛同が得られたということである。裁判員裁判制度のもとでは,死刑判決ですら裁判員と裁判官の単純多数決で決することとなっている。そのことを考えると,この起訴相当の議決の持つ意味は極めて重い。
検察組織の中にも,自らの行った不起訴の判断が多くの市民の理解を得られなかったことについて,反省の声があると聞く。この議決の内容からすれば,次に開かれる検察審査会で覆される可能性はないであろう。だとすれば,強制起訴は必至の情勢である。
2 原発事業者の刑事上の注意義務のレベルについて決めるのは裁判所の役割である。
検察庁と検察審査会の判断において,その基礎となっている事実関係は共通である。もちろん,土木学会への検討依頼の意味づけなどについては,認識の相違が見られるが,起訴と不起訴という見解の分岐を生み出したのは,原発事業者の刑事上の注意義務のレベルについての法的な見解の相違が決定的に重要である。
しかし,原発事業者の刑事上の注意義務のレベルについて,これを最終的に決めるのは裁判所の役割である。検察庁の見解と市民の代表の見解が対立しているならば,事実関係を検察の力で確実に立証した上で,その法的な判断を裁判所の手に委ねることこそが公益の代表者のとるべき態度である。
3 検察は,その総力を挙げて事件の真相に迫る立証を遂行するべきである
我々は,検察庁に強く問いかけたい。日本の現代史に残る重大事件について,事業者の最高幹部の刑事責任を明らかにする刑事裁判の検察官席に座るものが検察官でなく,指定弁護士であって良いのかという問いである。指定弁護士は,他に多くの業務を抱えた市井の弁護士である。通常の一般刑事事件であれば,十分担当できるであろうが,本件のような超大型事件を長期にわたって担うことは困難だ。捜査の範囲,書証の量を考えれば容易に推測できる。
検察には,この重大事件を自らの手で公判遂行するのではなく,指定弁護士の手に委ねるような無責任なやり方を絶対にして欲しくない。
被疑者勝俣,武黒,武藤,小森の4人について,再度の集中した取調を実施し,議決に示された供述の矛盾点や信用できない点について論理的に追及すれば,必ず起訴できる。議決に示された市民の良識に応え,検察庁の威信を賭けた徹底した再捜査を期待する。
福島第一原発の現場については,当初は事故収束の緊急作業が進行中だったから遠慮したことは理解できる。しかし,緊急作業が終了した現在は,押収・捜索・実況見分(検証)には何の支障もないはずである。放射能に汚染された物は押収できまいが,現物を詳細に撮影し,指示説明を詳細に記録しておくことは絶対に必要であるし可能である。一般の放火事件,失火事件では警察が直ちに現場検証することは常識である。検察はなぜこの捜査の常道を守らないのか。
また,被疑者勝俣,武黒,武藤,小森の4人について,再度の集中した取調を実施し,議決に示された供述の矛盾点や信用できない点について論理的に追及するべきである。
そして,再捜査の結果を踏まえて検察自らの手で少なくとも,起訴相当とされた勝俣,武黒,武藤の3名の被疑者だけでなく,不起訴不当とされた小森被疑者までを加えた4名の被疑者について起訴をし,責任を持って公判を遂行するべきである。多くの市民が,これだけの事故を起こし,事前に対策をとるべき時点がこれだけ明確に指摘され,いったんは対策をとろうとしたにもかかわらず,対策コストが高く,発電の中断を怖れて対策を先送りした被疑者勝俣,武黒,武藤,小森の刑事責任の解明を公開の法廷で行うことを求めている。
議決の判断は全国紙や福島の新聞紙のほか,日本全国の紙面を飾った(甲4の1 2014年8月1日ジャパンタイムス)。そして各社の社説にも取り上げられた。世論は検察審査会の起訴相当の議決の判断を支持し,検察の判断に期待している。
「福島第1原発事故の発生は回避できたのではないか/多くの国民が抱くそうした疑念が晴れておらず,刑事責任の追及を求める声が根強いことを象徴する判断が示された」(甲4の2 河北新報)「コスト意識など企業の論理だけを優先し,住民の安全を軽視した不作為である」(甲4の3 沖縄タイムス)というように,前回不起訴処分とした検察の捜査への批判は大きい。
そして,以下のように検察への期待も大きい。「関係者の記憶が薄れぬ前に,早く本格的な捜査を再開して教訓をきちんと示すべきだ」(甲4の4 朝日新聞)「検察は速やかに再捜査に着手し,刑事責任を問う余地が本当にないのか,徹底的に捜査を尽くすべきだ」(甲4の5 毎日新聞)「検察は慎重姿勢に固執せずに再調査し,冷静な判断を下してもらいたい」(甲4の6 福島民友)「電力会社の役員は原発の安全確保に極めて高度の注意義務が求められている」(甲4の7 北海道新聞)「市民が納得できる再捜査を尽くし,その結果もきちんと説明すべきだ」(甲4の8 西日本新聞)「検審の議決を真摯に受け止め,徹底した捜査を求めたい」(甲4の9 琉球新報)。「被災者らは注視している。『人災』なのか,その真相に肉薄してほしい」(甲4の10 中日新聞)。
さらに,告訴人らが8月8日付上申書でも引用した元京都地検検事正の古川元晴氏は,「検察の正義は条理(物事の道理,筋道)すなわち国民の一般常識から乖離してはありえない。…真に国民の納得が得られる再捜査と処分をすべきである。」(甲5 2014年9月6日朝日新聞)と述べている。
検察審査会の議決に示された市民の良識に耳を傾け,メンツを捨てて注意義務のレベルと過失判断の基準,不起訴の判断について勇気を持って見直し,起訴の決断を下すことこそが,検察が正義の味方として市民からの信頼を取り戻す途であると信ずる。
第5 結論
検察は,検察審査会の議決に基づき,福島第一原発事故の真実を明らかにし,各被疑者の刑事責任を明らかにするため,捜索を含む強制捜査と取調を実施し,被疑者勝俣,武黒,武藤,小森について起訴をするべきである。
以上