告訴団、新上申書を地検に提出
2015年 01月 08日
12月25日の公開調書からは、経済産業省原子力安全・保安院が、当時の規制機関で、大津波が襲う可能性を認識しながら、組織内の原発推進圧力で、電力会社に適正に指導しなかった実態が明るみとなっていた。
小林勝・安全審査課耐震安全審査室長の調書によると、2009年ごろから、東日本大震災と同じクラスの貞観地震(869年)の危険性が保安院内でも問題となり、独立行政法人「産業技術総合研究所」の岡村行信活断層・地震研究センター長は、貞観地震が福島第一周辺を襲った痕跡を指摘。岡村調書では「400~800年周期で反復していると考えている」と指摘。これを受け、小林室長らは貞観津波の再来リスクを検討するよう保安院幹部に提案したが、複数の幹部から2010年に「あまり関わるとクビになるよ」「その件は原子力安全委員会と手を握っているから、余計なことを言うな」とくぎを刺されていた。
上申書の目的は、『検察の不起訴の方針などという報道を私たちは真に受けない。起訴の可能性に向けて,真摯な検討が続けられているものと信ずる。
添田氏の著書と同氏の提供文書にもとづいて2014年(平成26年)12月9日付の上申書を提出した。そして,その後,さらに127通の政府事故調の調書が12月25日に公開された。その中には,本件と密接に関連する情報が隠されていた。
次々に明らかになる重要証拠によって,想定を超える津波が来る可能性があることは,東電と保安院の共通認識となっていたことがますます明白となってきた。
本上申書は,新たに明らかになった情報を集約し,伝えられるような再度の不起訴というような方向ではなく,東電の幹部4名の起訴を決断されることこそが,日本の刑事司法に対する原発事故被害者と多くの市民の司法に対する信頼をつなぎ止める途であることを訴えるものである。』とした。
以下、上申書より抜粋。
第 7 東電の津波対策先送りこそが本件事故決定的要因である
担当検察官の皆さんは添田氏の著書と追加で公開された小林氏らの調書の内容を読まれてどのように感じられたであろうか。
耐震バックチェックがいつまで経っても終わらなかった背景に,津波対策が不可避となっており,耐震バックチェックのオープンの会議を開けば,専門家から重大な疑問を提起されることがわかっていながら,問題を回避するために,問題の先延ばしを図っていたという事実は,衝撃的な新事実である。小林氏の「野口課長は「その件は,安全委員会と手を握っているから,余計な事を言うな。」と言った。また,当時ノンキャリのトップだった原広報課長から「あまり関わるとクビになるよ。」と言われた事を覚えている。」という証言(甲23の1の1-2頁)は,津波対策が厳重なタブーと化していたことを裏付けている。
この平成21年(2009年)の岡村氏の問題提起がなされていた時には,東電は平成20年(2008年)に既に15.7メートルのシミュレーション結果を得ていた。しかし,審査する側の保安院はこのことを知らないのである。
この問題提起に対し,東京電力及び原子力安全・保安院は,津波の議論は先送りにするとして議論を打ち切り,何ら対応しなかったのである。この議論が行われた時点で,もし東京電力が正直に15.7メートルのシミュレーションを保安院に提出していれば,如何に腐敗した保安院でも,いったんは「不作為を問われる可能性がある」とまで言っていたのであるから,きちんとした津波対策が命じられていた可能性がある。
この推測は,今回新たに明らかとなった小林調書において,平成23年(2011年)3月7日に,このシミュレーションの報告が東電から保安院に対してなされた際に,対策を土木学会の津波評価技術の改訂に合わせるという東電の方針に対して「「それでは遅いのではないか。土木学会による津波評価技術の改訂に合わせるのではなく,もっと早く対策工事をやらないとだめだ」「このままだと,推進本部が地震長期評価を改訂した際に,対外的に説明を求められる状況になってしまう。」とコメントしたことを覚えている。」と述べていた(甲23の2の12頁)ことからも裏付けられた。
平成20年(2008年)のシミュレーション結果を保安院に提出せず,土木学会に検討依頼という形で問題を棚上げした行為そのものが,本件事故の決定的な原因であることはもはや疑いようがない。このような者を免責するようなことがあれば,検察の威信は地に墜ち,市民の司法に対する信頼は回復しがたいほど傷つけられるであろう。
検察はためらってはならない。市民の支持を失ったら検察組織に未来はない。検察は,市民の良識の結晶と言うべき検察審査会の議決に基づき,福島第一原発事故の真実を明らかにし,各被疑者の刑事責任を明らかにするため,被疑者勝俣,武黒,武藤,小森について起訴をするべきである。