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1.13第2次告訴・告発(2015年告訴)について

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 1月13日、福島原発告訴団は、東京電力福島第一原発事故に関して、東京電力関係者及び経産省原子力安全・保安院関係者ら9名を、下記の通り、先行14名が業務上過失致死傷罪の被疑事実で告訴・告発した。これは、去年11月刊行の添田孝史さんの「原発と大津波 警告を葬った人々」(岩波新書)や同年12月25日に公開された政府事故調査委員会の調書で、東電と保安院などが事前に把握していた津波対策を講じなかった事実と被疑者が特定されたことから、新たな告訴・告発に踏み切ったもの。
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以下は、記者会見資料。

本日の第2次告訴・告発(2015年告訴)について
               2015年1月13日
               福島原発告訴団・弁護団

1.本日、武藤類子(福島原発告訴団団長)ら14名の者が東京地検に対して、東京電力福島第一原発事故に関して、東京電力関係者及び経産省原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)関係者らを業務上過失致死傷罪の被疑事実でそれぞれ刑事告訴・告発した。

2.被告訴・告発人(9名)

①酒井俊朗東京電力株式会社の福島第一原発の津波対策の検討実施に当たっていた者
②高尾誠 同上
③西村某同上
④森山善範平成20年から平成21年(2008年-2009年)当時,保安院原子力発電安全審査課長,ついで保安院審議官、文科相大臣官房審議官,保安院原子力災害対策官(併任),(独)原子力安全基盤機構総括参事,(独)日本原子力研究開発機構執行役,(独)日本原子力研究開発機理事(現在)
⑤名倉繁樹保安院原子力発電安全審査課審査官(当時),原子力規制委員会安全審査官
⑥野口哲男保安院原子力発電安全審査課長(当時),ついで保安院主席統括安全審査官,(独)原子力安全基盤機構企画部長
⑦原昭吾保安院原子力安全広報課長(実質的に人事権を有する)の立場にあった者(当時),ついで保安院関東東北産業保安監督部長,保安院原子力災害現地対策本部統括班
⑧氏名不詳の原子力安全委員会の津波対策担当者
⑨氏名不詳の電事連の津波対策担当者

3.被疑事実の要旨

被告訴人酒井俊朗,同高尾誠,同西村某らは,東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原発の津波対策の検討実施に当たっていた者であり,被告訴人森山善範は平成20年から平成21年(2008年-2009年)当時,経産省原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)原子力発電安全審査課長,ついで保安院審議官,同名倉繁樹は保安院原子力発電安全審査課審査官,同野口哲男は保安院原子力発電安全審査課長,同原昭吾は保安院原子力安全広報課長(実質的に人事権を有する)の立場にあった者であり,氏名不詳の原子力安全委員会の津波対策担当者,氏名不詳の電事連の津波対策担当者,さらには別件被疑者武藤,武黒,勝俣,小森らと共同して,福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の運転停止又は設備改善等による安全対策を講じて,大規模地震に起因する巨大津波によって福島第一原発において非常用電源の冠水などに起因する炉心損傷等の重大事故が発生するのを未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,必要な安全対策を講じないまま漫然と東電関係者らは福島第一原発の運転を継続し,また保安院関係者は運転の継続を認めた過失により,東北地方太平洋沖地震(以下「本件地震」という。)及びこれに伴う津波により,福島第一原発において炉心損傷等の重大事故を発生させ,水素ガス爆発等により一部の原子炉建屋・格納容器を損壊させ,福島第一原発から大量の放射性物質を排出させて,多数の住民を被ばくさせ,甲状腺がんの大規模な発症を招くとともに,現場作業員らに傷害を負わせ,さらに周辺病院から避難した入院患者らを死亡させ,多くの住民に災害関連死とされる自死,病死などの被害を生じさせたものである。

4.個別的責任(告訴・告発状 88~95頁より抜粋)

(1) 東電における津波対策実務責任者の個別的責任
ア 被告訴人酒井俊朗
被告訴人酒井俊朗は,平成10年(1998年)から平成18年(2006)年まで原子力技術・品質安全部土木グループ グループメンバー(課長)として,福島の耐震バックチェック担当(津波,活断層評価)をしていた。2006年から平成22年(2010年)まで原子力設備管理部(吉田氏が部長)の土木グループグループマネージャーであった。原子力土木技術総括として福島第一原発の耐震バックチェック等を行っていた責任者である。
被告訴人酒井は,長く土木学会津波評価部会の委員も務めている。
イ 被告訴人高尾誠
被告訴人高尾誠は,平成5年(1993年)から平成16年(2004年)まで,原子力技術部土木調査グループにおいて,各原発の津波評価を担当していた。
 平成19年(2007年)から平成22年(2010年)に,原子力設備管理部新潟県中越沖地震対策センター土木調査ブループのグループメンバー(課長)であり,福島第一原発の耐震バックチェックを担当していた。
 2010年から平成23年(2011年)までは,原子力設備管理部原子力耐震技術センター土木調査グループのグループマネージャーであり,福島第一原発のバックチェックを担当していた。被告訴人高尾も,土木学会津波評価部会の幹事等をつとめている。
ウ 被告訴人西村某
被告訴人西村某は,前記の平成21年(2009年)6,7月の耐震バックチェック会議において,被告訴人高尾が説明を担当した際に,被告訴人高尾とともに,岡村行信氏の質問に答え,津波対策の早期実施を阻む役割を演じたものである。

(2) 保安院関係の被告訴人の個別的責任
ア 被告訴人森山善範
 平成18年(2006年)7月から保安院原子力発電安全審査課長の職にあり,平成21年(2009年)7月からは保安院原子力安全基盤担当の審議官であった。平成22年(2010)年7月には文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当)となっていたが,福島原発事故の翌日から,保安院の業務を併任し,16日から統合本部で働いていた。
 同人は,2010年の部下宛のメールで,「1F3の耐震バックチェックでは,貞観の地震による津波評価が最大の不確定要素である」「福島は,敷地があまり高くなく,もともと津波に対して注意が必要な地点だが,貞観の地震は敷地高を大きく超える恐れがある。」「津波の問題に議論が発展すると,厳しい結果が予想されるので評価にかなりの時間を要する可能性は高く,また,結果的に対策が必要になる可能性も十二分にある。」「というわけで,バックチェックの評価をやれと言われても,何が起こるかわかりませんよ」などと述べていたことが判明している。
また,小林調書によると,「貞観津波の試計算結果の数字が大きい。敷地高を超える可能性がある。」ということを森山安全審査課長(当時)に伝えたことを覚えている。(森山審議官の聞いていないという証言と矛盾しており,小林氏の証言の方に信憑性がある―引用者注)「私が1Fに敷地高を超える津波がくる可能性があると認識した契機として間違いなく覚えているのは,1F3号機で,プルサーマル計画が始まるとき,すなわち平成22年3月ころ(2行削除)である。1F3号機のプルサーマル計画の議論をしている際に,森山安全審査課長と貞観津波について議論したことがあり,「1Fに大きな津波がくるらしい。これについては敷地高を超えるらしいので,ちゃんと議論しないとまずい。」と話したことを覚えている。」とも述べている。
同人は前記の通り,自らの調書の中では貞観の津波についての報告を受けていないと虚偽を述べている。さらに,平成23年8月24日の記者会見においても,「2009年9月頃,東電から津波6メートル超えると口頭で説明を聞いていた。」と話しているが,「東電から約8メートルの水位となる旨,資料を用いて説明を受けた」というのが真実か。」との問いに「然り」と答えており,津波の水位と資料を用いた説明であったかの二点で事実を正確に伝えておらず,きわめて情状が悪い(甲25の4頁)。
イ 被告訴人名倉繁樹
 名倉審査官は平成21年(2009年)当時の保安院原子力発電審査課審査官として1F3の耐震バックチェックの担当者であり,2009年6-7月の会議の進行役であった。また,2009年9月7日の東電との会議においては,担当の小林が欠席している中で対応し,高さ8-9メートルという想定を遥かに超える津波高さの報告を受けながら,これに対する対策を講じなかった。
また,平成22年(2010年)の森山メールの宛先となっており,当時の保安院における1F3のバックチェックの最大の焦点が津波対策であることを知りながら,バックチェック作業の中で,岡村氏が強く貞観の津波について考慮するように迫ったにもかかわらず,最終報告で扱うと虚偽を述べ,津波が公式の議題にならないように強引に議事進行を図るなど,極めて悪質な対応を繰り返していた。
さらに,名倉氏は間違いなく政府事故調の最も重要な調査対象とされたはずであるが,自らの調書の公開を拒み,事件の真相解明を妨害している。後述する小林室長が自らの調書の公開に同意し,真相究明に重要な貢献をしていることと比較しても,全く異なる対応であると言わなければならない。反省が認められず,極めて悪質である。厳罰が必要である。
ウ 被告訴人野口哲男
平成21年(2009年)6-9月当時,保安院原子力発電安全審査課長の職にあった者である。
当時,1F3の耐震バックチェック作業において,プルサーマルの早期推進のために,津波に関する議論を行うこと自体に反対し,津波の危険性について対策をとるべきであると主張していた小林勝らに対して,「保安院と原子力安全委員会の上層部が手を握っているのだから,余計なことはするな。」という趣旨のことを言って,圧力をかけている。野口氏の本件に関する関わりの詳細は同人の調書も公開されておらず,詳細は分からないが,安全審査の責任者でありながら,プルサーマル政策の推進を重視し,津波対策をタブー化した責任は極めて重い。
野口は平成17年(2005年)-平成18年(2006年)当時,全国で開催されたプルサーマル討論会において,経済産業省の大臣官房参事官として出席し,発言している。
例えば,2006年11月11日に開催された「エネルギー説明会in佐賀」(資源エネルギー庁主催)において,国の原子力政策について,経済産業省の野口哲男大臣官房参事官が説明したと報じられている。
説明会では野口参事官が,エネルギー自給率が低い日本には原子力が必要とした上で,原子力政策の基本として,地域の声も重視したいと説明したという。核燃料サイクルの推進など具体的な計画を述べた。参加者からは「原発でなくクリーンエネルギーでは駄目なのか」「高レベル放射性廃棄物を安全に処理できるのか」などの意見が出た。野口参事官は「安定供給が重要。安全性の確保が大前提」などと答えたという(11月12日付佐賀新聞)。
野口氏が安全審査課長に就任するのは,このような活動の直後であり,安全審査課長として何よりも「安全性の確保が大前提」であるにもかかわらず,プルサーマルの推進のために,津波対策を先送りすることを主導したのである。
エ 被告訴人原昭吾
平成21年(2009年)6-10月当時,保安院の原子力安全広報課長の職にあった者であるが,小林調書に拠れば,同人は同院内の人事を左右できる立場にあったとされる。
当時,1F3の耐震バックチェック作業において,プルサーマルの早期推進のために,津波に関する議論を行うこと自体に反対し,津波の危険性について対策をとるべきであると主張していた小林勝らに対して,「実質的に人事を担当する(3字削除)(筆者注:原広報課長のこと)課長(当時)から「余計なことをするとクビになるよ」という趣旨のことを言われた。」(甲23の2の7頁)とされている。
原氏の本件に関する関わりの詳細は同人の調書も公開されておらず,詳細は分からないが,安全審査の責任者でありながら,プルサーマル政策の推進を重視し,津波対策をタブー化し,この点について発言しようとする小林氏に「クビになるよ」などと脅迫した責任は極めて重い。

 (3)原子力安全委員会の1F3の耐震バックチェック担当者(氏名不詳 複数である可能性もある)の責任
 原子力安全委員会の1F3の耐震バックチェック担当者は,保安院の上層部と「握り」福島第一原発の耐震バックチェックで津波対策の議論は表ではしないという合意を交わしていたものと見られる。その当事者が誰であったかは,現時点では不明であるが,この人間も過失の共同責任は免れない。

(4)電事連の1F3の耐震バックチェック担当者(氏名不詳 複数である可能性もある)の責任
 保安院の複数の課長が,津波に関係するな,クビになるぞなどと言う圧力をかけた背景には東電だけでなく,電事連としての組織的な動きがあったことは疑いない。
 安全情報検討会議の議事録では電事連の出席者はすべて黒塗りされ,全く人名は分からない。しかし,この安全情報検討会議の議事録の電事連出席者の内の誰か(複数である可能性もある)が,前記のような圧力をかけていたものと考えられる。
 その当事者が誰であったかは,現時点では不明であるが,この人間も過失の共同責任は免れない。
 
4.別紙

1月13日付告訴・告発状
https://drive.google.com/file/d/0B6V4ZwGwBEaxV05XWmNYWkh6NW8/view?pli=1

告訴・告発事実 時系列表


1997(平成 9) 
 建設省など7つの省庁が共同で作成した「津波防災の手引き」において、福島沖でも津波地震を想定するべきことが示された。

2000(平成12) 
 7省庁「津波防災の手引き」を受けた電事連の解析により福島第一原発は想定の僅か1.2倍の津波で原子炉冷却に影響があることが分かった。

2002(平成14) 
 2月、土木学会の津波評価部会が「津波評価技術」を発表。過去最大を超える津波を想定しない、予測に伴う安全率を見込まないとした。
 7月、推本によって長期評価が公表。三陸沖から房総沖日本海溝沿いで過去に大地震がなかった場所でもM8クラスの地震が起き得るとした。

2004(平成16) 
 保安院と原子力安全基盤機構などによって開かれた安全情報検討会で、津波対策を立てないと「『不作為』を問われる可能性がある」と報告。保安院は平成18年度中に津波評価をまとめ、アクシデントマネジメント対策を平成21~22年度に実施する予定としていた。

2006(平成18) 
 米国マイアミで開催された原子力工学の国際会議で、東京電力は福島第一原発で想定される津波について報告、今後50年以内に来る想定を超える津波の確率が10%、13m以上の津波は0.1%の確率と算定。
 「新耐震指針」が制定。「極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波」からも安全性を確保するよう定めた。

2007(平成19) 
 中越沖地震の発生で、従来の想定をはるかに超える地震動が柏崎刈羽原発を襲い、設計基準を超える自然災害が発生しうることが実証された。

2008(平成20) 
 2月、東京電力は「長期評価」について有識者に意見を求め、福島県沖海溝沿いを波源として考慮すべきとの意見書を受けた。
 6月、東京電力は「長期評価」に基づき津波試算を行い、最大15.7mの計算結果を得た。被疑者武藤栄は15.7m津波の報告を受け、非常用海水ポンプの津波対策や沖合防波堤設置の検討などを指示した。
 7月、被疑者武藤栄は、耐震バックチェックは「長期評価」を取り入れず、土木学会の「津波評価技術」に基づいて行い、「長期評価」の扱いについては土木学会に検討を委ねるとした。
 10月、東京電力は貞観津波の波源モデルに関する「佐竹論文」を入手、12月には貞観タイプの津波で最大9.2mの試算結果を得た。この情報は被疑者勝俣恒久、武黒一郎らに周知された。

2009(平成21) 
 「合同WG」会議で産総研の岡村行信氏が、新耐震指針のバックチェック中間報告で東電が貞観地震について全く触れていないのは問題であると指摘したが、保安院審査官被疑者名倉繁樹によって先送りされた。
 8月、保安院に津波評価と対策の現況報告を求められた東電は、15.7m津波の試算結果については報告しなかった。

2010(平成22) 
 保安院審議官被疑者森山善範は、部下らにメールで、貞観津波を想定すると大規模な津波対策が必要であること、東電役員がそれを認識していたことを送信した。

福島原発告訴団 これまでの経過

2012年
  3月16日 結成
  6月11日 避難者を含めた福島県民1324名が、東京電力株式会社と東電役員(当時)、政府関係者(当時)、学者ら33名を公害罪と業務上過失致死傷罪で、福島地検に告訴・告発
 11月15日 全国13262名が福島地検に第二次告訴・告発
        その後、告訴・告発人を追加、総合計で14716名の告訴・告発となる。
(2012年告訴)
2013年
  9月 3日 団長・副団長3名が、東京電力株式会社と東電役員(当時)32名を公害罪で福島県警に告発(汚染水告発)
     9日 福島地検が「2012年告訴」事件を東京地検に移送
        移送の約1時間後、東京地検が被疑者全員を不起訴処分とする。
 10月16日 団長・副団長3名が、「2012年告訴」の不起訴処分について、東京検察審査会に申し立て。
 11月22日 「2012年告訴」の告訴・告発人のうち5737名が東京検察審査会に第二次申し立て。
 12月18日 全国の6042名が福島県警に第二次の「汚染水告発」
2014年
  7月31日 東京第五検察審査会が、勝俣恒久元会長と武黒一郎・武藤栄元副社長に起訴相当、小森明生元副社長に不起訴不当の議決を発表。(議決は23日、議決書は30日付)
        東京地検が再捜査を開始。
 10月24日 東京地検が、再捜査の期限を最大3か月延長すると発表(2015年2月2日まで)。
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by kazu1206k | 2015-01-13 23:53 | 脱原発 | Comments(0)